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疥癬1ーはじめに

2016年03月03日 10:00

国家公務員共済組合連合会 九段坂病院皮膚科
谷口裕子

 虫による皮膚疾患には、(1)虫刺症(昆虫・ダニが一時的に吸血したり、針で刺したり、体液が付着して皮膚炎を起こす)、(2)全身性の感染症(昆虫・ダニが病原体を媒介する)、(3)皮膚寄生虫症(ダニ、シラミ、線虫、条虫、蛆などが皮膚に寄生して起こす)がある。

1) 虫刺症

 虫刺症はカ、ブユ、イエダニ、トコジラミ、ネコノミ、ドクガ、ハチ、ムカデなどにより生じる。イエダニやトコジラミなど、虫によっては駆除を徹底しないと治らないものもあるため、できるだけ原因種を突きとめることが重要である。皮膚症状は虫の種類によって異なり、また同じ虫でも刺された回数で個人差を生じる。カの場合、小児では大きく腫れて、長く続くが、年齢とともに症状が軽くなってくる。ネコノミでは、ネコを飼っている人は数年で免疫ができて、刺されても無症状になる。一方、ハチやムカデは刺されているうちに特異的IgE抗体を産生するようになり、即時型アレルギー反応を起こすことがある。重症例ではアナフィラキシーショックを来し、死に至る場合もある。アナフィラキシーを起こす可能性が高い患者にはエピペン® の携帯、減感作療法が必要である。

2) 虫が媒介する感染症

 国内で虫が媒介する感染症には、マダニによるライム病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome;SFTS)、ツツガムシによるツツガムシ病、コガタアカイエカによる日本脳炎、ヒトスジシマカによるデング熱が挙げられる。このうちライム病は高熱を伴わず、皮膚症状が診断のきっかけとなる。ライム病を起こすのは北海道全域、本州では標高約1,000m以上の高地にいるシュルツェマダニである。マダニが刺咬して1週間くらいまでは皮膚に固着していて、気付かれることがある。自己抜去すると病原体であるボレリア属細菌が余計に注入されることがあるため、速やかに受診したほうがよい。刺されて3 ~30日後より環状に拡大する遊走性紅斑を生じる。無治療で経過すると、慢性関節炎、神経炎を引き起こす。

3) 皮膚寄生虫症

 皮膚寄生虫症には疥癬、シラミ症、皮膚幼虫移行症、ハエ蛆症などがある。このうち、疥癬は長年、病院や老人保健施設での発症が続いており、最近では保育園などで集団発生がみられている。また、アタマジラミ症は保育園、幼稚園、小学校など小児の間で流行をくり返しており、問題となっている。アタマジラミ症とは、体長2~4mmのアタマジラミ成虫や幼虫が頭髪に寄生し吸血するもので、痒みや紅斑を生じるが、自覚症状がないこともある〈図1〉。頭髪同士の接触により感染し、子供たちが頭を寄せて遊ぶ保育園、幼稚園、小学校などで集団発生する。治療はOTC薬のスミスリン®Lシャンプータイプあるいはパウダーを使用する。近年ピレスロイド耐性のアタマジラミが増加しているため、効果がない場合はシラミ除去用の櫛を用いるか、剃毛を行う(アタマジラミ症用すき櫛LiceMeister®、株式会社エムエムアンドニークなど)。

 トコジラミは体長5~8mm の褐色扁平な虫で、日中は壁や畳のすきま、ベッドやカーペットの裏に潜み、夜間に吸血する。宿泊施設などで刺されることが多いが、最近ではネットカフェでの被害も報告されている。2000年頃より欧米でトコジラミ刺症の被害が増加し、日本でも2005年以降急増している。トコジラミもピレスロイド耐性になっており、旅行カバンなどに入った虫を自宅に持ち込んで増えてしまった場合は、カーバメイト系殺虫剤、熱処理など専門業者による駆除が必要となる。

 本稿では疥癬を中心に紹介する。

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