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講義とロールプレイで学ぶ未来型薬剤師像ー2

2016年03月17日 10:30

コミュニケーション能力はトレーニングで向上する

 講義後には、初対面の人とペアを組み、互いに2分ずつ自己紹介を行った。テーマは「最近食べたおいしいもの」で、自己紹介後には他の人にペアの相手を30秒で紹介するという課題が与えられた。実際に私も参加させてもらったが、相手の2分の自己紹介を聞き、それを30秒で第三者に紹介するには、まずしっかり相手の話を聴くことが大切になる。その上で、伝える情報を取捨選択しなければならない。

 金井氏も、コミュニケーションにおいて最も大事なのは「聴く」ことであり、その上で相手に伝えるときには「相手が知りたがっている点を伝える」ことと、「伝えたい点は短くシンプルに」することが重要であると述べている。そして、コミュニケーション能力は誰もがトレーニングによって向上するとした。「聴く」ことの重要性や、相手に伝えるポイントの単純化はよく見聞きする内容かもしれない。しかし、ただ頭で理解するだけでは不十分で、このような研修会に参加してトレーニングすることが必要だと感じられた。

減薬の手順

グループワーク後の症例検討を通して、金井氏は、高齢者薬物療法の原則を以下のようにまとめた。

  • 処方薬剤の数を最小限にする
  • 服用法を簡便にする
  • なるべく一元管理する
  • 目標とエンドポイントを明確にして処方する
  • 生理機能に留意して用量を調節する(少量で開始しゆっくり増量)
  • 必要に応じて臨床検査を行う
  • 定期的に処方内容を見直す
  • 新規症状出現の際はまず副作用を疑う

 とはいえ、やみくもに薬を減らせばよいというものではない。患者にとってその薬が本当に必要かどうか見極めるために、副作用が利益を上回っていないか→本当にその症状が存在しているか→予防的に投与していないか、といったフローを常に念頭に置くと良いという。

医師の苦悩を疑似体験

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 いよいよ大詰め、ロールプレイによるグループワークが行われた。研修会などではよく、医師(あるいは薬剤師)役と患者役に分かれてロールプレイを行うが、本ワークショップでは3人でグループを作り、医師役、患者役、観察役と分担した。医師役と患者役には、異なる台本が用意されている(例えば、医師役の台本には患者に処方されている薬剤が記されているが、患者役の台本には実はそれらを服用していないことが書かれている)。一方、観察役には、医師役・患者役双方の全ての情報が与えられて、制限時間内で医師役と患者役のやりとりを「第三者の目」からフィードバックしていくという形だ。症例は3例用意されており、全員がそれぞれの役を1回ずつ演じることができた。

 実際に医師役として参加したところ、患者の病識レベルはどの程度なのか(自分の説明は通じているのか)、薬を飲んでいると言うが本当なのか・・・と感じた。これらの悩みは、まさに薬剤師が日常的に感じているものと同じなのではないだろうか。医師も自分たちと同じように苦労していると感じた受講者は多かったようだ。このような体験が、医師とのコミュニケーションをスムーズにしていく1つの小さなきっかけになるかもしれない。

対物業務から対人業務へ

 質疑の時間も含めると7時間以上にわたる、まさに明日からの薬剤師業務に役立つ内容を凝縮したワークショップだった。最後の最後まで金井氏に質問する受講者の姿を見て、現在の自身の医学・薬学知識レベルを問わず、積極的になった分だけ、見返りを期待できる場であると感じられた。

 冒頭でも触れた「かかりつけ薬剤師」の制度については、いろいろな意見があるだろう。「今まで同じように接してきた患者から、急にお金を取ることなんてできない」、「会社から言われて仕方なく取る」といった読者もいるかもしれない。しかし、方法はどうであれ、薬剤師に日本の医療の重要な役を担ってほしいという国の考えは理解できる。「対物業務」から「対人業務へ」。そのためには、患者や医療関係者とのコミュケーション能力を磨くことは必須であろう。e-ラーニングでは知識を得るのには便利だが、コミュニケーション能力を磨くことはできない。本ワークショップのような貴重な学びの場へ足を運ぶことは、職能の向上だけではなく、自分は「どんな薬剤師になりたいのか」考えるきっかけになるだろう。

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