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女性ホルモンは万能薬!?

2016年05月06日 11:30

北海道大学病院 婦人科 小林範子

 子育て世代の女性は、自分のなりふりにかまっている時間なぞない。何をするにも待ったなし。家族中心の生活で、追われるように夢中で日々を過ごしている。

 あるとき、ふと鏡の中の自分と目が合う。しばらくぶりに見る自分の容姿はすっかりおばさん化。締まりなくぷよぷよした脂肪に細かいちりめんじわとホウレイ線。フェロモンなど遠い昔にどこかに捨て去ってしまったような生活にハッと目覚め、ショックを受けるのである。

 最近にわかに脚光を浴びてきたのが「美魔女」。全国から35歳以上の女性が集まった「国民的美魔女コンテスト」。実年齢と容貌とのギャップは驚異的なインパクトを与えてくれた。あくせくと過ごす子育て世代でも、スリムな体型を維持し、ただよう大人の色香と艶っぽさ。もちろん外見ばかりではない。内面磨きにも精を出し、心を鍛えている。年齢を感じさせない美魔女たちに秘密兵器はあるのだろうか。

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 ひとむかし前、女性ホルモン補充療法が若返りの万能薬であるかのようにうたわれた時代があった。女性ホルモンを使うと、いつまでも元気で若々しく輝いていることができる。芸能人女性は女性ホルモン補充療法をしているのが常識。エイジレス、ビューティー、若々しさ。三種の神器ならぬ、三種のツボ。ここをくすぐられると女性は弱い。

 しかし昨今、女性ホルモンの「美」に対するメリットばかりが強調されすぎているように感じてしまう。確かに「美」に対して効果があるのは事実であるが、女性ホルモンは正しい使用法で更年期障害や高脂血症、骨粗鬆症など多様な治療効果が知られている。

 日本人は薬の副作用に敏感な傾向がある。女性ホルモン補充療法やピルの副作用では、「がん」や「血栓症」に超過敏反応。

 日本では副作用を気にしすぎるあまり、女性ホルモン補充療法やピルの普及がすすまない現状である。薬局で渡された副作用情報の用紙を逐一チェックし、あれもこれもあてはまる、と些細な体調の変化もすぐ薬のせいにしてしまう患者もいる。

 女性ホルモンを続けていたら、乳がんになるわよー、なんて誰かに言われたあかつきには、決定的。女性ホルモンと乳がん発症との関連はエストロゲンとあわせて処方する黄体ホルモンとの関連も言われており、日本人の乳がん発症率は欧米諸国よりも低い。医師はいつもメリットとデメリットのバランスを考慮して処方している。

 患者には正しい情報の伝達が重要である。

 この世に「万能薬」は存在しないが、どんな薬も適正使用で上薬(じょうやく)に。80歳になっても女性ホルモン治療を続けて元気に病院へ通ってくる患者を見ると嬉しく思うのでした。

[PharmaTribune 2013年1月掲載]

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