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メトホルミンの適正使用に関する Recommendationが改訂

2016年05月19日 15:30

 日本糖尿病学会「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日、「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」を改訂したと発表した。前回の改訂は2012年2月1日に行われ、さらにその一部は2014年3月28日に改訂された。4月8日にFDAからDrug Safety Communicationが出されたことを受け、 従来のクレアチニンによる腎機能評価から推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ変更することを主にしたアップデートを行ったという。

 わが国のビグアナイド薬の投与患者において、乳酸アシドーシスが報告されている。乳酸アシドーシスはしばしば予後不良となり、死亡例も報告されているため、迅速かつ適切な治療を必要とする。ビグアナイド薬の投与患者における乳酸アシドーシス症例を検討したところ、以下の特徴が認められたという。

 乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴

1)腎機能障害患者(透析患者を含む)

2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態

3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者

4) 高齢者

高齢者だけでなく、比較的若年者でも少量投与でも、上記の特徴を有する患者で、乳酸アシドーシスの発現が報告されていることに注意。

 これらは各剤の添付文書において禁忌や慎重投与となっている事項に違反した例がほとんどであり、添付文書遵守の徹底がまず必要である。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や、投与開始直後あるいは数年後に発現した症例も報告されていたという。したがって、乳酸アシドーシスの発現を避けるためには、投与に当たり患者の病態・生活習慣などから薬剤の効果や副作用の危険性を勘案した上で、適切な患者を選択し服薬や生活習慣などの指導を十分に行うことが重要とされた。

Recommendation

 まず、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以下の事項に留意する。

  1. 腎機能障害患者(透析患者を含む) 腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などでは、eGFRが急激に低下することがあるので注意を要する。eGFRが30~60の患者では、ヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して、48時間後にeGFRを再評価して再開する。 なお、eGFRが45以上また60以上の場合でも、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより、腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する。

  2. 脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態  全てのメトホルミンは、脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、過度のアルコール摂取の患者で禁忌である。利尿作用を有する薬剤(利尿薬、SGLT2阻害薬等)との併用時には、特に脱水に対する注意が必要である。以下の内容について患者に注意・指導し、同時に患者の状況に応じて家族にも指導する。シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する。脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける。アルコール摂取については、過度の摂取を避けて適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する。

  3. 心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者 全てのメトホルミンは、高度の心血管・肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態)、外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)前後の患者には禁忌である。また、メトホルミンは軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である。

  4. 高齢者 メトホルミンは高齢者では慎重に投与する。高齢者では腎機能、肝機能の予備能が低下している例が多いことから定期的に腎機能(eGFR)、肝機能や患者の状態を慎重に観察し、投与量の調節や投与の継続を検討しなければならない。特に、75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要である。

メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

 なお、現在、わが国で使用されているビグアナイド薬のほとんどがメトホルミンであることや、内外の安全性に関するエビデンスについても、メトホルミンに関するものがほとんどであることに鑑み、「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」とされた。同Recommendationにおける多くの留意点は、メトホルミンの配合薬や他のビグアナイド薬についても該当するものと考えられるということである。

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