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受動喫煙で年間1万5,000人死亡―厚労省推計

2016年06月01日 10:15

 受動喫煙による死亡者は、年間約1万5,000人に上るとの厚生労働省の研究班による推計が発表された。5月31日の「世界禁煙デー」に合わせ、厚労省が東京都で開いた記念イベントでは、その詳細について国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録解析室長の片野田耕太氏が説明した。1万5,000人のうち約1万人が女性で、男性の2倍に達していた。また、男女ともに受動喫煙による死亡の原因疾患としては、脳卒中が5割を占めていたという。

既に49カ国が屋内全面禁煙を法制化

 世界では受動喫煙が原因で、年間60万人が死亡していると推計されている。では、日本ではどうか―。片野田氏らは、受動喫煙への曝露割合を調べた2000年前後のデータとともに、肺がんや虚血性心疾患、さらに近年、受動喫煙との関連が明らかになった乳幼児突然死症候群(SIDS)の受動喫煙による相対リスクに関するデータを用いて、疾患ごとの人口寄与リスク割合(その疾患の原因として受動喫煙が何%を占めているのか)を算出。次に、同割合を2014年の死亡数に乗じて年間死亡数を推計した。

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 その結果、受動喫煙による死亡者は年間約1万4,957人で、このうち女性が1万434人と男性(4,523人)の2倍以上を占めていた。原因疾患は男女ともに脳卒中が最も多く、5割超を占めていた。次いで虚血性心疾患(女性28%、男性35%)、肺がん(女性18%、男性14%)が続いた。

 同氏は、これらの推計値を報告した上で、世界では既に49カ国で公共の場所を屋内全面禁煙とすることが法制化されている点を紹介(WHO2015年報告書)。また、職場に加えてレストランや居酒屋、バーを禁煙化することで、急性心筋梗塞が15%、その他の心疾患が39%減少したとするデータ(Circulation 2012 ; 126 : 2177-83)を示し、「受動喫煙による健康被害が存在するからこそ、法制化後に疾患が減ったと言え、因果関係がよくわかるデータだ」と説明。「今回の(受動喫煙による死亡者)年間1万5,000人というのは、あくまでも推計値ではあるが、『受動喫煙による健康被害は存在する』ということを出発点として、社会全体でそれを防ぐ方法を考える必要がある」と強調した。

2020年の東京オリンピックまでに環境整えて

 記念イベントではこの他、シンガーソングライターの平原綾香氏、パラリンピアンの谷(旧姓:佐藤)真海氏、国立がん研究センター社会と健康研究センター疫学研究部室長の澤田典絵氏、厚生労働省健康局健康課長の正林督章氏によるトークディスカッションが行われた。ディスカッションでは、3次喫煙による影響について話を聞いた平原氏が「誰かがたばこを吸っていた部屋にいるだけでも健康に害があると知って驚いた」とコメント。「たばこによって寿命が短くなると聞く。大切な人ほど吸ってほしくない。ただ、やめるのは簡単ではないと思う。たばこに代わるストレス発散の方法の1つとして、音楽で役に立ちたい」と話した。

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 一方、1歳の子供がいるという谷氏は「母親になってから、今まで以上にたばこを気にするようになった。10年後、20年後の喫煙率を下げるために、学校でもたばこの害について教育を徹底してほしい」と要望。また、ロンドン・パラリンピックに出場した際には、かつて歩きたばこが珍しくなかった街中から、歩きたばこや吸い殻がなくなっていることに感銘を受けたエピソードを披露し、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、海外から来た人たちに、日本はきれいでルールが守られた国だと感じてほしい。それまであと4年あるので、一人一人の意識を高めてそうした環境を作れたら」と話した。

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 また澤田氏は、「受動喫煙を減らすためには、吸えない環境を整えていくしかない」とした上で、「わが国では少しずつ分煙が進んでいるが、世界では『全面屋内禁煙』が大きな流れ。法制化しても飲食店の売り上げは減らず経済的な影響はないことが報告されている一方、脳卒中や呼吸器疾患による入院は減ったとの報告がある」と海外の状況を紹介。国を挙げた取り組みの必要性を強調した。

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