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国民の8割が非喫煙者でも法規制進まず

2016年06月02日 10:45

 わが国の成人喫煙率は2割と、ここ10年ほどは減少傾向を示している。しかし、副流煙による受動喫煙に関する健康被害は後を絶たず、訴訟問題に発展するケースもある。こうした中、世界保健機関(WHO)が制定する毎年5月31日の「世界禁煙デー」における今年のわが国のテーマは、「2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子ども達をまもろう~」。この日、東京都内でも幾つかのイベントが開催されたが(関連記事)、日本医師会などによる記念イベントでは「受動喫煙防止法」をテーマに専門家らが登壇。国民の8割が非喫煙者であるにもかかわらず受動喫煙に関する法整備がなかなか進まない中、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までの受動喫煙防止法の制定を目指す決議文が発表された。

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WHOのテーマ「Get ready for plain packaging」のポスター。

海外ではパッケージに「クイットライン」も

 わが国だけでなく、世界的に見ても、成人の喫煙人口は年々、減少傾向にある。ただ、欧米諸国とわが国におけるたばこ問題への取り組みの差は、パッケージ包装だけを見ても歴然としている。

 地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター長の中村正和氏によると、WHOのたばこ規制枠組み条約(FCTC)第11条「たばこ製品の包装およびラベル」に即し、喫煙による健康被害画像の表示をパッケージに導入している国は2015年現在で77カ国に上る。一方、日本では警告文のみの表示にとどまっており、表示面積はパッケージのわずか30%と、"主たる表示面の50%以上を占めるべきであり、主たる表示面の30%を下回るものであってはならない"とする同第11条の条件をかろうじてクリアしているにすぎない。

 それだけではない。海外ではたばこのパッケージに禁煙電話相談サービス(クイットライン)の連絡先を表示したり、たばこ製品に特有の色使いや画像、マークなどの使用を禁じる簡素な包装デザイン(プレーンパッケージ)を導入したり、さらなる喫煙率減少に向けた取り組みが進められ、成果を上げている。

「スモハラ」は暴行罪や傷害罪にも

 米ニューヨーク州ニューヨーク市の全てのレストランやバーが全面禁煙化されたのは2003年のこと。喫煙が当たり前だった飲食店での全面禁煙化は当時、世界的に大きな話題になったが、今や各国の都市ではありふれた風景になってきた。

 こうした法規制は、利用客の健康を守るだけが目的ではない。従業員を健康被害から守り、ひいては受動喫煙で健康を害した従業員による訴訟から経営者を守ることにもつながるのだ。また、分煙化にはそれなりのコストがかかるだけでなく、受動喫煙を完全に防ぐことが難しいことが分かってきたことも理由にある。

 受動喫煙の訴訟問題を手がける岡本総合法律事務所の弁護士、岡本光樹氏によると、わが国でも近年は職場や共同住宅での受動喫煙に関する訴訟が相次いでおり、民事裁判による損害賠償や和解が成立するケースが増えているという。

 さらに、同氏は、"たばこの煙を他人の顔に直接吹きかける行為"が、痰やつばを吐きかけるのと同じ暴行罪として、"職場やマンションのベランダでの喫煙行為による他者への健康被害"が、奈良騒音傷害事件(いわゆる「騒音おばさん事件」)と同じ傷害罪として、それぞれ解釈される可能性にも言及した。「スモークハラスメント(スモハラ)」が、今や刑法として問われる時代になってきたようだ。

2020年の東京五輪までに法整備ができるか

 このような世界的なたばこ対策の潮流に乗り遅れた日本の現状に危機感を募らせる同記念イベントの登壇者たち。異口同音に唱えるのは、受動喫煙に対する罰則を設けた法規制の必要性だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを、実現の好機と捉えている。

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 前神奈川県知事として、わが国初の受動喫煙防止条例の制定に尽力した参議院議員・松沢成文氏もその1人。同氏は、超党派の議員による受動喫煙防止を実現する議員連盟で幹事長を務めており、東京五輪までに強制力を持った受動喫煙防止法を制定するために活動を続けている。だが、自民党をはじめとする各党の議員にはびこる"たばこ利権問題"が大きく立ちはだかり、難航しているようだ。

 そこで受動喫煙防止法の実現を後押しする強力な材料となるのが、東京五輪の開催なのだという。国際オリンピック委員会(IOC)の方針により、近年はオリンピック開催都市における分煙は認められておらず、罰則付きの「受動喫煙防止法」が制定されてきたからだ(中国・北京のみ「条例」)。

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同記念イベントの終盤に登壇した東京都医師会会長の尾﨑治夫氏は「国民の8割が非喫煙者で、2割しか喫煙者がいないにもかかわらず、なぜ、その喫煙者のために(非喫煙者が)思いやりを持たなければならないのか」と、受動喫煙の危険性が正しく認知されていないわが国の現状を嘆いた。事実、東京都は、同記念イベントのテーマが「分煙化」ではなく「受動喫煙防止の法規制」であることを理由に、後援には賛同できないとして要請を断ってきたという。

 最後に同氏が東京五輪開催までの受動喫煙防止法の実現などを盛り込んだ決議文を発表すると、参加者らから賛同の意が込められた大きな拍手が沸き起こった。

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