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薬剤師の医学論文との付き合い方ー1

2016年06月16日 10:45

 薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)をご存知だろうか。「EBM※1スタイルな薬剤師業務の実践」を目指し、インターネット上で医学論文の抄読会を行うコミュニティーで、薬剤師である桑原秀徳氏(医療法人せのがわ瀬野川病院)、青島周一氏(医療法人社団徳仁会中野病院)、山本雅洋氏(はるか薬局)の3人が主宰している。「第2回 薬剤師のジャーナルクラブ リアルワークショップ」を取材する機会に恵まれたので、その概要をレポートする。

【ワークショップ概要】

第2回 薬剤師のジャーナルクラブ リアルワークショップ

日時:2016年6月11日(土) 16:00~19:00

講師:はるか薬局 山本雅洋、医療法人栄仁会宇治おうばく病院 村田繁紀、医療法人社団慈恵会新須磨病院 稲生貴士、サンコウ調剤薬局 黄川田修平

会場:東京都台東区花川戸1-3-2 井門浅草ビル5F

主宰:JJCLIP

若さ溢れる参加者たち

 会場について驚いたのは「若さ」である。平均年齢は30代前半といったところだろうか。「医学論文」をテーマにしたワークショップというと、どこか堅苦しい雰囲気を想像しがちだが、開始前から和気あいあいとした空気が流れている。

 まず、村田繁紀氏と稲生貴士氏が、論文を読み出したきっかけを語った。最新の知見を得るため、そして何より、目の前の患者さんに行われる薬物治療がどの程度効くのか、AとBの薬剤の臨床的な違いなどを判断する上で、論文を読むことが非常に手助けになったという。また、住んでいる地域などにかかわらず、インターネットさえ繋がっていれば、いつでもどこでも誰にでも共通の学習の機会があるところも利点に挙げた。

 しかし、両者とも強調していたのが、論文のエビデンスで治療法を決定するのではないということ。エビデンスを目の前の患者さんにどう活かすかが重要だという。

ロールプレイによるワークショップ

 ここで、1つの症例が提示された。42歳男性で、血圧やや高め(140/95mmHg)、バルサルタン80mg/日(1回1錠 1日1回 朝食後)が処方されている。他に大きな疾患の既往はないが、あまり薬を飲みたがらない様子で、「本当に血圧って、しっかり下げた方がいいのか?」と質問された。 

 これに対し、次の論文に当たった。糖尿病の既往はなく、収縮期130mmHg以上で、50歳以上の9,361人に対し、血圧は厳格に管理した方が良いのかどうか調査したものだ。薬物療法により積極的に収縮期血圧を120mmHg未満に抑える群と、標準治療で140mmHgを目指した群を3年フォローアップした。すると、積極降圧治療群の方が、心筋梗塞、急性冠動脈疾患、脳卒中、心不全、心血管死亡が年率0.54%減ることがわかった(SPRINT Research Group. N Engl J Med. 2015; 373: 2103-2116)。

 以上の情報を踏まえ、患者役と薬剤師役に分かれてロールプレイを行った。薬剤師役への指令は、服薬意識が低い患者を最初はたしなめること、血圧は運動や食事でもコントロールできることを伝え、エビデンスを熟慮しながらいつも通り服薬指導してほしいというものだった。

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ロールプレイ中の参加者たち

 15分程度の時間が与えられると、活発なやり取りが繰り広げられる。様子をうかがってみると、薬剤師役で苦戦している参加者が多かったようだ。実際、ロールプレイ後のフィードバックでは、「受診後だったので、今回の薬は飲んでもらうよう説得するしかなかった」「論文の数字を具体的に患者に説明すべきか迷う」「家族構成や仕事のことなど、コンプライアンスに関わる部分の聞き出しが不十分だった」「論文の結果はエビデンスとしては弱い気がするので、患者に服薬を強く勧められない」といった声が挙がった。患者役からは「優しくたしなめてくれた」「もっと堂々としているほうが良いかも」「一番聞きたいところは、はぐらかされている印象を受けた」といった声が聞かれた。

 今回のロールプレイでは、「患者に対してこのように指導すべき」という明確な答えは存在しない。しかし、青島氏と山本氏は「1つの論文(情報)だけではなく、いくつもの論文を読んでいれば、どのような患者にどの程度の効果があるのかといった予想を立てることができる」「ある論文を読んで、結論を決めつけて患者さんと接してしまうと、答えありきの指導になってしまう。あくまで、目の前の患者さんに合わせながら論文情報を活用していくべき」と解説していた。

※1
Evidence Based Medicine、科学的根拠に基づく医療

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