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薬剤師の医学論文との付き合い方ー2

2016年06月16日 10:45

患者だけでなく医師の助けに

 最後に、黄川田氏が「論文を読むことで何が変わったか」について発表した。論文を読むまでは、患者からの「いつまで薬を続ければいいのか」「この薬は本当に必要なのか」あるいは、医師からの「AとBではどちらの薬の方が良いのか」といった問いに、うまく答えられなかった。そのような中、SNS上で「EBM」という言葉を知り、調べてみたところ「真のアウトカム」2という言葉を見て衝撃を受け、それからは毎日論文を読み続けているという。ここで黄川田氏は、降圧治療中の66歳女性の症例を紹介した。

【処方内容】

アムロジピン錠5mg 1錠
オルメサルタン錠10mg 1錠
1日1回 朝食後

プラバスタチンNa錠10mg 1錠
1日1回 就寝前

ジフェニドール錠25mg 3錠
メコバラミン錠500μg 3錠
1日3回 毎食後

 患者は、めまいや立ちくらみの症状を訴えているが、医師に「大事な薬なのでこのまま続けましょう」と言われたという。血圧110/68mmHgで、他は特に問題はなく、既往歴にも大きな疾患はなかった。そこで、医師に処方薬の減量・中止を検討してもらえないか提案するため、様々な論文に当たり、4つの論文3の原著と要点、さらにアムロジピン錠5mgの中止または減量を促す文書を作成し、処方元の開業医と面会した。すると、医師に泣きながら感謝されたという。聞くと、「立ちくらみやめまいのことは聞いていたが、どちらの薬を中止すればいいのかわからず、ひとまずそのまま処方していた」とのこと。誰にも相談できず、1人で悩んでいた医師の姿がそこにはあった。

 薬剤師によるEBMスタイルを基本とした情報提供および処方提案を行うことで、医師の助けとなることができると感じたエピソードだったという。しかし、エビデンスばかり追いかけて、患者の思いを置き去りにしないことを心掛けていると付け加えた。

 論文を読み続けて1年半ほど経った現在でも、医師や患者からの問いに明確に答えることは容易ではない。しかし、薬の効果を確率論として考え、選択肢は1つではないことを提示できるようになったという黄川田氏。処方権がなく、自分で薬を飲むわけでもない薬剤師だけが、客観的に処方薬を評価することができるのではないかと締めくくった。

 ロールプレイも交え、あっという間の3時間のワークショップだった。「単一のエビデンスだけで判断しない。経験、知識、そしてエビデンスを組み合わせることによって、患者さんに適切な医療を提供していく」という主催者の姿勢は一貫していた。そして何より、医学論文に対する敷居を下げ、より多くの薬剤師にEBMの実践をしてほしいというJJCLIPの願いは、参加者に伝わっていたのではないだろうか。

※2
死亡や合併症の発症など、人生における重大な転帰のこと。一方、将来リスクを予想する血圧、血糖値、コレステロール値などの指標を、代用のアウトカムと呼ぶ。

※3
1.Yi SW et al. J Prev Med Public Health. 2015; 48: 105-110.
2.Lonn EM et al. N Engl J Med. 2016; 374: 2009-2020.
3.Gaxatte C et al. J Hum Hypertens. 2013 Sep 19. doi: 10.1038/jhh.2013.82. [Epub ahead of print]
4.Moonen JE et al. Age Ageing. 2016; 45: 249-255.

桑原氏によると、JJCLIPの活動をさらに持続的に広めるべくNPO法人アヘッドマップを設立するとのこと。詳しくはコチラ。JJCLIPのfacebookはコチラ

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