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悪性高熱症治療薬の保管、使用判断に課題

2016年06月21日 15:15

 日本麻酔科学会が目指す悪性高熱症に関するガイドラインの作成には、現状における同疾患への備えや認識の顕在化が必要である(関連記事)。そこで、同学会第63回学術集会(5月26~28日、会長=九州大学大学院麻酔・蘇生学教授・外須美夫氏)の委員会企画「安全委員会企画:悪性高熱ガイドライン2016(案)について」では、キッコーマン総合病院(千葉県野田市)麻酔科部長の市原靖子氏が、同学会が認定病院を対象に実施したアンケートの結果を公表した。アンケート結果からは、同疾患の特異的治療薬であるダントロレンの適切な投与法についての認識は広まっているものの、その保管・備蓄状況や位置付けなどに課題があり、実際の投与がスムーズに行われていない施設もあることが確認された。

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誘発薬となる揮発性吸入麻酔薬は、ほぼ全施設で使用

 アンケートは同学会の認定病院1,308施設に対して実施し、791施設(60.47%)から回答が得られた。全身麻酔症例における使用薬については、悪性高熱症を誘発する可能性のある揮発性吸入麻酔薬の使用割合が全体的に高く、「76~99%」との回答が全回答の48%、「51~75%」が23%となり、「全く使用していない」との回答はわずか1%であった。一方、同じく誘発薬とされる脱分極性筋弛緩薬の使用割合は非常に低かった。悪性高熱症素因患者に対する待機手術や緊急手術時の麻酔については、いずれも9割以上が「引き受ける」もしくは「場合による」と回答し、明確に拒否する施設は少なかった。また、悪性高熱症の術前説明については、口頭および文書、あるいはいずれかで行っている施設が約85%に上った。

ダントロレンを手術室内に備えているのは7割

 ダントロレンの保有状況などについて尋ねると、約95%が院内に常備していると回答したものの、手術室内に保管しているとの回答は約7割にとどまり、約3割は手術室外で保管されていた。市原氏は、悪性高熱症治療は緊急を要することを踏まえ、「本来ならばダントロレンは手術室内で保管する方が望ましい」と指摘した。なお、ダントロレンを常備していない施設の主な入手先は、薬剤の卸問屋(約55%)、他病院(約42%)としていた。

 また、ダントロレンが麻酔科医に届くまでの時間は、「5分以内」との回答が約70%を占め、「30分以内」が約10%、「1時間以内」が約6%となった。

原因不明の頻脈、EtCO2上昇時のダントロレン投与には判断分かれる

 アンケートでは、ダントロレンの適切な用法・用量に関する質問も行った。同薬を静脈注射する場合には蒸留水で溶解する必要があること、生理食塩水や輸液に混ぜると析出し本来の薬効が得られなくなること、投与量などについて知っている医療スタッフの割合について尋ねたところ、「100%」との回答がそれぞれ48%、40%、35%となり、「約50~100%」との回答を合計するといずれも7割を超えた。だが、全身麻酔中に原因不明の頻脈や呼気終末炭酸ガス濃度(EtCO2)の上昇が見られた際にダントロレンを投与するスタッフの割合は、「0%」との回答が27%、「約50%」が26%、「100%」が12%となり、使用判断が施設により大きく異なる点が明らかになった。

 この結果を受け、市原氏は「ダントロレンの適切な用法・用量については各施設でおおむね理解されているものの、あまり頻繁に用いる薬剤でないため、実際に投与するとなると、ためらうスタッフが相当数いるのではないか」と考察した。

9割が学会独自のガイドラインの必要性認める

 さらに、学会独自の悪性高熱症ガイドラインを作成する必要性の有無を問うと、90.3%が「必要」と回答しており、大多数の麻酔科領域の医師が同疾患の診療において何らかの指針を求めているという実態が浮かび上がった。

 今回のアンケートでは、悪性高熱症に関する種々の制度についても質問しており、同疾患の素因診断・治療に関する公的支援制度については「希望する」が51.5%、「内容次第で希望する」が45.0%、同学会が構築・運用する症例の登録制度については「賛成」が58.2%、「登録内容次第で賛成」が39.6%との回答が得られた。これらの回答に関して、市原氏は「今年は中央社会保険医療協議会で、悪性高熱症の診断法が先進医療から削除された。加えて昨今は、各病院が単独で個人情報を管理することのリスクが高まってきている」と指摘し、「いろいろな制度面から悪性高熱症診療に携わる医師とその患者を支えなければならない、という意識が強く出ているのではないか」との見方を示した。

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