新規登録

CYP2C19の多型がクロピドグレルの併用効果を左右

2016年07月12日 07:30

 CYP2C19の機能欠失型アレルを持たない群でのみクロピドグレルの併用は有効である中国・Beijing Tiantan HospitalのYilong Wang氏らは、軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)後の急性期にアスピリンに加えクロピドグレルを併用投与した場合の臨床アウトカムと薬剤代謝酵素チトクロームP450(CYP)のCYP2C19の多型(SNPs)との関連について検討した結果をJAMA2016年6月23日オンライン版)で報告した。

機能欠失型アレルの有無で比較

 2010年1月~12年3月に中国で実施された多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験Clopidogrel in High-Risk Patients with Acute Nondisabling Cerebrovascular Events(CHANCE)試験では、急性期の軽症虚血性脳卒中あるいはTIAで症状発現から24時間以内の患者5,170例を、ランダムにクロピドグレル+アスピリン併用投与群あるいはアスピリン単剤投与群のいずれかに割り付けた。併用群では、クロピドグレルを初回量(loading dose)300mg、その後75mg/日を3か月間投与し、アスピリンについては初回量75~300mg、その後は75mg/日を21日間投与した。アスピリン単剤群では初回量は併用群と同じで、その後の75mg/日投与を3か月間継続した。主要有効性アウトカムを脳卒中(虚血性/出血性)新規発症として検討した結果、クロピドグレル併用群ではアスピリン単剤群と比べ、急性期における新規脳卒中リスクが低下することが示されていた。

 今回のサブ研究は、CHANCE試験に参加した114施設のうち遺伝子研究へのサンプル提供経験のある73施設で実施された。3,010例を対象にCYP2C19の主要な3つのSNPs〔*2(681 G>A)、*3(636 G>A)、*17(-806 C>T)〕の遺伝子タイピングを行い、この3SNPsの完全な情報が得られた2,993例を解析対象とした。機能欠失型アレル(*2、*3)が少なくとも1つあれば機能欠失型アレルのキャリアと分類し、非キャリアとの比較を行った。

遺伝子型次第で治療効果は見込めず

 主要有効性アウトカムはCHANCE試験と同じく脳卒中(虚血性/出血性)新規発症とし、副次有効性アウトカムは心血管複合アウトカム(虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、血管死)、安全性アウトカムは出血とした。

 対象者2,933例中1,948例(66.4%)が男性(年齢の中央値62.4歳)、機能欠失型アレルのキャリアは1,726例(58.8%)、非キャリアは1,207例(41.2%)であった。アジアでは機能欠失型アレルのキャリアが多いことが知られているが、今回の対象者におけるCYP2C19のマイナーアレル頻度(MAF)は*2が31.1%、*3が4.6%、*2や*3とは逆に代謝活性を上昇させることで知られている*17が1.0%であった。

 90日間のフォローアップ後、非キャリア群ではクロピドグレル併用による新規脳卒中発生リスクの低下が認められたが〔クロピドグレル併用群41例(6.7%) vs.アスピリン単剤群74例(12.4%)、ハザード比(HR)0.51(95%CI 0.35~0.75)〕、キャリア群ではこうしたリスクの低下は認められなかった〔同80例(9.4%) vs 94例(10.8%)、HR 0.93(95%CI 0.69~1.26)〕(相互作用のP=0.02、図1)。

図1. CYP2C19の機能欠失型アレルの有無(キャリア、非キャリア)でみた新規脳卒中の累積発生率

1606106_fig1.jpg

 副次有効性アウトカムについても同様の結果で、非キャリア群における心血管複合アウトカム発生はクロピドグレル併用群41例(6.7%)、アスピリン単剤群75例(12.5%)、HR 0.50(95%CI 0.34~0.74)と、併用群で低かった。これに対し、キャリア群ではそれぞれ80例(9.4%)vs. 95例(10.9%)、HR 0.92(95%CI 0.68~1.24)であり、複合イベントリスクの低下は見られず、相互作用のPは0.02であった。

 出血リスクについては機能欠失アレルのキャリア群と非キャリア群で有意な違いはなく、治療の割り付けによる有意差も示されなかった(クロピドグレル併用下で出血が認められた割合はキャリア群2.3%、非キャリア群2.5%、アスピリン単剤投与下ではキャリア群1.4%、非キャリア群1.7%。相互作用のP=0.78、図2)。

図2. CYP2C19の機能欠失型アレルの有無(キャリア、非キャリア)で見た出血の累積発生率

1606106_fig2.jpg

(図1、2ともJAMA 2016年6月23日オンライン版)

 以上から、Wang氏らは「軽症の虚血性脳卒中あるいはTIAの患者に対する新規脳卒中リスク低減を目的としたクロピドグレルとアスピリンの併用投与が、アスピリン単剤投与より有効であるのは、患者がCYP2C19の機能欠失型アレルの非キャリアである場合に限られる。本研究の知見は、この治療の有効性を左右するものの1つがCYP2C19の遺伝子型であることを示している」と締めくくった。

トップに戻る