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薬剤性腎障害ガイドライン発行「薬剤師も活用を」

腎予後改善と副作用防止を目的に初めての作成

2016年07月21日 11:00

 日本腎臓学会は今年(2016年)5月に「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」(以下、同GL、作成委員長=筑波大学腎臓内科教授・山縣邦弘氏)を発行した。慢性腎臓病(CKD)診療GLなどでも薬剤性腎障害という用語は用いられているが、明確に定義されたのは今回が初めて。同GL委員会委員の臼井丈一氏(筑波大学腎臓内科学准教授)は「腎臓専門医はもちろん、連携する非専門医や薬剤師にもGLを活用してもらいたい」と第59回日本腎臓学会学術総会(6月17~19日、総会長=愛知医科大学腎臓・リウマチ膠原病内科教授・今井裕一氏)の教育講演で呼びかけた。

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投与により新たに発症した腎障害などと定義

 同GLは、厚生労働科学研究および日本医療開発機構(AMED)の「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発」(研究代表者=新潟大学腎・膠原病内科学教授・成田一衛氏)の研究の一環として作成された。

 薬剤性腎障害は実臨床で遭遇する腎臓病であり、CKDを重症化させる原因でもある。そこで同GLは、「薬剤性腎障害患者の腎予後の改善」と「腎機能障害患者への薬剤投与による副作用の発生防止」を目的として腎臓専門医をはじめ、非専門医や薬剤師などのコメディカル向けにつくられた。

 薬剤性腎障害という用語は、「CKD診療ガイド2009」や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」にも記載されている。しかし、薬剤性腎障害を定義したのは今回が初となった。それによると、薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury;DKI)とは「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義している。

発症機序や腎の障害部位に基づいて診断、治療の基本は可能な限りの早期中止

 DKIの診断は、1)該当する薬剤を投与した後に、新たに発症した腎障害であることと、2)投与中止によって腎障害が消失し、進行停止が認められること―の両方を満たし、他の原因が否定できる場合とされた(表1)。ただし、DKI発症までの投与期間や、薬剤中止から改善までの期間に関するエビデンスは乏しく、臼井氏は「具体的な期間をGLに記載するには至らなかった」と説明した。

表1. 薬剤性腎障害の診断基準

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 DKIの診断は、(1)腎に直接作用して毒性を示す中毒性腎障害、(2)アレルギー・免疫学的機序による急性間質性腎炎(過敏性腎障害)、(3)薬剤による電解質異常、腎血流量減少を介した間接毒性、(4)薬剤による結晶・結石形成がもたらす尿路閉塞性腎障害―など、発症機序に基づく分類もできる(表2)。

 さらに、腎の障害部位に基づいて(1)薬剤性糸球体障害(2)薬剤性尿細管障害(3)薬剤性腎間質障害(4)薬剤性腎血管障害―と分類することも可能である。

表2. 診断分類

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(表1、2とも臼井丈一氏提供)

 DKIと診断された場合、治療の基本は被疑薬を可能な限り早期に中止することである。薬剤性間質性腎炎例で、投与中止後も腎障害が遷延する場合はステロイド療法を考慮する。

抗菌薬後のモニタリングで腎障害を回避可能

 DKIの主な原因薬剤は、多い順に非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、抗がん薬、抗菌薬、造影剤であり、上位4種で6割超を占める。そのうち、抗がん薬と造影剤については既にGLがあり、それらを参照するよう求めている。

 そのため今回のGLでは、各論としてNSAIDなどの鎮痛薬および抗菌薬の他、糸球体腎炎・ネフローゼ症候群に用いられる免疫抑制薬が取り上げられた。GL全体で7つあるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち、各論ではそれぞれ1つずつ記載している。

 NSAIDによる腎障害は、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害により、血管を拡張させるプロスタグランジン(PG)の産生が抑制されることで起こる虚血性腎障害で、急性腎障害を呈する。そこで、CQとして「疼痛患者へのCOX-2選択的阻害薬(セレコキシブ、エトドラクなど)は腎機能障害を起こしにくいか」を設定。COX-2選択的阻害薬は、COX非選択薬に比べて腎障害を来しにくいというエビデンスは明らかでなく(エビデンスレベル「強い」)、セレコキシブの安全性が示されつつあるものの、現時点での推奨度は「弱い」となった。

 また近年、高齢化やCKD患者の増加などの背景もあり、抗菌薬による腎障害が問題になりつつあるという。「バンコマイシン投与中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染患者では、薬物治療モニタリング(TDM)を定期的に行えば、腎毒性を起こしにくいか」というCQに対し、抑制できるとするエビデンスのレベルと推奨度はともに「強い」となった。

 なお、TDMのタイミングはまず2回目投与前に測定し、その後10日以内は小まめに行い、薬物血中濃度の目標としてトラフ値15~20μg/mLを目指す。

 臼井氏は「腎臓専門医だけでなく、連携する非専門医や薬剤師にもGLを活用してもらいたい」と訴えた。

【PDF】薬剤性腎障害 診療ガイドライン 2016

※ 「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」、「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012」、「腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン2009」

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