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抗菌薬耐性化で性感染症GL改訂、WHO

淋菌感染症治療でキノロン系薬推奨されず

2016年09月06日 11:00

抗菌薬耐性化で性感染症GL改訂、WHO

 世界保健機関(WHO)は8月30日、淋菌感染症、梅毒、クラミジア感染症の3つの性感染症の診療ガイドラインを公表した(http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2016/antibiotics-sexual-infections/en/)。2003年にこれら3つの性感染症(sexually transmitted infections; STI)の診療ガイドラインを公表していたが、その後、抗菌薬耐性化が進んだことを受け、治療薬の推奨内容を中心に改訂した。このうち淋菌感染症については、これまでファーストライン治療薬として推奨されていたキノロン系薬への高度耐性化が進んだことを受け、「淋菌感染症の治療薬としてキノロン系薬を推奨しない」としている。

梅毒にはベンザチンペニシリンの筋注を「強く推奨」

 淋菌感染症、梅毒、クラミジア感染症は代表的なSTIとして知られ、世界の新規感染者例は梅毒が年間560万例、クラミジア感染症が同1億3,100万例、淋菌感染症が同7,800万例に上る。今回、これらの性感染症のガイドラインを公表した背景について、WHOは「抗菌薬の不適切な使用や過剰投与などの結果、特に淋菌を中心に抗菌薬耐性化が進み、治療が年々難しくなってきている」と説明している。

 2003年のガイドラインから大きく変更されたポイントの1つは、現在使用可能な全ての抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌の存在も確認されているという、淋菌感染症の治療で推奨される抗菌薬だ。前ガイドラインでファーストライン治療薬として推奨されていたキノロン系薬は、高度耐性菌が広がっているため「推奨しない」とされている。また同薬と同様、前ガイドラインでファーストライン治療薬に位置付けられていた第三世代セファロスポリン系薬についても、同薬への感受性が低下している菌株が増えているとして今回は推奨されていない。

 では、どの抗菌薬を選択すべきか。これについてWHOは、各国の保健当局に対し、地域での抗菌薬耐性動向の監視を強化することを要求。その監視データに基づき最も有効と考えられる抗菌薬を処方することを勧めている。なお、そうしたデータがない地域では、性器および直腸・肛門の淋菌感染症に対しては単剤よりも2剤併用を推奨。具体的には「セフトリアキソン250mg筋注+アジスロマイシン1g経口投与」または「セフィキシム400mg経口投与+アジスロマイシン1g経口投与」のいずれかを挙げている。

 一方、梅毒の治療に関しては、「抗菌薬の経口投与による治療に比べ有効性が高く、安価」としてベンザチンペニシリンの筋注が強く推奨されている。ただ、同薬は梅毒が問題となっているにもかかわらず、在庫のない国があることが報告されており、今年(2016年)5月に開かれたWHO総会で重要だが供給不足に陥っている薬剤の1つとして認定されたという。このことから、今後WHOでは在庫不足の国を確認し、各国のニーズと供給のギャップを埋めるための取り組みを支援するとの意向を示している。

 クラミジア感染症については、最も頻度の高い性感染症で、無症候の場合が多いが、無症候でも生殖機能に影響する可能性があると強調。「性器」「直腸・肛門」「妊婦」への感染例や性病性リンパ肉芽腫症などの項目別に、計9つの推奨が示されている。

 今回の3つのガイドライン公表に際し、WHO Reproductive Health and Research局長のIan Askew氏はプレスリリースで「淋菌感染症や梅毒、クラミジアは数百万人のQOLに影響し、重篤な疾患、時には死亡の原因になるなど、全世界で公衆衛生上の重要な問題となっている。新ガイドラインでは、これらのSTI感染の拡大を食い止め、セクシャルヘルスやリプロダクティブヘルスを向上させるために、適切な抗菌薬を選び、適切な用量、タイミングで使用することの重要性が明示された」と説明。また、それを実行するには「各国で抗菌薬耐性の動向を監視することが不可欠」と強調している。

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