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明らかになりつつあるC型肝炎への実臨床でのDAA治療

肝がん既往例もAFP値が改善

2016年09月20日 11:00

 現在、C型肝炎に対しては主に直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療が行われ、高い治療成績を上げている。しかし、ダクラタスビル+アスナプレビルの治療不成功例や薬剤耐性変異、ウイルス学的著効(SVR)達成後の発がんなどの問題は残っている。山梨大学消化器内科(肝疾患センター長・准教授)の坂本穣氏は「ダクラタスビル+アスナプレビル併用治療は耐性変異の除外で高い治療効果が得られ、肝がん既往例でもAFP値が改善したことから発がん抑制にも有効な可能性が示された。ソホスブビル/レジパスビル合剤による治療は耐性変異例に対しても効果が高い」と、第102回日本消化器病学会総会(4月21〜23日,会長=東京医科歯科大学消化器病態学教授・渡辺守氏)のシンポジウム「C型肝炎治療の新時代と将来への展望」で報告した。

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耐性変異除外で高い治療効果

 坂本氏らは、同科で治療したC型慢性肝炎症例におけるDAAの治療成績を治療反応性・薬剤耐性変異から検討した。ゲノタイプ1型はダクラタスビルアスナプレビル併用(135例)とソホスブビル/レジパスビル合剤(102例)、ゲノタイプ2型はソホスブビル+リバビリン(RBV)併用(43例)による治療。ダクラタスビルアスナプレビル症例では、肝機能の改善についても検討を行った。

 ダクラタスビルアスナプレビル症例は、年齢中央値66±9.4歳(30〜81歳)で高齢者もおり、肝硬変症例が半数以上で、ウイルス学的には治療効果が弱いとされる難治例が多かった。同科では治療前にdirect sequencing法により薬剤耐性変異を測定し、変異(特にNS53AのY93H)のない症例を治療対象としている。

 ダクラタスビルアスナプレビルの治療成績(HCV RNA排除率)は、治療4週目で85%、治療終了(24週目)時点で88%と非常に高く、最終的に治療終了後12週のウイルス学的著効(SVR 12)は89%であった()。治療開始前に耐性変異を除外すれば、非常に高い治療効果が得られることが分かった。

図. DCV+ASVの治療成績

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(坂本穣氏提供)

 しかし、19例が途中で治療中止となり、そのうち6例はウイルス再燃(viral breakthrough)、それ以外は副作用による中止であった。しかし、ALT上昇による中止例でも5週以上治療が継続できた症例は全例でSVRが達成され、副作用が発現しても、一定期間治療を継続できれば治療成績は期待できると考えられた。

ダクラタスビル+アスナプレビル治療が発がん抑制につながる可能性も

 ウイルス再燃例の検討では、治療前に存在した微量の耐性変異株が起点となり複数のウイルスが増殖することが分かった。また、他の部分にも耐性が存在し、多重耐性を来す可能性が示唆された。Y93Hと治療効果の関連については、direct sequencingでY93H変異の比率が低かった(15%以下)症例ではSVRを達成しやすかった。また、deep sequencingで全く耐性変異がなかった例では、全例でSVRを達成していた。しかし、いったんVBTを来すとY93Hだけでなく他の部分にも耐性を生じるため、今後の治療にとっての大きな問題となる。

 治療中のALT上昇により治療を中止した例を除いて、治療期間中の肝機能の改善について解析を行ったところ、ALTは治療早期(4週目)に有意な低下が認められた。Child-Pughスコアを構成する肝機能検査値(肝予備能)を調べたところ、アルブミン(Alb)は治療早期に有意に上昇したが、ビリルビン、プロトロンビンの改善は認められなかった。結果的に、Child-PughスコアはAlb値の上昇により改善することが分かった。

 坂本氏は「AFPは高値例でも治療早期に低下が見られ、肝がんの既往がある症例の検討でもAFP値の改善が認められたことから、ダクラタスビルアスナプレビル併用療法が発がん抑制につながる可能性が示唆された」と述べた。

 同氏は、C型慢性肝炎および代償性肝硬変に対するダクラタスビルアスナプレビル治療について、「Y93H変異を適切に診断して除外すれば、高い治療効果が得られる。治療早期から肝機能、AFP値の改善が期待でき、Child-Pughスコアも改善する。予後の改善が期待され、肝細胞がんを発症した場合の治療選択肢が拡大すると考えられる」と結論付けた。

 現在、ゲノタイプ1型の治療の中心はソホスブビル/レジパスビルである。ソホスブビル/レジパスビルは高齢者や条件の悪い患者にも用いているが、Y93H変異例に対しても治療が可能で、現在までに非常に優れた治療効果を示している。同施設では、これまでに副作用による中止例もウイルス再燃症例もなく、Y93H変異例においても治療早期の効果は低いものの、最終的には全例でSVRを達成している。ゲノタイプ2型におけるソホスブビル+レジパスビルによる治療も非常に効果が高く、治療終了後12週の時点で21例中21例全例でSVRを達成しており、これまでに副作用による中止例もウイルス再燃症例もないという。

Child-Pughスコア:肝障害度評価。脳症、腹水、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン時間延長、またはPT-INRの5項目をそれぞれ1~3点で評価し、その合計点によって分類する。

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