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妊産婦のくすりに関する不安は薬剤師に相談を

「妊娠・授乳とくすり」小冊子無料提供を開始-くすりの適正使用協議会

2016年10月19日 08:30

 一般社団法人くすりの適正使用協議会は10月18日に小冊子「妊娠・授乳とくすり」をホーム-ページ上に公開した。また、小冊子(印刷版)の無料提供を開始した

 妊娠中や授乳中の薬物療法については、関連ウェブサイトに多くの不安・疑問の声が寄せられており、妊産婦にとっては関心の高いテーマである。同協議会は、正しい知識を持つことで安心して妊娠・授乳に備えられるものとしており、これから妊娠を希望するカップル、妊娠・授乳中の女性、パートナーの男性の知るべき情報を冊子にまとめている。

1団体(施設)あたり1回限り300部まで無料提供
 (送料は申込者負担)
 無料提供期間は半年程度、その後は実費での提供を予定。
 キャンペーンは在庫が無くなり次第終了。

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 小冊子の公開に先立ち、10月11日に協議会は一般参加者を含めたメディア勉強会を開催した。冒頭に、協議会から、妊娠・授乳と薬に関するインターネット調査の結果が報告された。続いて、聖路加国際病院の酒見智子氏が登壇。小冊子の内容紹介とともに、妊産婦が正しい知識を持つための情報収集や不安を持ったときの相談方法について講演した。

【妊娠・授乳と薬に関する調査】

「妊産婦に薬は悪影響」との認識多数

 協議会は、第1子の妊娠を希望している女性150名と5年以内に出産・授乳した経験のある女性150名の計300名を対象に「妊娠・授乳と薬に関する調査」(インターネット調査)を行った。その結果、妊産婦の薬物療法は赤ちゃんに悪影響を及ぼすと思われていることが示されたという()。また、妊娠前から葉酸の摂取が重要であるなどといった知識も不足していることが明らかになった。

図.「妊娠中・授乳中のくすりは赤ちゃんに悪影響」が常識?
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(くすりの適正使用協議会提供)

 妊娠・授乳期間中の服薬に関しては、処方薬よりも市販薬に対する抵抗の度合いが2倍以上と高く、80.7%に上った。服薬に関する疑問・不安を解消するためには医師、薬剤師へ相談するという回答が多数であった。出産経験者ではインターネットで調べるという回答も多かった。一方で、医療従事者への相談により73.2%が不安や疑問が解消したが、インターネットの利用により解消したのは30.2%にとどまった。妊娠に気が付かずに薬を飲んで不安になった経験があると答えたのは、回答者の3人に1人という結果だった。 

妊産婦の3人に2人が自己判断で服薬を我慢

 では、服薬に不安が生じた時、妊産婦はどのように対応するのだろうか。3人に2人の回答者が妊娠中や授乳中の服薬を自己判断で我慢した経験があると回答した。

 とりわけ、処方薬に比べて市販薬を我慢する傾向にあり、医師の処方する薬は比較的安心して服薬できていることが示された。服薬を我慢した結果、便秘や花粉症などが長引いたという回答者もいた。

 これらの結果を受けて協議会は、妊産婦が抱いている薬物療法に関する不安や疑問に対して、正しい知識を持つことを提言している。

【調査概要】

  • 調査目的  
     妊娠中・授乳期間中の薬の服用に関する知識の有無、薬に対する意識や不安を抱える場面などについて、現状を明らかにする
  • 調査手法  
     インターネット調査
  • 調査期間  
     2016年9月8日(木)~2016年9月10日(土)
  • 調査対象者 
     下記いずれかの条件を満たす20-45歳の女性 計300名
      (1) 現在第1子の妊娠を希望している(150名)
      (2) 直近5年以内に出産と授乳の経験がある(150名)
  • 調査対象地域
     全国

    「妊娠・授乳と薬に関する調査」結果
    http://www.rad-ar.or.jp/information/pdf/nr16-161018.pdf

講演:
妊産婦さんのくすりの適正使用を考える
~正しい知識をもって、妊娠や育児に備えるために

 聖路加国際病院女性総合診療部の酒見智子氏は小冊子「妊娠・授乳とくすり」の内容に基づき講演を行った。

 この小冊子では、妊娠中の服薬に関して寄せられる主な問いについて、Q&Aの形で記載されている。例えば、妊娠しているとは知らずに薬を飲んでしまった場合には、(1)かかりつけの医師、産婦人科医、薬剤師(2)妊娠と薬情報センター(3)地域の病院・薬剤師会などの専門家への相談を促している。また、男性が飲んだ薬が赤ちゃんに及ぼす影響や、妊婦が禁忌となっている薬などについても解説されている。

病気と共存する意識で妊娠計画を

 病気を持ち、薬物治療中の患者にとって、妊娠に対する薬の影響は重大な関心事であろう。近年は、出産年齢の高齢化により、合併症を持つ患者の妊娠が増加しているという。また、妊娠した後に病気になるケースもあるだろう。同氏は、病気によって「妊娠を諦める」のではなく、薬の量や種類を変更することで病気と「共存する」考え方を勧めている。 

 特に、母体の健康は赤ちゃんの健康に寄与することを同氏は強調した。薬の服用中断による母親の病気の悪化が赤ちゃんに影響することもある。薬物治療中で妊娠を望む女性は、主治医に早めの相談をするほか、家族とも情報共有をしつつ薬剤師や産婦人科医、小児科医などにあたり、納得のいく医療を受けるべきであるという。

妊娠後半期の解熱鎮痛剤の服用は慎重に

 妊娠中に風邪や花粉症、便秘、頭痛などの理由で一時的に薬の服用を考える場合にも、まずは医師や薬剤師への相談が勧められるという。各症状に対する対応が冊子に記載されているが、特に頭痛に用いられる解熱鎮痛剤は妊娠後半期に服用すると赤ちゃんの健康に大きな影響を及ぼすことがあるため、慎重に用いるべきである。

授乳中は薬物動態から服薬タイミングを検討

 続いて、授乳中の服薬について、赤ちゃんへの影響は大きくないと同氏は指摘。母親が服用した薬剤の成分のうち、母乳に移行するのはごく一部であるとされている。乳汁中の薬物濃度は、母体の血中濃度と同様に推移することが明らかになっており、血中濃度の低いタイミングでの授乳がより安全であると言える。授乳婦は、薬剤の血中濃度の推移から服薬タイミングと授乳タイミングについて薬剤師に相談するとよいという。

 講演を通じて酒見氏は、「妊娠期・授乳期の薬について気になることがあれば、ひとりで悩まずに、医師や薬剤師への相談をするべきである」と繰り返し述べた。妊産婦の不安が解消され最適な薬物治療が行われることに期待を寄せつつ、講演を締めくくった。

※妊娠と薬情報センター https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
※ くすりの適正使用協議会 https://www.rad-ar.or.jp/

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