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要介護5,薬剤師を拒否する患者-3

これがホントの在宅活動 症例検討会1

2016年11月08日 10:30

Q3.患者さんが求めていることは?

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ケアプランから把握

ご本人が薬剤師の関わりを快く受け入れていない現状では、何を求めているかを探ることは難しいと思います。薬に関してのみでなく、ご自宅でどういった生活を送りたいのか、ご本人に聞けないのであれば、ご家族やケアマネに聞いてみるのはいかがでしょうか。ケアマネはケアプランを作成しているので、それを見せていただければご本人の求めていることがわかると思います。

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生い立ちから探る

この方の前向きな考えを引き出すことにより、求めていることが見えてくるのではないでしょうか?

50代という若さで色々と重い病気にかかり,精神的にも疲れてお酒でまぎらわすことの繰り返しで、他人を受け入れられなくなっている。介護を担っておられるご主人もご自身の体調不良があり、少々介護疲れが見られる。そういったことが、頭の中に浮かびます。

今後どうしていったら良いのか難しいですが、どんな生い立ちであったか、どんな仕事をしてきたか、どんな趣味があるのかといった情報が得られれば、支援の方法が明確になると思います。楽しさや生きがいを見出すと、「それに向けてリハビリも必要だね」「お薬もきちんと服用しようね」「ショートステイなども利用し入浴し気持ち良くなろうね」など、生活の場においても支援の部分が明確になると思います。

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実現可能な目標を共有する

提示された中からだけではわかりません。良くなりたいと思っても、今は諦めてしまっているのかもしれません。

ほんのちょっとした実現可能な目標(希望の光みたいなもの)を、ご本人や関わっている各事業所と共有できるといいですね。ご主人とご本人との関係性も大きく影響するので、そのあたりの観察もとても大切だと思います。

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"いい時間"を過ごしてもらう

ご主人、ご本人ともに安心して2人の"いい時間"を過ごしていただくのが良いと思います。何回か訪問していくうちに今の生活や介護、病状などの不満をこちらに打ち明けていただければ求めているものも見えてくると思いますので、少し粘り強く訪問していくのも手かとは思います。

前向きに治療してもらい、処方医の治療方針と上手く繋げていくのを意識しながら、患者さんの想いを聞き出せるようにしていきたいですね。

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チームの力で希望を見いだす

患者さんに希望を持ってもらうには、関わる私達が信じて希望を持ち続けないといけない、と思っています。コントロールしなければいけない病態ですから、「すべて貴女の思うままに」というわけにはいきませんが、「なるべく希望に添ってサポートしたい」という姿勢で治療目標に近づけたいです。落としどころが難しいと思いますが、チームの力で!

他職種の視点

ペンネーム 京都3人娘 ケアマネジャー

ケアプランを作成するために本人、家族の意向を引き出しながら言語化していくこともありますが、本音が捉えにくいケースもあります。長い人生で、ほんの一時の関わりで解決できない問題もあると、開き直ることも必要だと思っています。

本症例では、生活全般を見ながら、要介護状態になった経緯を踏まえ、今後予測されることの見通しをもってアセスメントしていきます。困っている点は何か、どうしたいのか、共感できることを見いだして褒めたたえます。患者さんが「自分をわかってくれるケアマネジャー」と思えば、相談を持ちかけてくるなど主体的に関わるようになります。

花見真弓 ケアマネジャー

●50代でこのような状況になってしまったこと、どのような思いでしょうね。辛いと思います。元気であれば普通に主婦をしてご主人とも旅行も楽しめますよね。

●ひょっとしたら、デイケアに行くのが嫌なのでは?自宅が一番落ち着くと言う方は多いです。デイケアの代わりに訪問入浴、訪問リハビリ、訪問看護の回数を増やす方法もあると思います。

●主婦として何かしたいと思っているのでは?状態が落ち着かれたらベッド上でも家事の一部(豆の筋取りや野菜の皮むき、洗濯物たたみなど)ができるのではないでしょうか。ご主人にも協力いただき、例えば、ネクタイを患者さんご本人に選んでもらうとか。

●お話をするのが苦手な方には向きませんが、最近では家庭にも傾聴ボランティアが来てくれます。

●ショートステイの提案ですが、インスリン注射をしている場合、特別養護老人ホームは受け入れ不可、介護老人保健施設も不可のところが多いです。介護療養型病院は受け入れ可能です。定期的に利用していればセミロングやロング利用が可能です。一般病院でもレスパイト入院が可能なところもあります。

小宮山学 家庭医療専門医

少ない情報のなかで想像もありますが、50代という若さながら脳出血の重度の後遺症によって不自由な生活となっている状態は、本人の人生のイメージと現実とのギャップから現状を受け入れきれず、失望や失意の中で希望を持つことができなかったり、医療者を含めた他者への拒否、という表出のしかたになってしまうのかもしれません。

教科書的には「患者が求めていること」をさぐって、なるべくそれに沿った医療を提供することが望ましいのですが、現実としてこのような方に「何を求めているか」と聞いても、「旅行したい」「○○が食べたい」などのポジティブな回答を得ることは難しいですし、逆に「何も望まない」「死ぬのを待つだけ」といったネガティブな言葉しか出ないことも少なくありません。

おそらくできるのは、現実の制約である、後遺症・ADL・家族の介護力・経済状況・介護度などを前提として、家族を含め、患者さんを見守る私たちチームで協力し、使える介護サービスなども利用した上で、いかに日々の淡々とした生活を安心して送れる環境を作れるかどうか、ということだと思います。そうした淡々とした生活の中で、今日の昼ごはんは美味しかった、今日は天気が良い、などの小さな喜びや小さな安息感を積み重ね、その中で徐々に現状の受け入れが進んでいき、その先に「何をしたい」といった希望が生じてくるのではないかと思います。

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