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1. 薬物動態の変化を伴う薬物相互作用 はじめに

2016年11月15日 13:30

独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター
杉山特別研究室 杉山雄一
東京大学医学部附属病院 薬剤部 鈴木洋史

 併用により薬効の増強や減弱などの変化を生じることを薬物相互作用と呼び、薬理学的相乗作用で生じる薬力学的なものと、体内動態変化を伴う薬物動態学的なものの2種類があります。日本で使われる治療薬は2,000~3,000 種といわれ、その組み合わせの相互作用を全て調査することはとても不可能です。

 したがって、相互作用のしくみにより薬剤をグループ分けし、グループの組み合わせでリスクを判断する考え方が必要です。本特集の薬物動態の変化を伴う相互作用に関連する薬のリストはそのような考え方を支援するために、私たちが2009年から更新を加えつつ本誌に掲載してきたものです。またその間に筆者の一部が協力して、「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」が作成されました。

 このガイドラインは、新薬開発時に相互作用の可能性を見落とさず、また見いだした場合は、情報を医薬品添付文書により適切に伝達するためのものですが、その中で相互作用の強さを表現する方法として、私たちも提唱してきた薬剤をグループ分けする考え方が取り入れられました。その意味では本特集はガイドラインと血縁関係にあるといえます。しかしこの特集には、消化管内の相互作用やトランスポーターに関して積極的に記載するなど、独自の特徴もあります。

 薬物の体内動態を制御する薬物代謝酵素やトランスポーターの活性を変化させる阻害薬や誘導薬は、基質薬に薬物相互作用を引き起こします。ポスターでは一覧性を考慮してその中で重要な相互作用薬を、臨床で観察されたエビデンスに可能な限り基づいて作成されています。その点でそれらを組み合わせて服用した場合に薬物動態変化のおきるリスクは無視できません。ただし、その変化に対し臨床的対応が必要かはユーザーの判断に任されています。

 また、基質薬、すなわち相互作用を受ける薬同士を一般の用量で併用しても、ほとんどの場合に薬物相互作用は認められないのでご注意ください。この表は添付文書を正しく認識した上で、 その理解を深め補足するためのものです。決してその早見表ではありません。相互作用への対処が、薬物動態の機械的チェックになると危険です。十分な臨床の知識を持つ薬剤師こそが、このポスターを上手に使いこなすことが可能であり、それによってのみ医療の本質的な質の向上が実現するのです。

[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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