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患者さんがお家に入れてくれません

在宅活動のピットフォール - Case1 -

2016年11月15日 00:07

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 在宅活動を始めた、もしくは関心があるのだけれど、いざ実践となると、「唐突なハプニングに対応できる自信がない」という初心者の方もいるのでは。これから毎月、実際の活動で起こりえる落とし穴(ピットフォール)を事例に挙げ、その対応方法、解決策を探っていきます。

Case1 患者さんがお家に入れてくれません

契約時には納得してくれたものの、いざ患者さん宅を訪問すると家の中に入れてくれません。
その理由としてはどんなことが考えられますか?
また、その場合、どのように対応すればよいでしょうか?

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〈対策〉
薬剤師が訪問してどのようなことをするのか
契約時に具体的に伝えておく
 契約時の説明が「薬剤師が訪問してお薬をお届けします」だけですと、こちら側は家に上がって患者さんにお会いするのを当たり前に思っていても、患者さんやご家族は玄関先の薬の受け渡しでおしまいだと勘違いすることがあります。この誤解を防ぐには、契約時に、薬剤師が訪問してどのようなことをするのか、具体的に伝えておくことが大事です。
 ①服薬状況から服薬のタイミングを確認するだけでなく、嚥下状態や、薬の剤形が適正であるか、用法用量に無理がないかを判断します。②薬剤は適正に管理されているのかを確かめます。薬があちこちに散らばっていないか、直射日光の当たる所や暖かい場所で保管していないか、冷所品は冷蔵庫に保管されているのか、などです。さらに、③バイタルチェックなどを行って総合的に患者さんの状態を見ていくのだと、説明するとよいでしょう。

〈エピソード〉
毎回自己紹介をして家に上がらせてもらった
認知症の独居の方
 以前、認知症の独居の方を訪問していました。毎回、不審な人が家に来たと思われていたのでしょう。家の中に入るために、必ず自己紹介からスタートしていました。「薬剤師の雜賀です。お薬を持ってきました」と挨拶すると、「薬なんて飲んでたかしら? 」と言います。そこで「息子さん(キーパーソン)から、薬を持ってくるように言われています。冷蔵庫にお薬が入ったカレンダーがあると思うので、そこにセットしたいのですが、少しだけ上がらせていただけませんでしょうか? 」と伝えると、「息子が勝手にそんなことを頼んでたの。それはご苦労様です。あの子は何も言ってこないから。まあ、どうぞ上がってください」となります。毎回この繰り返しです。独居の方の場合、キーパーソンから頼まれているという言葉は、かなり有効だと思いました。

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〈理由〉
家族が患者さんを見せたくないと思っている
 ご家族が家の中に入ってほしくないと考えていることは少なくありません。例えば、家の中が散らかっている、患者さん/ 介護者自身の気分が悪くて応対したくない/させたくない、患者さんが粗相をした後で他人に見られたくないといった理由が考えられます。他にも、一度は薬剤師の訪問を理解して契約を結んだものの、他人が家の中に入ってくることや、新しい人間関係の受け入れに対する不安が後から生まれることも考えられます。
 また、患者さんの健康状態や薬の処方内容が前回訪問時と変わらないから、薬剤師とは会う必要がないと、ご家族が思い込んでいる場合もあります。はっきりと「症状が変われば医師に相談するから薬だけ置いていってくれればよい」と言われることもあります。

〈対策〉
まずは訪問に慣れていただくことから
 初めのうちは無理強いをしません。まずは訪問に慣れていただくために、コミュニケーションを重ねていきます。そのうちに、例えば「外用薬の使用期限を確認しましょうか? 」とか「ちょっとご様子を拝見したいのですが」、「お薬の保管状況を見せてください」などと言って、具体的な訪問活動を理解できるように仕向けていきます。ケアマネジャーに同行してもらって一緒に上がる機会をつくってもらうこともあります。
 緊急にお薬が出たときはチャンスです。「患者さんの状態を確認する必要があるので」と言って、お宅に上がってしまうのです。

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〈理由〉
訪問指導の目的が十分理解されていない
 一番大きな理由として、在宅(居宅)訪問指導の目的や活動内容が、患者さん(利用者さん)やご家族に十分に理解されていないことが考えられます。一般的に、在宅訪問は患者さんあるいはそのご家族との間に話し合いの場を設けて、重要事項説明を行い、契約を行った後で始まります。重要事項説明の際に、薬剤師が何の目的で訪問するかをお伝えするとともに、薬学的管理指導や服薬支援は直接患者さんにお話しして行うということを、しっかりと説明するのがよいと思います。

〈対策〉
まずは「患者さんの様子を見たい」と伝える
ケアマネに相談するのも一手
 訪問時にご家族が対応され、玄関先でのお薬の受け渡しになりそうなときは、「ご本人とお話ししてご様子をうかがってもよろしいでしょうか? 」と一声かけるのも重要です。薬剤師には、そういったコミュニケーションを不得手としている方も多く見受けられます。
 部屋が散らかっていて見られたくない、私生活を見られるのが嫌だといった理由で、家の中に入ってほしくないということも考えられます。そのような場合は、ケアマネに同行したり、相談をして改善策を練るというのも1つの方法ではないかと思います。

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〈対策〉
「患者さんの様子を確認したい」と伝える
 訪問時に「患者さんはどちらですか? 」と言って、「失礼いたします」と当然のように上がってしまうのがいいと思います。それが難しそうなときには、「お薬の効果や副作用を確認するため、患者さんのご様子を見せてください。どちらにいらっしゃいますか? 」と、薬剤師の訪問の意義をお伝えして尋ねると、比較的すんなりとご自宅に上がることができます。
 家の中に入ったら、お薬カレンダーに薬をセットするだけではなく、バイタルサインや薬の効果を評価して、患者さんやご家族に伝えます。さらに、患者さんやご家族の抱えている問題点をヒアリングして解決への提案をしたり、ケアマネや訪問看護師に伝えれば、次からも家の中に受け入れてくれると思います。

〈エピソード〉
たまに来る親戚がキーパーソンのことも
 奥様と二人暮らしのがん終末期の患者さんがいました。普段は家に上がり、ご本人とお話しして、痛みの評価や褥瘡の確認をしていました。しかし、県内の少し離れたところから娘さんが来られたときには、奥様が「今、娘が来てて...」と、なかなか家に上げてくださいません。「今の痛み止めで十分効果が出ているか、先生にお伝えして、次のことを考えなければいけないのですよ」と言って家に上がりました。娘さんは「なんで薬剤師がそんなことするの? 」と不満そうな表情でした。
 後日訪問した際のこと。玄関先に出てきた奥様が「最近、(患者さんが)苦しそうだから、娘が心配して来てくれてるの」と言って、渋い顔をしています。家の中からは患者さんの唸り声が聞こえてきます。そのまま帰るわけにはいかず、患者さんのお部屋へ上がりました。痛みが強くて呼吸が荒くなっており、苦しがっています。その場で医師に連絡したところ、オピオイドの持続皮下注射の開始が検討されました。その日の夜遅く、医師と共に再訪問し、オピオイドの投与を開始したところ、患者さんの状態は落ち着きました。娘さんの態度はそれ以降少し変わり、家に上げてくれないということもなくなりました。奥様がしっかりしていたのでキーパーソンだと思ったのですが、実は離れたところに住んでいる娘さんだったということが分かりました。
 このように、日々お会いしているご家族はよくても、たまに来る親戚などの理解が得られない場合も多くあります。

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