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海を渡る院外処方箋

2016年11月28日 10:45

 小笠原諸島父島にある小笠原村診療所では、院内処方箋を主に取り扱っていますが、在庫が不足しているときや、普段処方されない薬が処方された場合などには院外処方箋を発行します。ところが、コラムのコーナータイトルからもわかるように、小笠原で調剤を行っているのは小笠原村診療所薬剤部のみ。さて......院外処方箋の行方はどうなるのでしょうか。

院外処方箋の行き先は・・・・・・

 当診療所に在庫がない薬が処方されたとき、院外処方箋を出すことになります。処方箋は都内の薬局にFAXで送信します。調剤してもらった薬は全ておがさわら丸で郵便物として届きます。FAXしたのち、処方箋の原本はあらためて薬局へ郵送します。処方箋を手渡しして、上京して薬局で薬をもらうという人も時折いますが、ほとんどがFAXで対応しています。

 薬の服薬指導については、まさにこれが院外処方最大の問題とも言えるところです。内地の薬局は対面で直接の説明はできません。院外の薬局からどのような薬が渡されるか、という説明は診察の時点で医師が行っていますが、薬を受け取ってからのフォローは、私や調剤した内地の薬局が行います。カルテや処方箋の控えを手元に用意して私が対応するほか、患者さんから薬局に連絡があった場合は薬局で対応してもらっている具合です。

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 11月中旬、父島の中心部の様子。この通り沿いにスーパーや生協、農協などがあり、一つ入れば宿や飲み屋などが軒を連ねている。道路の突き当りが村役場。さわやかな秋晴れであるが、気温は高い。11月中旬でさえ、窓を閉め切った日中の車の中は、暑くて5分と居られない。車と言えば、父島ではガソリンはリッターあたり230円程度する。ところがこんなにガソリンが高いのに、なぜか島民はすぐ目の前の距離でも歩かず車に乗る場合が多い。ちなみに小笠原では車庫証明は不要だった。

セルフメディケーションで対処したくても受診

 ひとり薬剤師と言っていますが、実は、父島には薬局が一軒あります。この薬局では一部のOTCを扱っていますが、どちらかというと土産物屋さん、もしくは雑貨屋さんのような感じで、島民・観光客とのコミュニケーションを取っているようです。さらに、母島にはそのような店もなく、酔い止めすらも診療所にかからないともらえません。したがって、通常ならセルフメディケーションで対処できそうな場合でも、小笠原では診療所にかかることになります。小笠原は物価が高く、薬も例外ではありません。内地のドラッグストアのような激安店もありません。結果的に診療所にかかるほうが安くすみますし、何より「医師に診てもらえる」安心感がもあるのかもしれません。

 これらの 医療、薬局事情を考慮すると、小笠原への観光には「常備薬などは忘れず携帯してくること」が重要と言えます。

【コラムコンセプト】
 僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
 大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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