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C型肝炎に4番目のIFNフリーDAA

エルバスビル+グラゾプレビル

2016年12月05日 12:00

 新たな経口C型肝炎治療薬エルバスビル(商品名エルレサ®)およびグラゾプレビル(商品名グラジナ®)が発売になったことを受け、11月29日にMSD社主催のメディアセミナーが開かれた。両薬は、インターフェロン(IFN)フリーの直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で、ゲノタイプ(GT)1型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変に対して、1日1回12週間併用投与する。虎の門病院肝臓センター部長の熊田博光氏は、同セミナーで「エルバスビルとグラゾプレビルの併用は効果が良好で副作用が少なく、幅広い患者に使用が可能。C型肝炎の治療選択肢が増えた」と述べた。(以下、併用は+、合剤は/で表示)

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NS5A耐性変異があってもSVR12達成率93%

 わが国のC型慢性肝炎患者数はキャリアを含めると150万〜200万人と推定され、肝がんによる死亡数も年々増加している。C型肝炎ウイルスに感染すると、30%は急性肝炎で治癒するが70%は慢性化する。慢性肝炎の進行は緩徐だが、治療しないと確実に肝硬変、肝がんへと進展する。IFN療法が中心だったC型肝炎の治療は、2014年にIFNフリーのDAAが登場したことで劇的に変化した。

 エルバスビル+グラゾプレビルは、(1)ダクラタスビル+アスナプレビル、(2)ソホスブビル/レジパスビル、(3)オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル-に続く、4番目のIFNフリーDAAとなる。

 熊田氏は、国内第Ⅲ相試験における同院の28例(C型慢性肝炎19例、C型代償性肝硬変9例)について治療成績を紹介した。対象は比較的若年者が多かったが(年齢中央値61歳)、エルバスビル+グラゾプレビルは経口薬のため高齢者(70歳代6例)も含まれ、最高齢は79歳であった。

 その結果、ほぼ全例で投与開始後4週からウイルスの陰性化が見られ、1例が再燃したが27例は治癒した。同氏は「当院での第Ⅲ相試験における治療効果は良好で、重大な副作用も出現しなかった」と述べた。

 国内第Ⅲ相試験全体でも、ウイルス学的著効(SVR)12達成率がC型慢性肝炎患者96.5%、C型代償性肝硬変患者97.1%と良好な結果であった。治療歴の有無、性、IL-28B遺伝子タイプ、GT(1aまたは1b)による有意差は見られず、いずれもSVR12達成率は95%を超えていた。ウイルス耐性変異別のSVR12達成率を見ると、NS5A領域に変異がある例ではSVR12達成率が若干低かった(93.1%)ものの、良好な成績といえる。

4種類のDAAで異なる副作用

 IFNフリーDAAの市販後の副作用については、ダクラタスビル+アスナプレビルではALT上昇と発熱が多く、かぜの症状が多く見られるのが特徴がある。ソホスブビル/レジパスビルでは全体的に副作用は少ないが、脳出血や動悸/徐脈(1.5%)、腎障害(0.9%)といった重篤なものが見られた。オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビルでは腎障害(1.0%)とT-Bil上昇(2.9%)が見られた。

 ソホスブビル/レジパスビルとオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビルでは、副作用が発現する部分が異なる。そのため同院では、心機能が低下している人はオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル、黄疸の恐れがある人はソホスブビル/レジパスビルなどと使い分けているという。熊田氏は「ソホスブビル/レジパスビル処方時に注意が必要なのは高血圧、糖尿病、高齢者(60歳以上)。オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル処方時には黄疸、カルシウム拮抗薬、腎機能に注意すべき」と述べている。

 エルバスビル+グラゾプレビルの副作用については、現時点では臨床試験の結果のみで症例数は少ないが、同院ではALT上昇(6.7%)が認められ、これまでのDAAでは見られなかった下痢(22.2%)が多かった。しかし、脳や心臓、腎臓などでの重篤な副作用は全く認められなかったという。

新薬の意義は既存薬に対する改善点の存在

 臨床試験全体では、肝硬変群で胃腸障害(17.1%)が多く見られたが、慢性肝炎群ではプラセボと同等であった。このことから、熊田氏は「肝硬変症例では、エルバスビル+グラゾプレビル投与によって便秘や下痢の発現が考えられる」としながらも、「効果が既存薬と同等に良好かつ重篤な副作用がないことにこそ、4番目のDAAとしてのエルバスビル+グラゾプレビル発売の意義がある」と強調した。

 GT1型C型肝炎に対する治療法は、今後どのように選択すべきであろうか。これまで、同院におけるGT1b型C型肝炎の治療選択は、1. NS5A耐性変異がある場合はソホスブビル/レジパスビル、2. 変異がなく心臓や腎臓の合併症もない場合はソホスブビル/レジパスビルまたはオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル、3. 腎障害患者はオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(透析症例はダクラタスビル+アスナプレビル)−としていた。今後は1~3全てにエルバスビル+グラゾプレビルという治療選択肢が増えるという。同氏は「当院でも既にエルバスビル+グラゾプレビルの使用を開始したが、安全に使ってもらえればと考えている。新薬の意義は既存薬に対する改善点を有することである。そうでなければ市場から淘汰されるだろう」とまとめた。

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