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医師から訪問指示がもらえません

在宅活動のピットフォール - Case2-

2016年12月14日 00:07

 在宅活動を始めた、もしくは関心があるのだけれど、いざ実践となると、「唐突なハプニングに対応できる自信がない」という初心者の方もいるのでは。これから毎月、実際の活動で起こりえる落とし穴(ピットフォール)を事例に挙げ、その対応方法、解決策を探っていきます。

Case2 医師から訪問指示がもらえません

薬剤師の活動に対して医師の理解がない、在宅医療メンバーに薬剤師が入っていない、近所の医院で在宅活動を行っていないなどの理由で訪問指示をもらえず第一歩が踏み出せないような場合、どのようにしたらよいでしょうか?

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千葉県・勤務先の1カ月の在宅患者の処方箋枚数 350枚

〈対策〉
患者さんにとってのメリットを理解してもらう
 最近になって、ようやく薬剤師が在宅活動していることを知っている医療・介護従事者が増えてきましたが、それでもまだ在宅活動の内容を理解していない医師やケアマネはたくさんいます。
 特に、病院勤務医など在宅活動に日ごろ触れていない医師が、突然薬剤師から「訪問指示をください」と言われて、「え? 指示って何? 」と困惑するのは当然です。このような医師には、なるべく時間をつくって、直接説明するのがよいと思います。薬剤師が訪問してどのようなことをするのか、薬剤師が訪問すると患者さんにとってどのようなメリットがあるのかを理解してもらえれば、ダメという医師は少ないのではないでしょうか。

〈さらに1歩〉
在宅活動を行っていない医師も、訪問指示は出せる
 「在宅活動を行っていない医師は訪問指示を出せない」と思っている医師・薬剤師がいると聞いたことがあります。通院されている患者さんであっても、「通院困難」と判断されれば薬剤師は訪問することができます。このようなケースでは、医師に対して「受診は3 カ月に1 回でも、訪問指示をいただければ、私が家での服薬を定期的にフォローし、状況報告もできますので、安心して処方いただけますよ」と伝えるとよいでしょう。病院を離れた後の患者さんの状態が気にならない医師はいないと思います。同じ医療人として、みんなで1 人の患者さんを支える気持ちで、医師に丁寧に説明してみてはいかがでしょうか。

※「通院困難」とは......
医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」の算定要件では、
「在宅での療養を行っている患者であって、通院が困難なもの」に対して実施すると記載されています。
具体的には、医科点数表の「在宅患者訪問診療料」の算定要件などより
「通院時に家族や介護者等の助けが必要な場合は通院困難であると解釈でき、完全に寝たきりでなくても、
認知機能や身体機能が低下した結果、通院が困難になっている場合も算定対象になり得る」とされています。
(参考:日本薬剤師会 監修『平成25年版 在宅医療Q&A』 じほう)

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愛知県・勤務先の1カ月の在宅患者の処方箋枚数 500枚

〈対策1〉
担当医に薬局の在宅活動を知らせる
 薬局の在宅活動を知らない医師は、まだまだ多いです。また、知っていても、どのように薬局に指示を出したらいいか分からない医師も少なくありません。担当医が訪問診療していなくても薬剤師が訪問できることを伝え、FAXで指示書のフォーマット〈対策2〉を送ったり、電話で説明して口頭で指示をいただいたりします。  
 ケアマネジャーから、院内処方をしている医師との連携の相談を受けることもあります。しかし、医師が院外処方箋を発行していなければ訪問はできません。そのことはケアマネや患者さんにあらかじめ伝えておくほか、院内処方をしている医師には、院外処方箋の発行を依頼した上で指示書をお願いすることもあります。

〈対策2〉
指示書フォーマットを作成して医師にFAXする
 私の勤務先では、医師から薬局への指示書と情報提供書のフォーマットを作成し、医師宛にFAX を送っています。このフォーマットは医師がチェックを入れるだけで指示ができるようになっています。FAX を見た医師からの問い合わせに応じて、訪問サービスについて説明すれば、指示をいただけることが多いです。
 それでも医師の理解が得られない場合は、患者さんの意志に任せます。ずっと診てもらっているからという理由で、患者さんが医師とのつながりを優先する場合は、なかなか先に進みません。患者さんの希望に寄り添って時期を待つこともあります。

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千葉県・勤務先の1カ月の在宅患者の処方箋枚数 100枚

〈対策〉
簡単です。行動を起こしましょう。
 保険料の算定はできませんが、在宅訪問は指示がなくても始められます。困っている患者さん(利用者さん)がいるのであれば、まずはお家(居宅)を訪問し、服薬指導をしてもよいのではないでしょうか? それから、在宅訪問したことを医師やケアマネに報告すれば、「薬剤師は不要」という声はあがらないと思います。

エピソード
在宅活動が理解されていなかった
 病院の地域連携室から、「患者さんが自宅療養を始めます。お薬の配達をお願いできますか? 」との相談がありました。「在宅訪問しての服薬指導ということでよろしいですか? 」と尋ねたところ、「何ですか、それは? 」との反応。薬剤師が在宅訪問して服薬指導する内容を説明し、理解していただけました。そのころ新聞やテレビなどで報道されていた無料の薬の宅配サービスができると思っていたようです。このように、まだまだ薬剤師の在宅活動について周知が足りていないのが現状です。他職種の医療・介護関係者に、在宅における薬剤師の役割を認識してもらう必要性があると考えています。
 2016年4月から、千葉市薬剤師会と千葉市は協働で、「千葉市在宅医療・介護対応薬剤師認定事業」を開始しました。在宅患者に「最適かつ安全安心な薬物療法」を提供し、必要に応じて他職種と連携できる薬剤師を増やすことを目的とした事業で、ケアマネや訪問看護師との連携や、薬局同士の連携などに関する研修会を開催しています。このような研修・勉強会などに積極的に参加する姿勢も大切ではないでしょうか。

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群馬県・勤務先の1カ月の在宅患者の処方箋枚数 500枚

〈対策〉
まずは訪問して、医師やケアマネに報告してみては
 ケアマネにアプローチする方法もあります。ケアマネは患者さんの生活状況をよく理解しているので、訪問が必要と思われる患者さんがいたら、担当のケアマネに問い合わせてみるとよいと思います(最終的には医師の指示が必要ですが)。
 今年4月から始まった「かかりつけ薬剤師」の制度では、必要であれば患者宅を訪問してもよいとされています。まずは訪問して服薬に関する問題点を抽出し、ケアマネや医師に報告するのが第1 歩になるのではないでしょうか。

〈エピソード〉
訪問指示はなかったが訪問を続けた患者さん
 県内の基幹病院から退院した患者さんがいました。2 回目の脳梗塞で入院していたのですが、片麻痺があり、糖尿病も併発していました。奥様は退院後の慣れない介護に加えて、多くの薬剤の管理をしなければならず、困っていたようです。訪問看護師やケアマネから、相次いで「行ってほしい」と私に連絡が来ました。
 退院後の担当医は訪問診療をしておらず、奥様が患者さんを車椅子ごと車に乗せて通院していました。ケアマネが、医師に私の在宅訪問を提案してくれましたが、「門前の薬局があるし、訪問診療をしていない。通院困難とも言えないのでは」と断られてしまいました。訪問指示はありませんが、処方箋は当薬局へお持ちいただいていましたし、近くでしたので患者さん宅へ何回か伺って、分かりやすいように一包化し直して残薬を整理したり、服薬のお手伝いをしました。奥様も退院後の生活に慣れて、徐々に服薬管理ができるようになり、私の薬局に薬を取りに来るようになりました。訪問看護の回数も減っていきました。
 その後、患者さんは担当医を変更しました。患者さんは現在、回復傾向にあり、食事も取れるようになりました。現在も訪問指示はないものの、かかりつけ薬剤師として時々患者さんの様子を見に行っています。
 訪問は一度始まったらずっと継続しなければいけないというものではないと思います。薬の効果が確認できる状態にあれば、患者さんの自立を目指して、少し離れたところから見ることがよいときもあります。それでも患者さんから目は離さず、必要があればまた支援を始める...そのようなスタンスがよいのではないでしょうか。

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