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小児感染症における薬の使い方-1

第43回日本小児臨床薬理学会学術集会 小児薬物療法薬剤師セミナー

2017年01月17日 15:30

日本小児臨床薬理学会は、主に小児・新生児科医師と薬剤師の会員で構成されています。今回は、意欲あふれる参加者で満員となった学術集会2日目の小児薬物療法薬剤師セミナー「小児感染症における薬の使い方」の「尿路感染症の抗菌薬療法の適応と選択」をレポートします。

【第43回日本小児臨床薬理学会学術集会】

小児薬物療法薬剤師セミナー「小児感染症における薬の使い方」

会期:2016年11月11日(金)・12日(土)

会場:ホテルアジュール竹芝(東京都港区)

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東京都立小児総合医療センター感染症科
堀越裕歩 氏

尿路感染症の抗菌薬療法の適応と選択

効いていても、より適した治療を選択

 尿路感染症は、生後2カ月~2歳の小児の3~6%で起こり、年齢とともに女性の比率が上昇するとされる。繰り返す尿路感染症は腎臓にダメージを与え、腎機能障害のリスクになることが知られている。腎盂腎炎、膀胱炎、無症候性膿尿のうち、小児では腎盂腎炎の治療が必要になることが多い。

 尿路感染症治療の際、抗菌薬選択の参考になるのが尿のグラム染色である。グラム陰性桿菌が見つかれば、基礎疾患のない患児は大腸菌、基礎疾患のある患児は緑膿菌を考える。グラム陽性球菌が見つかった場合は、腸球菌が原因菌であることが多い。その後、培養により"有意な量"の"有意な菌"が同定された場合に最終診断が付く。

 グラム染色で大腸菌を疑った場合は、その地域のアンチバイオグラムによって異なるが、ペニシリン耐性が多くなっていることから、第1~第3世代セフェム系が第1選択になるケースが多い。緑膿菌の場合は、抗緑膿菌薬であるピペラシリン、セフタジジム、ゲンタマイシンなどが第1選択となる。腸球菌の場合、セフェム系に対して自然耐性を持っているので、アンピシリンやバンコマイシンが選択される。

 細菌感染症の治療は、想定される菌をカバーする抗菌薬で初期治療を開始し、培養結果が判明し次第、その結果に基づいてescalation(より広域の治療にする)もしくはde-escalation(より狭域の治療にする)を行う。escalationは抗菌薬が効いていないケースで行われ、de-escalationは抗菌薬は効いているが、より狭域の薬がある場合に行われる。この点について同氏は、「感染症に関しては、効いている治療でも、より適した治療に変えるという意識を持ってほしい」と述べた。なお、de-escalation できる条件は、(1)感受性が判明している、(2)患者が良くなっている、(3)対象の臓器に移行性の高い薬剤がある―の3 点である。

耐性菌対策のためにも抗菌薬の適正使用を

 2011年にWHOは、「No action today, No cure tomorrow(今、行動しなければ、明日の治療はない)」という声明を出し、世界中で耐性菌に対する注目が高まっている。日本でもESBL(extended spectrum β lactamase:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)産生菌やAmpC型β-ラクタマーゼ産生菌、CRE(carbapenem resistant enterobacteriaceae:カルバペネム耐性腸内細菌群)、CPE(carbapenemase producing enterobacteriaceae:カルバペネマーゼ産生腸内細菌群)()などが問題になっている。2016年に厚生労働省から薬剤耐性アクションプランが発表され、2020年までに全抗菌薬の使用量を33%抑える(2013年比較)などとされた。東京都立小児総合医療センターでは、抗菌薬の適正使用プログラムとして、電子カルテによる処方制限・許可制の導入、感受性結果の報告、薬剤の種類や投与量、投与回数の標準化、薬剤の使用量や耐性菌の解析を行っている。これにより、各抗菌薬の使用量が47~95%ほども削減できたという。患者に対しても「かぜに抗菌薬は効きません」「処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう」「手洗い・ワクチンでの予防が大切」などの啓発活動を行っており、それぞれの施設でも抗菌薬の適正使用に協力してほしいと述べた。

耐性菌に対する抗菌薬選択案

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※Fukuchi, et al. BMC Infect Dis 2016: 16: 427.

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