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小児感染症における薬の使い方-2

第43回日本小児臨床薬理学会学術集会 小児薬物療法薬剤師セミナー

2017年01月18日 11:00

日本小児臨床薬理学会は、主に小児・新生児科医師と薬剤師の会員で構成されています。今回は、意欲あふれる参加者で満員となった学術集会2日目の小児薬物療法薬剤師セミナー「小児感染症における薬の使い方」の「抗インフルエンザ薬の適応と選択」をレポートします。

【第43回日本小児臨床薬理学会学術集会】

小児薬物療法薬剤師セミナー「小児感染症における薬の使い方」

会期:2016年11月11日(金)・12日(土)

会場:ホテルアジュール竹芝(東京都港区)

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静岡県立こども病院小児感染症科
荘司貴代 氏

抗インフルエンザ薬の適応と選択

日本におけるインフルエンザの現状

 季節性インフルエンザで受診する患者は、シーズンごとに異なるが、700万~1,500万人ほどといわれている。季節性インフルエンザに感染すると、健常児の多くは上気道炎を発症し、基礎疾患を持つ患児は肺炎などで重症化することがある。インフルエンザ脳症は日本人で報告が多い合併症で、年間50 例前後発生し、基礎疾患がない患児にも発症しうる。インフルエンザワクチンは自己負担であり、ワクチンを接種しないケースも多い。学校で集団発生すると学級閉鎖となり、保護者の負担も社会的・経済的な負担も大きい。世界的に見て、抗インフルエンザ薬の多くが日本で使用されているのは、インフルエンザワクチンが定期接種ではないことの裏返しなのではないか、と荘司氏は述べた。

 ノイラミニダーゼ阻害薬は、2014 年のコクラン・レビューで、(1)発症48 時間以内に投与すれば約1 日発熱期間が短くなる、(2)重症化につながるリスクの軽減についてはエビデンスが得られなかった、(3)発症前に予防投与しても、インフルエンザを予防できるとは限らない―などが示された。

抗インフルエンザ薬の剤形の使い分けと曝露後予防

 内服薬は吸入できない乳幼児や、呼吸苦がある場合に用いる。吸入薬は、吸入できる年長児以上が対象。吸入後に気管支攣縮や呼吸機能の低下が見られた例が報告されているため、喘息の既往患者には適さない。点滴は、下痢・嘔吐症状があるような、消化管からの吸収が困難な患者が対象となる。

 病院機能維持のための曝露後予防としての抗インフルエンザ薬使用は、リスクとベネフィット、費用などを考慮して決定する。院内感染対策の質を向上させて、面会者に症状があるときは来院しないように情報提供したり、面会者のチェックを行う他、流行前に職員や患者へのワクチン接種を実施し、体調が悪い職員には早退や自宅待機を指示する。流行期には職員の咳エチケットを徹底し、発症者の早期発見・隔離・治療、接触者には行動制限や症状観察をする。これらの感染対策をしたにもかかわらず院内で流行した場合に、曝露後予防として抗インフルエンザ薬の投与を行う

 「当院の感染対策導入前の抗インフルエンザ薬の使用履歴は、2013~14 年には予防投与で38%使っていた。感染対策導入後の2015~16年には8%程度に減り、院内感染で大きな問題はなかった」とし、「ワクチン接種をはじめとした対策に力を入れ、曝露後予防としての抗インフルエンザ薬使用は最終手段として考慮してほしい」と述べた。

 このように小児中心の病院では、感染対策を徹底すれば、予防投与をせずとも感染症のコントロールが可能である。しかし、高齢者が集中する療養施設は対策が異なることを認識しておきたい。高齢者施設では毎年、インフルエンザ集団発生に伴う死亡事例が報告されている。入所者にとって生活の場であり、面会者や患者同士の交流が多く、院内感染対策を適応することが困難である場合に限られるが、日本感染症学会は高齢者施設でインフルエンザ患者が発生した場合の抗インフルエンザ薬の予防投与を推奨している。

※オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物を予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。ただし、ザナミビルは慢性心疾患患者のみ。
 (1)高齢者(65 歳以上)
 (2)慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
 (3)代謝性疾患患者(糖尿病等)
 (4)腎機能障害患者

ノイラミニダーゼ阻害薬による治療指針

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日本小児科学会インフルエンザ対策ワーキンググループ.
2013/2014シーズンのインフルエンザ治療指針.2014.より作成

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