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肝性脳症と新薬リファキシミン

重篤な合併症・肝性脳症

2017年02月01日 08:00

 肝疾患が原因で、精神神経症状を来す肝性脳症をご存じだろうか。肝硬変や劇症肝炎などの重篤な合併症である肝性脳症は、体内で産生されるアンモニアやアミノ酸の異常によって起こるとされている。昨年(2016年)11月、肝性脳症における高アンモニア血症を改善する難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名リフキシマ錠200mg)が日本で発売された。大阪市立大学大学院肝胆膵病態内科学教授の河田則文氏が、1月18日に東京で開かれたメディアセミナー(主催:あすか製薬株式会社)で、肝性脳症の病態と治療を紹介した。

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疾患の認知不十分、羽ばたき振戦テストで簡便に拾い上げ

 日本肝臓学会の「肝がん白書 平成27年度」によると、日本の肝炎患者数は300万人に上り、肝硬変患者は50万人と推計されるという。肝性脳症はこれらの肝疾患が進展し、肝機能の低下に伴って出現する重篤な合併症の1つである。

 しかし、肝性脳症には統一した診断基準はなく、河田氏は「十分に認知されているわけではない」と指摘する。肝性脳症の症状は、自覚症状がないものから昏睡まで、程度に差がある()。初期症状は、人格・行動の微妙な変化、判断力の低下、睡眠パターンの乱れが生じるなど、認知症の症状に類似している。そのため、症状が進展してから専門医を受診する患者が少なくないという問題がある。

 肝性脳症が進展すると、異常行動や特徴的な羽ばたき振戦などの神経症状が出現する。羽ばたき振戦を簡便に確認できる方法として、まず患者に手掌を下にして両腕を前方に突き出してもらう。次に、手掌が正面に向くよう手首を背屈させる。肝性脳症であれば、手首を背屈させた状態が維持できず下に下がり、その後再び正面に戻そうとする。この連続した動きが鳥の羽ばたきに見えることから、羽ばたき振戦と呼ばれる。

リファキシミンはアンモニア産生菌を抑制する新機序薬

 肝性脳症の診断では、前述の羽ばたき振戦、肝性口臭(アンモニア臭)、黄疸、腹水、下肢の浮腫といった身体所見を確認する。さらに、血液検査(総ビリルビン濃度の上昇、低アルブミン血症、プロトロンビン時間の延長などの凝固異常、アンモニア濃度の上昇)、画像検査を実施。精神・神経症状があれば肝性脳症と診断し、昏睡度を求める()。

. 肝性脳症の昏睡度分類

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(当日配付資料) 

 肝性脳症の原因として、肝機能低下に伴う体内のアミノ酸やアンモニアの異常が指摘されている。肝機能が低下すると血中のアミノ酸バランスが崩れ、肝性脳症を来す場合がある他、正常なアンモニア代謝が行われず、アンモニアが脳に移行することで肝性脳症を来すと考えられている。

 これらへの治療アプローチとして、腸内のpHを低下させ腸管でのアンモニアの吸収を抑制する合成二糖類・ラクチトール製剤や、筋肉におけるアミノ酸代謝を促進する分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤などが用いられている。

 昨年、日本で承認されたリファキシミンは、アンモニア産生菌を抑制し、血中のアンモニア濃度を低下させる新しい機序を有する薬剤である。肝性脳症昏睡度(ConnスコアⅠ~Ⅲ)の成人患者103例を対象としたランダム化比較試験では、ラクチトール群に比べてリファキシミン群で血中アンモニア濃度、Portal-Systemic Encephalopathy(PSE)インデックスのいずれも有意に改善した(各P=0.008、P=0.0103、J Hepatol 2003; 38: 51-58)。また、非代償性アルコール性肝硬変患者を対象とした検討では、生存率は対照群に比べてリファキシミン群で有意に高かった(13.5% vs. 61%、P=0.012、J Gastroenterol Hepatol 2013; 28: 450-455)。

第一選択薬になる可能性を付記

 昨年11月に発刊された日本肝臓学会の「肝臓専門医テキスト(改訂第2版)」によると、肝性脳症の治療フローとして、まずBCAA輸液製剤+合成二糖類を投与、覚醒効果があれば投与を継続し、さらにBCAA顆粒を併用するという。一方、これらの既存治療で十分な効果が得られない場合は、リファキシミンを投与するなどとしている。

 なおこの治療フローでは、経口摂取が可能な昏睡Ⅰ~Ⅲの肝性脳症患者に対しては、合成二糖類とともにリファキシミンが第一選択薬になる可能性があることが付記されている。河田氏は、昏睡を来した患者では早く覚醒させる必要があるため、リファキシミンが肝性脳症の第一選択薬に位置付けられると展望した。

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