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第17回 学会発表、この点はどうなのよ

帝京大学整形外科学教室 渡部欣忍

2017年02月08日 09:45

 多くの学会や研究会に共通する問題点を今回は幾つか書いてみましょう。

抄録が「構造化抄録」の体をなしていない

「構造化抄録」とは、発表内容が正しく理解・吟味できるように工夫された抄録です。

 臨床研究の場合は、記載する項目が【目的】【研究デザイン】【対象患者や対象疾患】【比較研究では割り付け方法】【介入方法】【アウトカム(効果指標)】【統計解析】【主な結果】【考察】【結論】などの項目ごとに記述した抄録です。教育研修講演、シンポジウム、パネルディスカッション、ディベートなどは、1つの臨床研究の結果だけを発表するという形式は少ないので、構造化抄録にする必要は少ないのですが、一般演題では演題募集時から構造化抄録を送ってもらうべきだと思います。

 もちろん演題募集には、「抄録は、【背景】【対象と方法】【結果】【考察】などに分けて書く」ように指示されています。問題は、演題の【目的】と【結論】を書きなさいと指示されていないことです。その結果、発表演題の抄録を読んでも、いったいこの発表は何を目的にしていて、その目的に対してどのような結論が得られたのかがサッパリ分かりません。特に臨床研究では。かなり斬新な研究内容でなければ、背景は言わずもがなのことが多いのですから、【背景】はなくても【目的】を書いてほしいと思います。

 抄録にはそれなりの文量が必要になってきますが、学会や研究会の抄録は文字数があまり多くないため、しっかりとした構造化抄録を書こうと思っても難しいのかもしれません。抄録集が分厚くなると持ち運びにくいという問題があり、抄録に文字数制限があるのはやむをえないことかもしれません(電子抄録という手はありますが)。しかし、学会・研究会の参加者はほとんどが同業者なので、背景や考察を最小限にし、かつ、目的と結論は必ず書くというようにすればもっと分かりやすい抄録になると思うのは私だけでしょうか。

ケースシリーズで有用性を強調し過ぎる愚行

 RCTや大規模前向きコホート研究などのいわゆるエビデンス・レベルが高い臨床研究は労力や費用がかかるので、たやすく行えるものではありません。そのため、症例報告(ケースレポート)を除けば、多くの学会の一般演題の大半はケースシリーズ(あるいはコントロールのないコホート研究)でしょう。

 このようなケースシリーズをはじめとする観察研究が悪いと言っているのではなく、発表の仕方が悪いものが多いと感じます。RCTをはじめとする比較臨床試験は、発表そのものはさほど難しくなく、抄録を書くのも容易です。一定の群を2つの治療法に割り付けて、成績を比較するだけですから、得られる結果は単純明快なので(実験計画作成とその実施は、極めて大変ではありますが)、発表も容易です。「AとBが対戦してAが勝ちました!」でいいわけです。

 一方、ケースシリーズの発表はかなり難しい。「有用」というのは、枕詞に「~と比較して」が必ず付きます。コントロールがないケースシリーズでは、比べるものがないので有用かどうかは本来分からないのです。ケースシリーズは、(仮説)探索的研究なのです。ですから、ケースシリーズでは本来、治療法の有用性を大きな声で述べてはなりません(小さな声で述べましょう!)。

 多くの発表では、過去に報告された論文の結果(治療成績など)、あるいは自分の施設での古い治療法(ヒストリカル・コントロール)と比較して、それより今回の自分たちのシリーズの方が成績は良いから有用だという論理が展開されます。【考察】で過去の結果と比較して、成績が良かったから有用かもしれないというのは許されるのですが、過去の研究(あるいは症例)と自分たちが今回行った研究(あるいは治療法)は、背景が全く異なるので本来は直接的な比較はできません。参考として比較する程度なのです。

 ケースシリーズでどうしても有用性を述べたい場合は、上記の論証方法(他人が行った過去の研究結果か、自施設のヒストリカル・コントロールと比較)あるいは、theoretical advantageを述べるしかありません。だから、ケースシリーズでは、有用性は小さな声で述べましょう。

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