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宇宙でも微生物リスクへの対策を

ISSにも地上と同様に真菌が存在

2017年02月13日 10:58

 宇宙飛行士が長期滞在する国際宇宙ステーション(ISS)は適度に気圧や温度、湿度が保たれているため、ヒトだけでなくさまざまな微生物も生活できる。帝京大学医療共通教育研究センター/医真菌研究センター教授の槇村浩一氏は、自身が携わった研究から、ISSの真菌叢は地上でも見られる一般的な真菌であることが分かったと述べ、それら微生物の感染、アレルギーなどの健康障害への対策を講じる必要があると第29回日本外科感染症学会(2016年11月30日~12月1日)で論じた。

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ミールでは真菌がコンピュータの基板を破損

 槇村氏は宇宙において真菌が存在することの証左として、過去に旧ソ連が打ち上げた宇宙ステーション・ミールでは、一般的な環境真菌が発育しており(Microbiol Immunol 2001; 45: 357-363)、それら真菌が有機物を分解する過程で生じる有機酸がコンピュータや機器の基板を溶解していたというエピソードを紹介した。また、ISS内においても既に真菌が検出されているとし、模擬的微小重力環境において培養装置を用いたところ、カンジダおよびアスペルギルスの株が地上同様に発育し、抗真菌薬感受性にも差違は認められなかった(Microbiol Immunol 2012; 56: 441-446)点にも言及した。

今後の長期滞在では真菌叢の管理も重要に

 宇宙におけるヒトの生活空間にも真菌が存在する以上、宇宙飛行士の健康管理を図る上で、真菌が及ぼす身体リスクへの対策も検討する必要がある。そこで、槇村氏は2009年からJAXAの研究班として、ISSにおける環境微生物叢に関する研究(Microbe-Ⅰ〜Ⅳ)を実施した。

 Microbeでは、ISS内にある日本の実験棟「きぼう」の運用開始から経時的に棟内各所をサンプリングすることにより、真菌や細菌などの環境微生物がどのように移り変わるかを調査している。その結果、運用開始後1,000日経過した時点で、初めて地上に常在しているペニシリウム属、アスペルギルス属、およびロドトルラ属の生育が確認され、1,500日経過時点ではさらに種類が増加したという。また、ISSから回収した機器からもペニシリウム属の真菌が検出された(写真)。

写真. ISSから回収した機器から検出された真菌

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(Satoh K, et al. Microbiol Immunol 2016; 60: 295-302)

 これらのことから、宇宙飛行士においても、真菌による日和見感染やカビ毒、アレルギー症状などのリスクを念頭に置く必要があることが示された。なお、ヒト自体に取り込まれる、もしくは付着する真菌については、別の研究が行われたという。

 以上から、槇村氏は「ISSの日本実験棟である『きぼう』内にも、一般的環境に見られる真菌叢が確認されたが、直ちに宇宙飛行士へ健康障害をもたらす可能性は低い。しかし、今後想定される長期間の宇宙研究ミッションにおいては、これらの真菌叢と健康障害の管理は重要な課題になるだろう」と考察した。

 さらに、こうした研究を実施する過程で生まれた小型かつ軽量な微生物検出装置などは、将来地上での医学研究にも寄与しうると補足した。

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