Ph.リトーひとり薬剤部from小笠原

私見!「小笠原に花粉症は無い!」

  • 2017年02月24日公開
  • (2017年08月14日更新)

2月に入ると、小笠原では日中の日差しがやや強くなります。2月半ば頃から、私は昼間には車の冷房を入れ始めます。日本の本土ではそろそろ花粉症がはやり始めているのではないでしょうか。以前働いていたドラッグストアでも、2月上旬には売り場が花粉症関連商品でいっぱいになったことを思い出します。

実を言うと私自身も花粉症で、毎年3月半ばから6月ごろまで鼻づまりに悩まされていました。ところが、小笠原へ来てからは花粉症を発症しません(アレルギー症状は何度となく発症していますが)。今回のコラムの結論を先に言えば、私自身の経験からも、毎日の業務からも「小笠原には花粉症は無い」と感じているということです。

目次

  1. 鼻炎の患者は通年それなりにいる
  2. 小笠原に花粉症がない原因は亜熱帯性の気候?
  3. 謎の花粉が喘息を引き起こしているのか?
  4. 避粉地にするには遠すぎる

鼻炎の患者は通年それなりにいる

小笠原で鼻炎を患っている患者さんは少なくありません。アレルギー治療に関わる薬は内服や外用を問わず、毎日のように処方されています。アレロック®やアレジオン®の処方が多く、アレグラ®も昨年採用してから少しずつ服用する患者さんが増えている印象です。

年に2回は内地の病院から耳鼻科の専門医がやってきて島民に診療を行うのですが、多くの受診者がいます。よく処方されるアレルギー薬は、2,000錠程度の在庫を常に持っています。小笠原では鼻炎症状を訴える患者が春頃に集中して出るというわけではなく、年中を通してそれなりにいるという状況なのです。

小笠原に花粉症がない原因は
亜熱帯性の気候?

抗アレルギー薬が主に処方されるのは、鼻炎やアレルギーに対して。30日以上の長期処方も見られます。そのほかには風邪症状の鼻水を抑えるためであったり、蕁麻疹などの皮膚症状への処方も多いです。蕁麻疹も年中を通して見られます。

どのアレルギー症状も通年散見し、花粉症のような季節性のアレルギー症状を観察したことが私はありません。小笠原にはどうして花粉症が無いのか。花粉症の主な原因とされる、杉やヒノキのような植物が小笠原には無いことが、原因として考えられます。亜熱帯の小笠原諸島は、他の地域とは全く植生が異なります。花粉症の原因になりそうな植物は、あまり思い当たりません。

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母島最北端に近い、北港周辺。戦前はここに集落があり、ここだけで600人程度の人口がいたそう。周囲の植生は内地とは大きく異なり、花粉症の原因となりそうな植物は見当たらない。ちなみにガジュマルの木は人間が持ち込んだもの。そこに集落がかつてあった証拠となる。

謎の花粉が
喘息を引き起こしているのか?

一方、以前にも書きましたが、この島では喘息や気管支炎はとても多いです。私自身も、以前は何ともなかったのですが、昨年の5月ごろから気管支炎のような症状が続いています。私は息苦しくなった時に吸入薬を頓用していますが、継続して使用している患者さんはかなり多いように感じています。

この地域で喘息や気管支炎が多いのは、遺伝的な要因があるのかなと以前は考えていました。しかし、「小笠原に来て数年してから気管支炎のような症状を発症したという話を何度か聞いたので、思いがけない植物の花粉が、この島を飛んで、この島特有の花粉症の原因になっていたりするのかもしれません。

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海上から見た硫黄島。数年前の硫黄3島クルーズツアーに参加したときに撮影した。左の山が擂鉢山。日差しが強く、顔面を日焼けしすぎて、文字通り痛い目に遭った。硫黄島のある火山列島と、最近噴火で有名になった西ノ島、伊豆諸島はすべて同じ火山脈に乗って並んでいる。硫黄島は今でも隆起が続いているし、西ノ島もまだ噴煙を上げている模様。さすがに、火山灰と島の呼吸器系疾患との関連は無いだろうが......。

避粉地にするには遠すぎる

小笠原の花粉症事情は以上のような感じです。「沖縄に花粉症患者は少ない」とはよく聞く話ですが、小笠原にも花粉症はありません(と断言してしまいます)。花粉症に悩む患者さんにとってはうらやましいような話でしょうか。とはいえ小笠原に移住することは、花粉症を治すよりはるかに難しいような気がしますし、ここを内地からの避粉地として考えるにはあまりにも遠隔すぎます。

島民の中は春に上京したときに花粉に曝され、以後花粉症を発症するパターンも見られます。花粉から隔離されている立地であるとはいえ、必ずしもいいことばかりでは無いわけです。

 

【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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