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後期高齢者の肥満に減量は必要か?

サルコペニア・フレイル予防を考慮した肥満管理

2017年03月02日 11:00

 名古屋大学大学院地域在宅医療学・老年科学教授の葛谷雅文氏は、第20回日本病態栄養学会(1月13〜15日)で、サルコペニア・フレイル予防を考慮した後期高齢者の肥満管理について概説した。後期高齢者では特別な理由がない限りは積極的な減量は勧められないことや、減量を行う場合は食事療法だけでなく運動療法も実施し、筋肉量と骨密度の低下を予防する必要があることを強調した。

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高齢者の至適BMIは何を重視するかによって異なる

 近年、高齢者の肥満に着目した研究が盛んに行われ、さまざまな結果が報告されている。68〜82歳を対象としたカナダの横断研究では、サルコペニアなしで肥満ありの群は、サルコペニアありで肥満なしの群に比べ、身体能力スコアが有意に低いことが判明。身体能力の低下に対し、肥満はサルコペニアより大きな影響を及ぼすことが示された(Obesity 2009; 17: 2082-2088)。

 一方で、65歳以上を対象とした32試験のメタ解析からは、総死亡リスクはBMI 32程度までなら上昇しないことが見いだされている(Am J Clin Nutr 2014; 99: 875-890)。65〜79歳を11年追跡した日本のコホート研究でも、BMI 30までは死亡の相対リスクの上昇は見られなかった(Obesity 2010; 18: 362-369)。また、75歳以上の集団では糖尿病と関節疾患の発症リスクはBMIが高い群ほど上昇するが、急性心筋梗塞や脳卒中については変化がなく、骨粗鬆症はむしろBMI 30以上の群でリスクが低いとする試験結果(Obesity 2007; 15: 1827-1840)も報告されている。

 葛谷氏は、「高齢者の至適BMIは、何を重視するかで異なる可能性がある」と述べた。ただし、上述の海外研究の多くは、後期高齢者に該当しない、65〜70歳前後の年齢層を対象としている点や、日本ではあまり見られないような、高度肥満例を含んでいる点に留意する必要があると付言した。

特別な理由がなければ積極的な減量は勧められない

 では、現状では日本の後期高齢者の肥満管理について、どう考えるべきか。葛谷氏は以下のような見解を示した。

 BMI 25〜29.9(肥満1度)では、代謝異常や関節疾患の併存など特別な理由がない限りは、積極的な減量は勧められない。BMI 30以上(肥満2度以上)では、減量によるメリットがデメリットを上回ると考えられるケースには、2〜6kg(5〜10%)/年程度の減少にとどめることを目標に、摂取エネルギー量を緩徐に減らす。減量の際は、食事療法と運動療法を併用することを原則とする。なお、既に要介護状態の高齢者や、消耗性疾患が存在する例では減量するメリットは乏しい。

 「ADL障害や併存症の有無など、個々の患者の状態を把握した上で、QOLを最大限に考慮した体重管理を行うことが肝要」と同氏は締めくくった。

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