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【解説】アトピー性皮膚炎の「悪循環」遮断へ

アトピー性皮膚炎の新薬nemolizumab 第Ⅱ相試験の注目ポイント

2017年03月24日 08:00

〔編集部から〕日本、米国、欧州で登録された成人の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者264例を対象としたnemolizumabの第Ⅱ相試験であるXCIMA試験において、同薬の有効性が確認された(N Engl J Med 2017; 376: 826-835関連記事)。nemolizumabは瘙痒を誘発するサイトカインであるインターロイキン(IL)-31の受容体に対する抗体で、瘙痒を抑制することでitch-scratch-cycleと呼ばれる痒みとかきむしりの悪循環を断ち切ることができると期待されている。同試験を実施し、論文の著者でもある京都大学皮膚科学教室教授の椛島健治氏に、同薬の特徴やXCIMA試験で特に注目すべきポイントについて聞いた。

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瘙痒を強く抑制、皮膚炎や睡眠の改善も期待

――nemolizumabの特徴は。

 Nemolizumabは、IL-31というサイトカインの受容体に対する抗体だ。IL-31はアトピー性皮膚炎などの疾患において、瘙痒を引き起こすことが報告されている。nemolizumabは、IL-31が受容体に結合することを阻害して神経細胞へのシグナル伝達を妨げ、瘙痒の発生を抑制するというユニークな作用機序の抗体医薬である。瘙痒を強く抑制することにより、itch-scratch-cycleと呼ばれる痒みとかきむしりの悪循環を遮断し、皮膚炎も改善することが期待されている。24時間治まることのない痒みは睡眠障害をもたらし、患者の日常生活や健康に大きな影響を与えていることから、痒みのコントロールは大変重要な意味を持つ。

――XCIMA試験で注目すべきポイントは。

 XCIMA試験には、外用剤で十分にコントロールできない中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者264人が参加した。今回N Engl J Medに掲載されたのは12週間のプラセボ対照試験パート(Part A)の成績だ。nemolizumabまたはプラセボを4週に1回の頻度で皮下投与し、12週間後の瘙痒、皮膚炎、睡眠への影響を観察した。その結果、瘙痒は試験開始時と比べて約60%減少、皮膚炎スコアは約40%改善、睡眠の質と量にも改善が認められた。特に瘙痒改善効果の発現は速く、投与後1週から著明に減少している。

 なお、XCIMA試験のPart A終了後に継続して実施した長期安全性・有効性試験パートの成績も、米・オーランドで開催された米国皮膚科学会(AAD、3月3日~7日)で発表された。同パートではPart Aでプラセボ群に割り付けられていた患者にもnemolizumbを投与したため、プラセボ群がなく厳密な科学的評価は難しいが、nemolizumabを1年以上継続して投与した結果、瘙痒改善効果の維持と、皮膚炎の持続的な改善傾向が認められた。また、安全性上の重大な懸念はなかった。

正当な評価のために医療経済学的な検討も必要

――アトピー性皮膚炎に対する抗体医薬としてはデュピルマブの開発が先行している。同薬は炎症に関与するIL-4とIL-13のシグナル伝達を阻害するように設計されているとのことだが、同薬とnemolizumabは今後、アトピー性皮膚炎の治療においてどのように位置付けられていくと考えられるか。

 デュピルマブは既に、今年2月に日本で承認申請され、米国では承認直前であるのに対し、nemolizumabはまだ第Ⅱ相試験が終了した段階である。直接比較試験がない中で、両剤を比較することは妥当ではない。しかし、全般的な傾向として、nemolizumabはデュピルマブより瘙痒改善効果の発現が速い印象がある。今後、より多くのデータが集積されていく中で、両剤の位置付けも明確化されていくだろう。

――これらの新規治療薬が登場することでアトピー性皮膚炎の治療はどのように変わるか。

 アトピー性皮膚炎の全ての患者がこれらの新規治療薬の対象となるとは考えていない。アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインに沿った治療を行っても十分なコントロールが得られない患者が、おそらく新規治療薬の対象となるだろう。慢性かつ難治性のケースが多いアトピー性皮膚炎において、治療の選択肢が増えることは大変素晴らしいことである。

――抗体医薬は高価であることが指摘されているが。

 価格に見合う効果があるかどうかが重要だ。抗体医薬の高価格化を一概に問題にするのではなく、真に医療に貢献する新薬であれば、正当に評価されることも重要であろう。そのためには、新薬が医療経済学的観点からどのように役立っているかを、臨床試験の中で証明していくことが求められる。

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