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薬剤師提供の対人サービスの質と量を向上させる

第10回PCNE (Pharmaceutical Care Network Europe) Working Conference

2017年03月30日 08:30

2017年2月1日~4日にスロベニアのBledで第10回PCNE (Pharmaceutical Care Network Europe) Working Conferenceが開催されました。PCNEの概略を説明した後、学会期間中の様子をレポートします。

レポーター名:藤田健二(シドニー大学大学院博士課程後期)
参加学会:第10回PCNE (Pharmaceutical Care Network Europe) Working Conference
訪問日時:2017年2月1日~4日
開催場所:Bled (スロベニア)

PCNEとは?

PCNEとはPharmaceutical Care Network Europeの略で、ファーマシューティカルケア領域を専門とするヨーロッパの研究者達によって1994年に設立された団体です。薬剤師が提供する対人サービスの質と量を向上させることを主な目的として、アウトカム研究を推進することがPCNEの役割です。これまでの活動としては、各種用語の再定義(例:ファーマシューティカルケア、Drug Related Problems、メディケーションレビュー)や、それらを規定するフレームワークの構築があげられ、これらにより研究結果の多国間比較を可能にしています。この団体が2年に1回開催する学会が今回報告するPCNE Working Conferenceです。

ファーマシューティカルケアの質を評価するための指標の開発ワークショップに参加

本学会は、参加者によるポスター発表や口頭発表もありますが、"Working" Conferenceという名前の通り、ワークショップに多くの時間があてられているのが特徴です(写真1)。参加者は、学会参加登録の時点で、5つのテーマの中から1つ選択します。どのテーマも、各国の医療制度における薬剤師の役割が異なっていてもディスカッションできる内容です。各テーマにはゴールが設定されていて、関連する講義とディスカッションを繰り返しながら、最終日までに成果物を作り上げる必要があります。私が選んだテーマは、「ファーマシューティカルケアの質を評価するためのクオリティ・インディケーター(Quality Indicator/ QI)の開発」で、計21名で4日間にわたるワークショップを進めていきました。なお、学会参加者は運営サイドも含めて98名。PCNEはヨーロッパの団体であることもあり、オーストラリアから参加した私のグループ3人以外は全員ヨーロッパからの参加でした。

20170314fig1.jpg写真1 ポスター会場での1枚。筆者は左。中央の女性はタイから、右の女性はヨルダンから博士留学に来ているシドニー大学の同僚。

QIとは・・・

医療従事者によって提供されたケアの質を評価・改善するために主に先進国で広く利用されているツールです。国際的に定められた定義はなく、しばしばClinical Indicator, Performance measureなどの言葉と同義で用いられています。しかし、名称の差異はあるものの、医療の世界でこのような言葉が用いられる場合には、『エビデンスまたは識者内でのコンセンサスが得られている臨床行為が実際に患者に実施された頻度を数値化し、ケアの質を評価・改善するために使用される』という共通の意味合いを有しています。提供されたケアの質をQIを用いて数値化するだけでは質を改善することはできませんが、得られた数値を同時期に他施設で得られた結果と比較したり、自施設で測定した過去の数値と比較することで、異常値を発見して原因究明・課題解決につなげることができます。

退院移行時に病院薬剤師と薬局薬剤師が提供するサービスの質を評価するQIの開発を検討

今回のワークショップでは、患者が退院し、ケアの提供元が病院から地元のクリニックへと移行した時点に焦点を置き、病院薬剤師と薬局薬剤師がその過程で提供するサービスの質を評価するQIを開発することが目的でした。参加者は、QIのコンセプトについての講義を受けた後、実際に自国でQIを開発・運用している研究者から、開発時のポイントについて説明を受けます。途中、全体での議論とスモールグループに分かれてのワークを繰り返しながら3つのQIを作成。最後に、作成したQIの信頼性と妥当性を評価して、最終的な成果物としました(写真2)。学会終了後も議論を続けたい人は、ワーキンググループに入って、QIについてのディスカッションを継続することができます。私もグループのワーキンググループに加入しました。今回議論した内容がどのように進展していくのか楽しみです。

20170314fig3.JPG写真2 ワークショップの様子。QIのコンセプトについての講義を受ける。この後4グループに分かれてグループディスカッションを行った。

日本でノウハウを活かす―訪問薬剤管理指導の質を評価するためのQI作成ワークショップを開催

本学会はワークショップの要素が強く、共通の関心を持つ各国の研究者と4日間を共にするので、議論する内容の深さの面でも、参加者同士の親睦を深めるという面でも、とても有意義な時間を過ごすことができました(写真3)。薬剤師が提供するサービスの質をヨーロッパ全体で数値化しようとしていることは非常に興味深く、かかりつけ薬局・薬剤師制度を導入している日本においても、QIを用いた薬局サービスの質の評価の必要性を強く感じました。なお、この学会が終了した2週間後の2月19日に、ここで学んだノウハウを活かして、訪問薬剤管理指導の質を評価するためのQI作成ワークショップを京都で開催しました。この内容については次回報告します。

こちらの記事に関する問合せは「kfuj2522★uni.sydney.edu.au」まで。(★を@に変えてください)

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写真3 最終日の夕食会。参加者と交流し各国の薬剤師業務のなどの話で盛り上がった。

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