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法律からみる薬剤師とパートナー制度 赤羽根氏が解説

第1回日本在宅薬学会パートナーシンポジウム

2017年04月24日 11:30

 厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」に示されるように、薬剤師の業務は対物業務から対人業務により重きを置く方向にシフトすることが求められています。薬剤師は調剤業務の独占(薬剤師法第19条)と名称独占(薬剤師法第20条)が認められた専門職ですが、薬剤師や薬局に求められる機能が調剤業務にとどまらず、幅広いものになりつつあります。それら全てを薬剤師のみで対応するのは現実的とは言い難いことから、非薬剤師による薬剤師の業務支援施策となるパートナー制度の導入が模索されています。そのキックオフとして開催された、第1回日本在宅薬学会パートナーシンポジウムをレポートします。

【第1回日本在宅薬学会パートナーシンポジウム】

「在宅業務におけるパートナーの現状と今後の展望〜薬剤師が現場で専門性を発揮するために〜」

日時:2017年4月23日(日) 13:00~17:00

会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)

主催:日本在宅薬学会

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中外合同法律事務所 弁護士・薬剤師
赤羽根秀宜 氏

薬剤師法における「薬剤師の業務独占」と「薬剤師の義務」

 中外合同法律事務所弁護士・薬剤師の赤羽根秀宜氏は、薬剤師業務支援として今後形作っていくべきパートナー制度について、法律家の観点から理解しておくべき事柄などの論点整理と解説を行った。

 まず同氏は、薬剤師の独占業務と薬剤師の義務は法律上分けて議論すべきだとして、薬剤師法に基づく薬剤師の業務内容と規制対象、規制内容について次のように整理した。

表.薬剤師法にみる薬剤師の独占業務と薬剤師の義務

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 非薬剤師が行えば違法の業務は非薬剤師には行えないのが原則だが、薬剤師が行っているのと同じ場合(例えば機械による自動化)や薬剤師との協業であればどうだろうか。また、薬剤師が行わなければ違法の業務は薬剤師自身が義務を果たしたと言える必要があるという。

調剤とは「一定の処方に従い」「特定人の特定の疾病に対する」「薬剤の調製」

 調剤は薬剤師の独占業務だが、調剤の定義は何か。法解釈において最も重要なのは条文の文言、次が最高裁の判例である。そこで、調剤の定義を法的に紐解くと、大審院判決に次のように示されているという。

一定ノ処方ニ従ヒテ一種以上ノ薬品ヲ配合シ若クハ一種ノ薬品ヲ使用シテ特定ノ分量ニ従ヒ特定ノ用途ニ適合スル如ク特定人ノ特定ノ疾病ニ対スル薬剤ヲ調製スルコトヲ謂フ(大審院判決大正6年3月19日)

 非常に古い判例だが、判例が変更されていなければこれを前提にすることとなる。

 また、昭和45年の最高裁判決において調剤が登場している。

同法(麻薬取締法)二条一一号にいう「調剤」とは、一定の処方に従い、特定人の特定の疾病に対する薬剤を調製することをいう(最高裁判決昭和45年4月16日)

 現時点での調剤の解釈は上記であるとすると、薬剤師の独占業務は意外と狭いと同氏は述べた。

薬剤師が行ったと同視できる運用、同等の安全性や確認が可能な機械的な作業であること

 現在では自動分包機や自動監査システムなど、機械による自動化が進んでいるが、非薬剤師との協業を考える場合、機械との差はどこにあるのだろうか。同氏は、直接的な判例ではないことを前置きした上で、医師業務の診療補助を非医療者が担ったケースとして東京高等裁判所平成1年2月23日判決を紹介した。

...各種の医療用機器を使用できるのと同様、人を、その資格の有無にかかわらず、自己の助手として適法に使うことができる場合のあることは否定しがたい...医師の目が現実に及ぶ限度の場所で、患者に危害の及ぶことがなく、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度にとどめられるべきものと解される(東京高等裁判所平成1年2月23日判決 判例タイムズ691号152頁)

 こうしたことから、薬剤師が行ったと同視できる手足といえる運用であり、自ら行った場合と同等の安全性や確認が可能であり、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業であれば、非薬剤師が協業可能と解することができる。

 一方、厚労省通知では、軟膏剤、水剤、散剤は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても違反であると記されている。なぜ機械であればよいのかと言う疑問を考える上では、薬剤師が行った場合と同等の安全性が得られるかがポイントとなる。

 非薬剤師による薬剤師業務支援の枠組みを考えることは、薬剤師の本質的業務とは何か、その解が求められると言い換えることができる。同氏は、厚生労働科学特別研究事業「かかりつけ薬剤師の本質的業務と機能強化のための調査研究」(研究代表者:東京理科大学望月正隆氏)に参画。そこでは薬剤師の本質的業務を分析、薬剤師自身が行わなければならないもの、非薬剤師を利用可能なものは何かなどについても、考察が加えられているという(同研究成果は近々公表予定)。

提供する医療の質や医療安全の担保が重要なポイント

 「法的に非薬剤師に任せることができる業務と非薬剤師に任せてよい業務は違う。あくまで医療安全の観点で考える必要がある。過誤が生じた場合の責任主体はあくまでも薬剤師であるという覚悟がなければパートナー制度は活用できない。パートナー制度を導入することによって、提供する医療の質や医療安全が低下するのであれば、国民の理解は得られない。安全性を担保できる制度設計が必要だ」と同氏は強調した。

 そして同氏は、薬局業務の分担を考慮する上で、現状では調剤への関わりが薄い業務から進めていくのが良いだろうと述べた。例えば、非薬剤師がさまざまな資格(登録販売者や栄養士、NR・サプリメントアドバイザー、認知症サポーター、がん医療ネットワークナビゲーターなど)を取り、健康な生活に資する情報や、医療・介護制度などの情報提供を担うなどの部分で活躍を進めれば、パートナー制度に関する議論も進みやすい。同氏は「法律には主旨があり、薬剤師法第19条の主旨は、薬剤師が調剤することによって医療安全が担保できることだと解釈している。まずは国民の健康な生活のためのサポーターとして非薬剤師の活用を進めていくのが良いだろう」とまとめた。

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