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フレイル・サルコペニアとリハビリテーション栄養

一社)日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定薬剤師研修会+生涯学習委員会

2017年05月02日 11:30

 日本プライマリ・ケア連合学会主催のプライマリ・ケア認定薬剤師研修会+生涯学習委員会に参加しました。プライマリ・ケア認定薬剤師を目指す薬剤師のみならず、栄養リハの知識を得たい医療関係者に垂涎の研修会の内容を報告いたします。

【プライマリ・ケア認定薬剤師研修会+生涯学習委員会】

「フレイル・サルコペニアとリハビリテーション栄養」

「薬と摂食嚥下~リハ栄養を添えて~」

日時:2017年3月20日 月曜日・祝日9:20~16:30

会場:アーバンネット神田カンファレンス 2階2

主催:一社)日本プライマリ・ケア連合学会

レポーター:福田 進(群馬県)

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講師のお二人
若林秀隆(医師) 横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科 診療講師(右)
豊田義貞(薬剤師) 株式会社龍生堂本店 地域医療連携室(左)

簡易ツールで栄養状態を把握・評価

 昨今の高齢者ケアを考えるに当たり、リハ栄養の概念は切り離すことができません。特にサルコペニア・フレイルという言葉はたびたび耳にするようになったと思います。

 リハビリテーション栄養を考える時、まず栄養状態の把握が重要になります。その為のツールにMNAR-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form;簡易栄養状態評価表)があります。従来のMNAR と比較して評価項目は6項目しかなく我々薬剤師でも容易に栄養評価を行うことができます。6項目には①食事量減少はあるか。②体重減少はあるか。③歩行能力はどうか。④ストレス(精神的ストレス・急性疾患)はあるか。⑤精神的問題(認知症・うつ状態)はどうか。⑥BMI(下腿周囲長)はどうか。がありそれぞれのスコアの合計で栄養状態が良好か、低栄養か、低栄養の恐れがあるかの第一段階のアセスメントができるわけです。

 低栄養At Liskとアセスメントされた場合、次にその原因を考察します。即ち①飢餓②侵襲③悪液質か考察し、それにより必要な栄養やリハビリテーションケアをアセスメントしていくわけです。

 リハ栄養ケアのプロセスには、サルコペニアか否かのアセスメントも重要です。サルコペニアとは加齢・活動・栄養・疾患による筋肉量・筋力の低下を言います。例えば、四肢体幹の筋低下は寝たきりに繋がりますし、嚥下関連筋の低下は嚥下障害に、呼吸筋の低下は呼吸障害に繋がりそれぞれ重大な転帰を辿ります。その診断基準には、①握力②歩行速度③筋肉量④輪っかテスト⑤片足立ちテストがあり、それら基準から重症度の診断ができます。

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実際に片足立ちテストをしてみた。結構きつい。

 そして機能改善を目的としたリハを行えるか判断する為のフレイルの診断です。フレイルとは、筋力のみならず心身の活力にまでその判断基準を広げています。①身体的フレイル②認知的フレイル③社会的フレイルの3種類があります。このことから、サルコペニアはフレイルの身体的要因の一つと捉えられ、リハビリテーションや介護計画の参考になります。

 更にそれぞれの状態に於ける栄養必要量やリハビリテーション強度をアセスメントすることにより、適切な栄養リハのプログラムを立てることができるわけです。

患者をみる視点を養うグループワーク

 前半の講義内容を、症例に当てはめてグループで討議し、発表していきました。

 患者背景、体重減少、身体状況(下腿周囲長、浮腫、握力、歩行速度膝関節可動域・・・)基礎エネルギー消費量に対し、活動係数とストレス係数を勘案した1日エネルギー消費量と、食事記録からのエネルギー摂取量と蛋白質量やその他生活データが提示され、それらデータから①栄養障害を認めるか、原因は?②サルコペニアを認めるか、原因は?③フレイルは認めるか?④摂食・嚥下障害を認めるか?⑤現在の栄養管理は適切か、将来の予想は?⑥機能改善を目標としたリハを実施できる栄養状態か?⑦現時点で障害予防のためにどのような看護をすべきか?をグループで討議し発表して共有しました。

摂食・嚥下に影響する薬剤を考える

 ここでは午後は摂食・嚥下に影響する薬剤について、保険薬局薬剤師の視点から解説されました。処方された薬剤が①摂食・嚥下障害を引き起こす薬か。②元々有する摂食・嚥下障害を増悪する薬か。③摂食・嚥下障害の程度を緩和する薬か。など薬剤師の視点で、摂食・嚥下から栄養・リハビリテーションに関わっていくことができるわけです。

 嚥下モデルには①先行期②準備期③口腔期④咽頭期⑤食道期の5段階があります。それぞれの段階において影響する薬剤があります。

例えば①先行期においては、

  1. 食べる行動を妨げる。意識レベルの問題。:向精神薬・・・
  2. 食べる行動を妨げる。運動機能の問題。:抗痙攣薬・・・
  3. 食欲を妨げる。味覚障害。:Znとキレートを作る薬・・・
  4. 胃腸機能を低下。:抗コリン薬・・・
  5. 食べ難い。美味しくないという記憶が食欲を妨げる。:NSAIDs・・・

が考えられ、そのことを医師に提案していくことも、薬剤師の重要なミッションなのです。

 摂食・嚥下に影響を与える薬剤のアセスメントをすることにより、「薬のためのケアではなく、ケアのための薬である」ことをしっかり認識してPDCAサイクルをしっかり回すことが大切だということです。

仕事を辞めて自宅中心の生活をしていた方が体重減少していった症例にどう介入する?

 下記の症例についてグループワークを行いました。

【症例】退職した当初は62Kgあった体重が、自宅生活中心の殆ど運動しない生活を約4年間続けた事により38.4Kgにまで減少。その後肺気腫・肺炎により急性期病院に入院し、入院中に繰り返した誤嚥性肺炎のため、末梢輸液管理のみ実施され、その後回復期病院に転院してきた

 先ず入院前の処方から、水際で体重減少や誤嚥性肺炎による入院を回避する手立てはなかったか?処方を読み解いて、①望ましい結果。②望ましくない結果。③誤嚥性肺炎を発症した原因として考えられること。について討論をし、仮に保険薬局でどのような介入をしていれば入院を未然に防げたか?まとめました。

 続いて、自分が急性期病院の薬剤師だと仮定して、④誤嚥性肺炎を繰り返した理由について。⑤回復期病院での3カ月の栄養管理はどうだったか?⑥もし急性期病院から早期に在宅に戻っていたらどうなっていたと考えられるか?など、様々なケースを想定してのグループワークを実施しました。

0427_9.jpgグループワークの意見。様々な視点から意見が出て、学ぶことが多い。

 現実にこのような事例に出会った時どう対応したら良いか?グループ内や、参加者の多様な考え方を共有できたのは大きな収穫だと思います。

当たり前のことを、当たり前にできる空気を

 栄養・リハビリテーションは、NSTチームや管理栄養士に任せておけば事足りるという事ではないと改めて気づかされる研修でした。高齢者のみならず急性疾患の若年・中高年者においても絶食による嚥下機能低下や悪液質によるフレイルが十分に起こり得ます。

 薬剤師としても、薬の専門家としての視点からこの領域にも積極的に関わっていくことが大切だと思います。在宅においても、スクリーニングからアセスメント、プランニングからモニタリングというPDCAサイクルをしっかり回して、「当たり前のことを、当たり前にできる空気を」作っていけたらと思いました。

 講義・グループワークを中心とした研修は参加者の多様な思考を共有できます。また、多職種のネットワークも築けます。是非ご参加ください。

日本プライマリ・ケア連合会 認定薬剤師研修会ウェブサイト http://www.primary-care.or.jp/paramedic/nintei_ph.html

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