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「市中が病棟」―ずっとおうちで、ときどき入院

2017年05月12日 08:30

総合川崎臨港病院 薬剤部 坪内理恵子

 入院治療を終えた80歳代の女性。胃瘻・尿カテーテルを設置しています。Clostridium difficile(CD)が原因と思われる難治性の下痢が見られ、入退院を繰り返しています。今回の入院では下痢と発熱を伴い、便からはCDが、カテーテル尿からはESBL産生グラム陰性桿菌が検出されました。セフトリアキソンには耐性を示しており、治療にはフロモキセフと塩酸バンコマイシン散を使用。栄養剤は乳酸菌発酵成分配合流動食で対応し、治療開始から20日後に軽快、退院となりました。要介護4で、退院後は長男(60代)との2人暮らし。日中独居の在宅療養となります。

 あなたが在宅訪問を担当する薬剤師だとしたら、どのような策を講じますか?

 薬局薬剤師が退院後の患者を在宅でフォローするためには、病院薬剤師との連携だけでなく、他職種との情報共有・伝達が鍵となります。昨年、在宅医療で投与できる注射用抗菌薬の種類が増え、脂肪乳剤が追加されました。感染症や軽度の栄養不良などの初期治療については在宅医療でも行えるようになったため、薬局薬剤師は病院薬剤師と同様に、感染や栄養の側面からも薬剤適正使用に関わることが求められています。

 在宅の現場に立つ薬剤師は、想定される問題に対して必要な情報を考え、他職種にアプローチできたらよいですね。冒頭の患者さんであれば、入院中の胃瘻やカテーテルの消毒管理、栄養剤の情報は重要です。耐性菌情報も把握しているとよいですね。介護度4であれば、病棟で行っていた褥瘡の予防や処置の方法、口腔内の衛生管理も知りたいものです。胃瘻からの易感染性を考慮してH2ブロッカー・PPIなどの投与状況や家族の感染症発症時の対応も聞くことが大切です。在宅では、多くのスタッフが関わるので、感染予防策も気になります。――患者さんの全体像を捉えると、さまざまな情景が浮かびます。

 患者さんがずっとおうちですごせるよう、それぞれの立場の薬剤師が協働して他職種との情報連携を行いながら、入院治療と在宅医療をシームレスにつないでいきましょう!

 合言葉は「市中が病棟」です。

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