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絶景の見晴らせる島 

2017年06月09日 07:30

突然ですが、みなさんの地元の見どころってどこですか?私の地元、大阪の南河内地区は歴史のある地域で、楠木正成が築いた千早城跡や、下赤坂の棚田、富田林寺内町の古い町並み、日本最古のため池である狭山池、日本最大級のPL花火など、見どころが多数あります。休暇の折に、遠方から来た友人や仕事関係者をこういった場所へ案内すると喜ばれます。ところが、子供の頃から慣れ親しんでいると、これらは身近すぎて、正直、それほどありがたみを感じません。みなさんの家の近くにも、よその地域の人が行きたがるような素晴らしい見どころの1つくらいあるはずです。しかし、普段意識することは少ないのではないでしょうか。

実は、このへんの事情は小笠原でも同じ。内地からはなかなか行けない憧れの小笠原諸島、世界自然遺産に指定されるような環境、きれいな海、観光ガイドブックを彩る小笠原の絶景も、父島ではその気になれば、昼休みに車でちょっと行ける場所がほとんど。贅沢の極みですが、身近すぎてすっかり当たり前になってしまうと、意識もしなくなります。

今回も引き続き母島の話になりますが、なぜ前置きでこんなことを長々と書いたかと言えば、「見どころを紹介と言ってみたものの、そういえば母島の見どころはどこだっけ......」と、一瞬考えてしまったからです。それだけ当たり前になっているということでしょうか。

目次

  1. 集落を離れ、北へ南へ 島の先端には雄大な景色
  2. 集落周辺にも見どころ ただし、けがや熱中症には注意
  3. 母島の絶景を満喫するより、父島の風呂が恋しい
    ――すっかり小笠原島民の私

集落を離れ、北へ南へ 島の先端には雄大な景色

母島は南北に細長く、歩くことをいとわなければ、南北ともにほぼ先端まで行くことができます。北進線と呼ばれる道路(都道)が母島を南北に貫いていますが、沖港周辺を出れば、ほとんど人の姿はありません。そんな母島の見どころは、私としてはやはり、母島最南端の南崎ではないかと思います。都道は途中までしかないので、その先は徒歩になります。景色の雄大さ綺麗さは、素晴らしいの一言です。

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南崎。小富士の山頂から南崎を見下ろした図。「インフルエンザ流行で薬が足りない!」の記事に載せた南崎と小富士の写真は、中央やや右の砂浜から撮影。写真中央の半島部は、海鳥の繁殖地。猫から守るため、フェンスが作られている。3月でもこの陽気、母島は父島よりもやや暑い。小富士は標高こそ低いものの、登山道は1か所はしごで登る箇所があるし、山頂は申し訳程度のベンチしかなく、吹きさらし。訪れる際は持ち物を飛ばされたり、不慮のケガなどしないよう、十分に注意したい。ちなみにこの日は風が特に強く、帰りのははじま丸は接岸に手間取って少し遅れた。

『私見!「小笠原に花粉症は無い!」』の記事に写真を載せましたが、島の北の入り江には北港があります。歩けば片道おそらく3時間近くかかるのではないかと思います。日帰りも難しいでしょう。母島では、集落を出たら自販機などもありません。ハイキングを計画するのであれば、周到な準備が必要です。なお、今は無人ですが、戦前は北港周辺に村がありました。ここだけで現在の母島の人口に匹敵する450人以上が暮らしていたそうです。診療所などもあったそうですが、今では想像もつきません。

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先の写真と同じ日に撮影。南崎の先には、さらに島が連なる。手前の島が鰹鳥島(かつおとりしま)、遠くに見えるのが姉島で、いずれも無人島。きらきらした海、まさに絶景である。日帰りでここまで徒歩でたどり着くのは難しいが、レンタカー(台数が少なく競争率が高い)を確保するか、宿の人に連れて行ってもらう、ツアーに参加するなどして、母島に来た場合はぜひとも南崎や小富士周辺を訪れてほしい。都道最南端までは車で10分そこそこだが、そこから南崎までは、歩いて40分、ゆっくり歩けば小1時間程度かかる。しかし、(天気がよければ)それだけ苦労してたどり着く価値は絶対あると断言してもいい。

集落周辺にも見どころ
ただし、けがや熱中症には注意

絶景の見られる南崎や北港周辺は、車が無いとたどり着くのは容易ではありません。しかし、集落の近くにも、それなりに見どころはあります。9時半着、14時発のははじま丸に乗船する日帰り旅行でも、行ける場所はあります。

集落を見下ろせる小剣先山(しょうけんさきやま)、きれいな海の御幸之浜(みゆきのはま)、集落内にはロース記念館という、郷土資料館のようなものもあります。小笠原諸島へ旅行した折には、ぜひとも母島を訪れていただきたいと思います。

ただし、けがや熱中症などには気を付けてください。先にも書きましたが、集落を出たら自販機すらありませんし、徒歩でしか行けない場所でけがをして、動けなくなったら大変です(これは父島でも同様です)。

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集落近くの遊歩道には、旧日本軍の大砲が残っている。ここまできれいに残っているのも珍しい。小笠原諸島は軍事施設の跡などの"戦跡"が多く、ガイドさんがついて案内してくれる、"戦跡ツアー"なるものもある。歴史の浅い小笠原諸島とはいえ、過去には悲惨な戦争の歴史もあるということである。このあたりまでは沖港周辺の集落から徒歩15分くらい。島の西海岸に面していて、夕日がとてもきれい(らしい)。母島に出張した夕日の時刻には、私はまだ仕事をしているか、宿の部屋で仕事終わりの一杯を頂いているかのどちらかなので、実はここからの夕日はまだ見に行っていない。

母島の絶景を満喫するより
父島の風呂が恋しい
――すっかり小笠原島民の私

思い返せば、私が母島へ初めて行ったのは、まだ小笠原で働くことになる数か月前のこと。日帰りができる日を選んで、3時間半ほどの滞在で行ってみたのですが、天気の悪い日で、昼頃からは降雨。結局、ほとんどどこへも行けないまま撤収してきました。このときは、「もう二度と来れないだろうな、けど母島に上陸できただけでもよかった」と思って、納得して帰ったわけですが、その数か月後に再び、それも、「就職して」母島に来ることになろうとは思いもしませんでした。

それが、いつしか出張時には、「ははじま丸出港までの時間を母島の綺麗な景色、空気を満喫して過ごそう」、「遊ぼう」などと思わず、「早く父島の自宅へ戻って風呂に入って寝たい」なんて思ってしまうようになりました。私もすっかり小笠原諸島の島民になってしまったことを実感します。

母島がどういうところかわかっていただいたところで、次回はいよいよ、母島での薬剤師の仕事について書いていきたいと思います。

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戦時中の強制疎開前は、北港周辺にも集落があり、今の母島の人口くらいの人間が暮らしていたそうである。北港集落のあったあたりにはこのような小学校跡がある。長い年月を経て運動場はすっかり森になり、今は石垣くらいしか残っていない。言われなければ、ここが学校の跡だなどとはわからないだろう。北港周辺は海がきれいで、ダイビングには好適である。ただし、やはり集落からは遠い。不測の事態に備えるためか、北港にはぽつんと公衆電話がある......。

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【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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