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新しい取り組みに尻込みするのはなぜ?

2017年06月29日 08:30

こんにちは、みやQです。前回の肺炎が治りかけた時期に副鼻腔炎になってしまいました。臭いのある鼻汁が喉におりてきて、ずっと咳をしていたのですが、まったく痩せないどころかむしろ太りました。風邪を治すには栄養が一番と積極的に食べたからでしょうか。

前回の記事(オカンアート薬局へようこそ)で、スタッフの小さな取り組みを紹介しました。職場の業務改善のほとんどが、大それたイノベーションよりも、小さな取り組みの積み重ねであるとお伝えしました。しかし、時には、経営者から大々的に新業務の提案がなされることもありますね。今回は、このように提案される新しい取り組みを、現場スタッフがどのように受け止めているのかを考えます。

新しい業務に不安顔?

在宅療養への参画、地域活動、かかりつけ薬剤師――新しい業務に取り組もうと提案する上司。それに反発するわけでもなく、静かに耳を傾ける薬剤師がいます。彼女/彼は、何を思っているのでしょうか。

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ママ薬剤師はこう思っているかも?

「勤務時間が増えたら、今でもやり残しの多い家事がますますおろそかになってしまう」

「自分が家にいない間に、家事をしてくれる人がいない。今よりも遅く帰宅してから、家事をするの?帰宅が遅くなる分、家族が家事をさらに増やしているかもしれない......」

「今でも精一杯なのに、これよりも忙しくなるの?
家はどうしよう。脱ぎっぱなしの衣服。散らかしたもので日に日に見えなくなっていくリビングの床。子供はなくしものばかり。そして、夜遅くなってから、明日学校で必要なものがあると言い出すし......こんなにバタバタなのに、できるのかしら」

図2web.png 一方、パパ薬剤師は?

「帰りが遅くなって、起きている我が子に会えない日々が増えるのではないか?」

「帰宅時間が読めず、連絡ができないまま帰宅することになったら......。深夜まで妻を待たせてしまうかもしれない」


「休みの日は、疲れて起き上がれず、家族をどこにも連れていけないかもしれない」


「そんなことを続けて、ある日突然、『愛想が尽きました』と出ていかれはしないだろうか?」

ママ、パパの心配事を想像しただけで、目の前が真っ暗になりますね。

家庭を抱えて働く人が背負うものは大きいです。家庭にしっかりと目配せをしたい、わが子を真剣に育てたいと思えば思うほど、不安やプレッシャーが増していきます。

こんな上司が持ち出す提案だから不安!

新しい取り組みに尻込みをする理由は、家庭と仕事のバランスだけではありません。

提案している当の上司が、職場の備品を元の場所に戻さなかったり、部下の様子を観察せずに突然、用事を言いつけたりする人であったらどうでしょう。さらに、自分が出した備品を元の場所に戻してくれる人がいることに全く気づかず、「あるべき場所にない」と文句をいうような人であったなら――。

「この上司は、人の目につきやすいところしか見えていないのではないか?」、「日々の地道な業務を軽視しているのではないか?」、「きっと家庭でもあんな態度なのよね。気づかない人に何を言っても無駄」――部下の薬剤師はいつも、心の中でため息をつきながら、仕方なく黙々と作業をしているかもしれません。

「いつものように、目新しい施策だからと、思いつきで提案しているのではないか」、もしかしたら、そう思いながら上司の話を聞く薬剤師もいるかも......?

それは、"新しいこと"への不安ではない

不安の表情を浮かべる薬剤師たち。新しいことが怖いのでしょうか?それもあるかもしれません、でもほとんどの薬剤師は、新しい取り組みを否定しているわけではありません。彼らは、分かっています。

企業は利益がないと存続できないこと、
薬局がその場所に継続して存在しているのが一番大切だということ、
新しい取り組みを始めなければ利益を得られないこと
もっと頑張りたいという人がいること。

そして、
従業員が何を言っても経営者の意見が強く、押し通されること、
意見を通すには、十分な成功の経験が必要で、それには相当の力が必要なこと、
その力を発揮するために、家庭に相当の犠牲を払う必要があることも――

イノベーションは必要だと分かっている。それでも、踏み出せないのはなぜでしょうか。不吉な予感を感じているのです。

家庭では、いくらやっても終わらない家事・育児に追われ、職場でも同じように、終わりの見えない作業に苦闘する。終わりがないから、成し遂げたという満足感を得られない。次々こなしても当たり前と言われ、評価もされない。――家庭でも職場でもこんな扱いになるのは、あまりにもつらすぎる。こなさなきゃいけない作業が増えても、自分が得られるものはないのではないかと。

上司の提案が、子供のイタズラと重なって見える

箱を積み重ねて組んだ、今にも崩れそうな足場。そこに無理矢理登って、高いところにあるものを取ろうとする子供。不安定な足場は崩れ、手を伸ばしていた何かと共に崩れ落ちる。取りたかったのは、細かい小物の入った容器。中身はばらばらと床に飛び散った――このような風景に見覚えのある親御さんは多いでしょう。後片付けでへとへとになった経験は、1度や2度ではないと思います。

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我が子の"無計画で無謀で無責任な取り組み(要はイタズラ)"の日々の後処理で心身ともに疲れている親は、「好奇心はいいけど、ケガはしないでほしい、ある程度見通しを立ててから行動してほしい。やったことはきちんと後始末してほしい。」と願っています。

会社から新しい取り組みの提案を受けた薬剤師は、子供のイタズラを見た時と同じ心境でいるのかもしれません。新しいことそのものに恐怖を感じているのではなく、無計画さと無謀さと無責任さを心配しています。経営陣や管理職の言動から「計画性」「具体的な見通し」が見えてこないから、新規事業や計画に不安を抱いて、二の足を踏むこともあるのです。

上の立場にいる人に望むこと

家庭を持つ従業員を気にかけてくれると、現場は助かります。そうすれば、業界の先を見据えた指針に対して多くの人の賛同や協力を得られ、結果的には、事業も成功しやすいように思います。

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【こんな気配りをしてくれるとうれしい】

  • 制限のある働き方をしている人も参加しやすいよう、業務を工夫する
    →たとえば、当店舗では、時短のスタッフも分担しやすいように業務を細分化し、担当時間外の業務が割り振られることがないようにしています。また、予製などのひとつひとつの作業量を少なくし、勤務時間が短い人も参加しやすくしています。
  • 仕事をしやすい環境を作るための基本的な習慣を徹底する
    →備品の配置場所を定めています。調剤棚に置くハサミは、どの薬を調剤するかによって薬剤師の動線が変わるため、だいたいの場所を定めています。
  • 家庭を抱えて働いている部下、同僚を気にかけた言動をとる
  • 新しい事業を始めたら現場に任せっぱなしにしない、事業を打ち切るときは上司が区切りをつけ、スタッフに今までの労をねぎらう
    →こんなことがありました。以前、当店舗で新商品の制作・発売を企画しました。発案者の上司は、いつからか関与しなくなり、新商品のことは忘れてしまったよう...全く売れないので現場の判断で販売中止にしました。当の上司は、販売中止になったことすら気がついていない様子でした。

経営者、管理職のみなさん! 日々、新たな業務と格闘する従業員の心に、余裕がなくなっていませんか?従業員にねぎらいの言葉をかけてみましょう。

息を吐くようにそのような配慮ができるようになれば、会社の設定する到達目標が少し高くても、従業員がついていく可能性が少し上昇します。お互いへの配慮が回り回って、ハッピーなイノベーションにつながるはずです!

 

【コラムコンセプト】

薬局業界では「在宅」だの「24時間対応」だの言われてるけど、実際に現場で働く人の半分以上は、家庭で大きな役割を果たしている主婦薬剤師。高齢化社会でも子供たちの健やかな成長を見守るのは必要不可欠のはず。なのに、未来をつくる子供たちとその親を支えようという機運が起こらないのはなぜ?薬剤師はワーク・ライフ・バランスを考えてはだめなの?薬剤師だって医療人である前に生活人だ!と疑問に思う日々。主婦ばかりの薬局で、子供とその親の健康を支援する現場で考えた、現場目線のコラム。

【プロフィール】

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大学卒業後、色々な薬局での勤務を経験。現在は小児科の処方箋を多く受ける薬局で管理薬剤師として働く。薬剤師としては中堅どころ。実生活では子どもはいない。子どもの多い職場で働いていた経験が長いのに、未だに子どもが苦手なのが課題。薬局という狭い場所にいながらも、様々な情報や知見を得られるのがインターネットの利点と認識し、活用。それでも、生活の場で得られることはインターネットでは得られないので外にも出る。薬剤師だって生活者であることを意識して、心身ともに穏やかな日々を願って暮らしている。

blog:「くすりや」の「現場」
http://miyaq.hatenablog.com/

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