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薬剤師として身につけておきたい6つのこと

2017年07月03日 10:55

みなさん、こんにちは。青山です。

先日、カナダの州ごとに実施される法律の試験(Jurisprudence Exam)を受けてきました。カナダで薬剤師になるためには、薬剤師国家試験とともに、働きたい州で実施される法律の試験に合格する必要があります。

University of British Columbia_web.jpg

法律の試験の会場であったUniversity of British Columbia。バンクーバーの観光スポットの1つであり、多くの観光客が訪れる。森と海に囲まれた広大な敷地に立つアーティステックな建物が素晴らしい。

さて、今回は、カナダでは国家試験のレベル、つまり新人薬剤師の段階で求められていることのうち、日本の現場では十分に浸透していないかもしれないと、私が個人的に考えた6点を上げ、解説します。少なくとも新人の頃の私は、その6 点のどれも満足にできていませんでしたし、大学で十分に学ぶ機会というものもありませんでした。

  1. セルフケアをサポートする役割を担うこと
  2. NESAに基づいて処方鑑査をすること
  3. 充実した服薬説明をすること
  4. 薬物療法のモニタリングをすること
  5. プロフェッショナルとして、倫理的にも正しい判断をすること
  6. EBMに基づいた思考・行動すること

このような箇条書きを読んでもイメージしにくいですよね。カナダの薬局を想定したシナリオを理解の助けにしてもらえたらと思います。

1. セルフケアをサポートする役割を担うこと

主人公は、調剤併設型のドラッグストアで働く薬剤師。40~50 代の男性から「膀胱炎の薬はありますか?」と問いかけられました。薬剤師は、「どうされましたか?」と聞き、この男性が最近、頻尿で困っていることを知ります。もう少し話を聞いていくと、その方は、1年前の人間ドックで血糖値が高いと言われたことを知ります。薬剤師は、膀胱炎だと判断せず、高血糖に起因する頻尿の可能性を疑い、OTC を勧めずに、病院に受診することをすすめました。

「セルフケアのサポートの役割を担う」とは、患者の「軽症」の状況を薬剤師が把握した上で、以下の3 つのいずれかの方法を取ることです。

  1. 薬は何も必要無いと伝え、安心感を与える
  2. OTC や非薬物療法を推奨する
  3. 病院受診を推奨する

カナダには、「Compendium of Therapeutics for Minor Ailments」という本があります。患者が訴える主な症状ごとに薬剤師が行うべき対応がまとめられており、どの薬剤師もこの本に従って、同じ対応ができます。この内容を知らなければ、重症な疾患に対してOTC を薦めたり、逆にOTC で済むのにわざわざ病院に受診をさせてしまうことになります。

日本では、少なくとも私が学生であった4年制課程の頃では、セルフケアについての教育が十分になされていなかったため、個々の薬剤師の裁量で判断・対応をしてきたように見受けられます。何となくOTC を薦めたり、どう対応したらよいのかわからないという理由から受診勧奨をしたという経験はありませんか。

Compendium of Therapeutics for Minor Ailments_web.png

Compendium of Therapeutics for Minor Ailments
セルフケアをサポートする方法について詳しく記載してある本。薬学部の教科書として使われるだけでなく、カナダの調剤薬局では保管が義務づけられている。 薬局薬剤師が臨床で遭遇しやすい症状や疾患ごとに概要、セルフケアの方法 (非薬物療法、OTCなど)、Red Flag(すぐ病院にかかるべき兆候)などがエビデンスに基づいて記載してある。Minor Ailmentsというのは、「軽度の症状」という意味。

2. NESA に基づいて処方鑑査をすること

その後、患者が処方せんを持って薬局にやってきました。医師からメトホルミンが処方されたようです。薬剤師は、そのメトホルミンの必要性、有効性、安全性、アドヒアランスの4 項目について評価し、医師の処方内容が適切であると判断しました。

NESA(ニーサ)とは、Necessary, Effectiveness, Safety and Adherence の略で、必要性、有効性、安全性、アドヒアランスのことです。薬剤師は、この4つの観点から処方箋が患者にとって妥当な内容かどうかを評価します。これによって、患者は、必要な(Necessary)薬を、より効果的(Effective)でかつ安全な(Safety)方法で、継続して飲むことができます(Adherence)。

処方鑑査によって、NESAのいずれかにおいて不適切な箇所を見つけたら、カナダでも日本と同様に疑義照会を行います。ただし、その方法は日本とは異なります。詳しくはいずれご紹介できればと思います。

3. 充実した服薬指導をすること

メトホルミンの処方鑑査が終わったので、薬剤師は患者に服薬指導をします。効果や副作用はもちろん、作用時間(Onset of Action)非薬物療法(Non-Pharmacologic Therapy)についても説明します。

日本においては、2010 年からOSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)の試験が薬学部の5 年次に導入されました。しかし、現場における薬剤師の服薬指導の質や方法については、まだまだバラツキがあるようです。例えば、処方薬の効果や副作用については、ほとんどの薬剤師が説明をしているようですが、作用時間(Onsetof Action)や非薬物療法(Non-pharmacologic Therapy)についてまで説明できているケースは少ない印象です。

作用時間とは、「薬がいつ効くか」を說明することです。患者が「薬は飲めばすぐ効くもの」と思い込んでいる場合、効果発現までに数週間~数カ月を要する薬剤であっても、「飲んでも効かない」と数日で服薬を自己中止してしまうことがありますが、作用時間を説明することによりアドヒアランスの向上が期待できます。また、作用時間を知ることが、患者自身によるモニタリングにも繋がり、患者が薬物療法により積極的に参加することができると考えています。

非薬物療法とは、食事や運動、喫煙、アルコールなどのライフスタイルなどについての説明を行うことです。

4. 薬物療法のモニタリングをすること

初回の服薬指導から1週間が経過しました。薬剤師は、メトホルミンの安全性について確認するため、患者に電話連絡をしました。下痢や吐き気などの副作用は出ていませんでした。そして1 カ月後、患者が新しい処方箋を持って2 回目の来局をしました。1 回目とは異なり、必要最低限の内容を短時間でチェックします。

モニタリングとは、効果や副作用について継続的に評価することです。そのためには、薬がいつ、どんな効果や副作用が出るのかを知っておく必要があります。シナリオでは、初回にメトホルミンが1カ月分処方されました。薬剤師は、1カ月後にメトホルミンの評価をするのでは遅いと考え、メトホルミンを服用開始して1週間後に患者に電話して、消化器症状の副作用がないかを評価しました。

そして、1カ月後の2回目の来局では、薬の飲み方を再度説明することはせず、モニタリングにフォーカスをあてます。こうして服薬説明の無駄を省き、より「効率的に」業務を進めることが可能になります。

5. プロフェッショナルとして、倫理的にも正しい判断をすること

メトホルミンをしっかり飲んでいるのに効果がでないから、医師がアマリールを追加しました。アマリールには低血糖のリスクがありますが、「そのことを患者に説明すると不安に思って薬を飲まなくなってしまうので説明するな」と、医師から言われました。これを受けて、薬剤師は、『患者には自分の治療に関して、知る権利がある』と医師に主張。アマリールの副作用について、患者にしっかり説明しました。

患者にとってベストな選択肢になるように、薬剤師は倫理的にも正しい判断ができなくてはいけません。今回のようなケースでは、医師に「するな」と言われたから副作用を説明しないという薬剤師がいるかもしれません。しかし、どちらが患者のことを一番に考えた対応でしょうか。医師に意見せずにただ従うことが、プロフェッショナルな薬剤師として倫理的に正しい選択かどうかは、言うまでもありませんね。

6. EBMに基づいた思考・行動をすること

薬を追加したかいもあり、患者のHbA1C は7.0 まで下がりました。医師からは、もっと下げた方がいいので、また薬を増やすと言われたそうです。そこで薬剤師は、HbA1C のコントロールの程度によって起こるメリット、デメリットについて、論文データに基づき、医師と協議しました。

インターネットの情報を鵜呑みにしたり、製薬会社のMR の話をそのまま患者に伝えるということはありませんか?薬剤師は、臨床にEBM を自然に取り入れられるようになるべきだと思います。EBM については多くの関連書籍があるので、今回の連載では割愛します。

いかがだったでしょうか。

次回からは、上記の1~6の各項目について詳しく説明します。これらを実践するためにはどんな考え方が必要なのか、何をどうやって勉強すればいいのか、について考えていきたいと思います。

カナダのチェーン.jpg
カナダで最大規模の薬局チェーンShoppers Drugmart

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

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Twitter:@shinshinskysky

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