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薬を飲まない患者さんにどう対応する?

2017年07月14日 12:32

薬を飲まない患者さんにどう対応する?

薬剤師の在宅活動に関する素朴な疑問を取り上げてきた本コーナー。なんとなく在宅活動が分かってきたけれど、いざ実践となると、「唐突なハプニングに対応できる自信がない」という初心者の方もいるのでは。実際の活動で起こりえる落とし穴(ピットフォール)を事例に挙げ、その対応方法、解決策を探っていきます。

薬を飲まない患者さん

患者さんが薬を飲んでくれません。ご家族も「どんなに言っても飲んでくれない」と困り顔。もちろん、薬を飲むとどのような効果があるかは、患者さんにもご家族にも説明してあります。どのようなアプローチをすべきでしょうか。

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治療のゴールを具体的に示す

例えば血圧の薬を飲まない場合、「お薬を飲まないと血圧が高くなり、心臓への負担も大きくなります。ちゃんと飲みましょうね」と、服薬忘れによる弊害を話すこともありますが、場合によっては、「この薬を服用すると血圧が下がり、大好きなお孫ちゃんと一緒に散歩に出かけたりできますよ」と治療のゴールを具体的に示してあげるのも重要かと思います。

〈エピソード〉薬が増えた抵抗感で服薬拒否した患者さん

 末梢循環不全を起こし、足の指が紫色に腫れ上がった患者さんがいました。それまでは1日2回(朝・就寝前)薬を飲んでいたのですが、末梢循環改善の目的でオパルモン®とユベラN®ソフトカプセルが追加となり、昼と夕食後の服薬が増えて、1日4回になってしまいました。薬が増えたことに対する抵抗感があったのか、一時、服薬状況が悪くなりました。

 薬の効果や服薬の意義を説明し、「冬場は血液の流れが悪く、症状が悪くなっていますが、薬を飲めば痛みも落ち着き、春先には好きな散歩もできますよ。そうしたら、薬は減るかもしれません」と話したら納得して服薬するようになりました。

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薬が嫌い、飲み忘れる方には服薬の必要性を説明

若いころから薬を飲んでいる方は飲み慣れているせいか服薬拒否は少ないのですが、年配になってから薬を飲み始めた方などは、特に強く拒む方が多い印象があります。このように、単純に薬が嫌いな方もいますが、服薬が習慣になっていないため、薬を飲み忘れているだけの方もいます。
 ただ薬が嫌い、飲み忘れるという方には服薬の必要性を説明することが有用ですが、それでも理解が得られないのであれば、薬そのものに飲めない原因がないか、一度考えてみた方がよいかもしれません。

〈エピソード〉酸化マグネシウムの細粒だけ飲まない患者さん

 酸化マグネシウムの細粒だけ飲んでくれない患者さんがいました。その方は認知症で、言葉を発せないため、飲まない理由を聞くことができません。他の粉薬は飲んでくれるのに、酸化マグネシウムだけ嫌がって飲まないとのこと。下痢になるのが怖いのかと考えていました。

 ある日、介護者から「入れ歯を洗ったら、白い粉がたくさん出てきたから見てほしい」と連絡が入りました。見に行くと、入れ歯にびっしりとつまっていたのは酸化マグネシウムです。それを見て、患者さんが酸化マグネシウムの服薬を拒否していた理由が分かりました。入れ歯の間に物が入り込むと痛みを生じます。おそらく、酸化マグネシウムを飲むたびに痛みを感じていたのでしょう。

 そこで、発売されている酸化マグネシウム細粒を全て取り寄せ、水中での崩壊しやすさを試しました。最も崩壊しやすい製品を採用し、次の処方から変更したところ、入れ歯に詰まることがなくなり、服薬拒否や食事拒否をしなくなりました。

 認知症の方は発語が少なく、違和感や痛みを訴えることができない人もいます。訴えられない患者さんに対しては、服用している医薬品で不都合が生じていないか、より注意深く観察しなければいけないと強く感じた経験でした。また、酸化マグネシウムの崩壊性を試したとき、想像以上に差があり驚きました。採用の際に考慮すべき点だと感じました。

 この他にも、剤形や服用回数を変更しただけで薬を飲んでくれるようになったケースは少なくありません。それぞれの服薬拒否の背景を考えて、個々に対応することが薬剤師には求められていると思います。

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〈エピソード〉カロナール®錠だけ飲まない認知症の患者さん

 下肢の痛みに対して処方されているカロナール®錠だけ、いつも服用してくれない認知症の患者さんがいました。カロナール®錠よりも大きなカプセルも服用していたので薬の問題ではないと思っていましたが、じっくりとお話を伺うと、大きくて飲みにくいことが分かりました。患者さんと話し合って細粒にしたところ、服用するようになりました。薬の飲みにくさは、実際の大きさだけではなく、厚みや見た目にも左右されるようです。「他の薬が服用できているのだから大丈夫なはず」と決め付けずに、じっくりと原因を探し出すことが必要だと思いました。

 薬を飲まない原因はいろいろと考えられます。錠剤などが大きくて飲めないのか、嚥下機能が低下しているのではないか、粉砕により苦味が生じて服用したくないのか。患者さんに聞いたり観察しながら評価してみてください。

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剤形変更や飲みこむ方法を変える

飲まなくても体調が変わらないのであれば、主治医に中止を提案します。一方、飲まなければならない薬の場合には、製剤の変更を検討します。
 例えば錠剤を飲まない患者さんの場合、まずは口腔内崩壊錠への変更を提案します。口に入れて少し時間をおいてから、白湯を飲んだり、ご飯を食べてもらうとうまく飲めることがあります。より小さい錠剤があれば服薬ゼリーを使うことでクリアできることもあります。アリセプト®やボナロン®のように、薬自体がゼリーになっているものもあります。
 貼付薬の粘着性が高くて、「はがすときに痛い」と嫌がられたことがありました。このような場合、テープからパップ剤にしたりメーカー違いの薬に変更したりして、使い勝手を確かめながら使用しています。

錠剤を嫌がる患者さんには口腔内崩壊フィルム剤が有用

服薬拒否をする患者さんに対しては、いろいろと工夫をします。しかし、高度の認知機能障害を持つ患者さんが、いったん口に含んだ食べ物と薬を、全てべーっと出してしまって飲み込むことを拒否するようになったときは、さすがにお手上げでした。
 薬によっては「口腔内崩壊フィルム剤」があります。アムロジピン錠を吐き出してしまう方に使ったところ、舌の上でさっと溶けてしまうので重宝しました。認知症治療薬、アレルギー薬、睡眠導入薬などでも発売されているので、錠剤を嫌がる方には有用な剤形だと思います。
 ただし、口を開けてくれなければ、剤形を変えても服薬はできません。どうしても薬を口に入れてくれない場合、必要に応じて経鼻胃管チューブで確実に投与することもあります。

押さえておきたい 口腔内崩壊錠の服用方法に注意

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口腔内崩壊錠だからといって、水なしで飲めることを強調して伝えてはいません。いくら介護者が水分摂取を勧めても、本人が喉の乾きを感じていないとなかなか飲んでくれないことがあります。しかし、服薬のためとなれば水を飲んでくれる人もいるため、服薬は貴重な水分摂取の1つと考えています。また、何種類かの薬を一包化している場合、口腔内崩壊錠だけとは限らないので、いずれにしても水か白湯で飲んでいただくようにお伝えしています。

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口腔内崩壊錠は、原則的には唾液や少量の水で崩壊し飲み込めるように製剤されている薬ですが、似たような薬の速崩錠は水で服用しなければいけません。寝たままの状態の人や嚥下能力が落ちている人には、口腔内崩壊錠でも水で服用するように話しています。

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口腔内崩壊錠は口の中で溶けて唾液と一緒に飲み込む錠剤ですから、舌下錠のように口腔内から吸収されるわけではありません。口腔が乾燥している高齢者や癌患者などには、少量の水を服用するようにお勧めしています。

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