新規登録

死に立ち会える薬剤師に

2017年07月20日 08:30

 みなさん、こんにちは。森 博美と申します。病院薬剤部(大垣市民病院)に38年間勤め定年後、現在はたんぽぽ薬局株式会社に2年間勤務しています。この長い40年間の薬剤師人生での経験から現役の皆さんにお伝えしたいことがあります。

 私の思いを伝えるべく、PharmaTribune読者モニターの皆さんと意見交換しました。一人でも多くの読者の方に響けば望外の喜びです。

私の思い 死に立ち会える薬剤師に

 これからは患者や家族など人との関わりが薬剤師業務の主体になるのではないでしょうか。病院薬剤師は病棟業務を始めて長い期間が経ち、入院患者のベッドサイドでの活動は着実に定着しました。やりがいは、患者の病状が良くなり、退院される際にお礼を言われることです。「お世話になりました」、「ありがとうございました」の言葉に苦労も報われます。

 しかし、病院というところは死亡される患者がいることも確かです。薬剤師が病棟に関われば関わるほど、患者の死に遭遇することも増えます。死が間近になってくると投与薬剤も減り、自然と服薬指導に訪れる機会が少なくなります。入院当初から関わっている患者であるにも関わらず、自然と足が遠のいてしまいます。これと同じことが、今後は薬局の在宅業務でも起きるでしょう。

 やはり、本来は薬剤師も医師や看護師と同様に、死に立ち会えてこそ、真の医療人であると思います。患者の死は悲しいもので、これまで関わってきた情もある。その人の人生の終わりに立ち会い「よく頑張りましたね」、「お疲れ様でした」と心を込めて、そう思えれば医療人として一人前だと思います。

Q1 読者モニターの皆さんは、患者の死に立ち会った経験はありますか?

170629_図_5th.jpg

Q2 患者の死に立ち会った経験から得られた気づきを教えてください。

  • 出来ることはやったと思えるよう、日々の努力が大切です。
  • 人はいつ死ぬかわからない。今このときを大切に生きなければと毎回思う。
  • 全力でとりくむことと、感情移入してしまうことを混同しないことです。 共感はするけど、同情は違います。患者さんの最期に立ち会ったら、無言で送ることも大切ですね。
  • 死はだれにでも起こることなのであまりにも過敏にならないほうが自分のこれからの生き方が楽になると思います。
  • 人が死ぬということは特別なことではない。 患者の死の前に、自分の身内の死に関わってみるべき。 悲しいというよりは、今までいた人がいなくなって寂しい。 人が死ぬと残された人間は後悔することが多い、その後悔を無くす、またはできる限り減らすために必要なことは何なのか、考えていくことが大切。

Q3 「死に立ち会える薬剤師に」について、どのように考えますか?ご意見をお聞かせください。

薬剤師として学ぶ必要性を感じる

  • 病院薬剤師とは異なり、薬局薬剤師はなかなか患者の死に立ち会うことはありません。今後は国が進める在宅業務を実施するにあたり、薬局薬剤師も患者の死について学んだり、心の準備をしないといけないと思います。
  • 在宅患者さんのグリーフカンファには参加したことがあります。薬局でも積極的に参加すべきだと感じました。
  • 最後まで患者さんとかかわることは大切で、家族のかたから感謝されるような薬剤師でありたいと改めて感じました。

個々人で異なる死生観に配慮

  • 死ぬ瞬間に家族では無い人間は少なくて良いと思っています。薬剤師だからとか、看護師だからとか、医師であっても、不要かもしれません。ご家族であるとか、その方にとって大切な方と過ごすべきだと思っています。患者さんが旅立つときに側に居て欲しいと望まれれば、それは本当に嬉しいことでしょうし、きっと何か役に立とうと努力しますよね。 そういう経験が、医療の中で生きるその人を大きくすると思います。
  • さまざまな価値観はあると思いますが、医療人は「無」でいることが大切かと感じます。

大事なのは分かる。でも...

  • 確かに薬剤師は患者が危篤状態に陥っても病棟から呼ばれること、立ち会いを求められることがないと思います。訪問してもDNAR・BSCであるとなかなか薬の確認や説明を行っても意味があるのかと考えてしまうことがあります。
  • 患者さんの死に立ち会うのは、まいると思う。医療人としては立ち会うのは当然で最期まで関わるべきなのですが...。関わりが深いほど、亡くなった時「もっとできることがあったのでは?」と落ち込むのだと思う。
  • 終末期の患者さんやガン患者、家族にはどう話をしたらいいかわからず、避けてきました。やはり避けてはダメだと思っています。 なかなか最初の一歩が踏み出せないです。

今さら?当たり前では?

  • 当たり前すぎて「今さらそれ?」という感じ。 では、今までの薬剤師は医療人としての覚悟が足りなかったということでしょうか?

DNAR:Do Not Attempt Resuscitation 
患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法をおこなわないこと。ただし,患者ないし代理者へのinformed consentと社会的な患者の医療拒否権の保障が前提となる。

BSC:best supportive care 
がん治療で、がんを小さくする治療が期待できない場合に、がんによる苦痛を軽くするための療法をいう。

経験を積み上げていくことが大切だと思います

 森です。貴重なご意見ありがとうございます。

 死については、それぞれ価値観が違って当然です。医師や看護師は学生時代に死を学ぶ機会があり、それぞれに受け止めていると思います。関わりが深いほど「もっとできることがあったのでは?」と落ち込むのではなく、この経験を1つずつ積み上げていくことが大切な気がします。もっとよい関わり方や治療があるのではないかと思えば、他職種との協議や臨床研究にも力が入ると思います。

 また死に関わることが、当たり前すぎて「今さらそれ?」と感じれる薬剤師が増えてきたら、本当の意味で医療人の仲間入りができたと言えます。

トップに戻る