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頭が痛いからと単純に頭痛薬を勧めていませんか?

2017年07月28日 14:15

 みなさん、こんにちは。カナダの薬剤師事情を説明させてもらっている青山です。

 今年(2017年)はカナダ建国150年の節目ということで、いろいろなイベントが至るところで開催されています。建国記念日である7月1日はカナダ・デーと呼ばれており、毎年お祭り騒ぎです。

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 さて今回は、「セルフケアをサポートする役割」について話を進めていきます。前回、私が個人的に取り上げた6点のうちの1つ目です。

セルフケアをサポートする役割とは

 「セルフケアをサポートする役割を担う」とは、下記の3ステップを行うことです。

1)患者の「軽症」の状況を薬剤師が把握した上で、
2)それに基づいて評価を行い
3)アクション(何もしない or OTCを選ぶ or 病院受診を推奨する)のいずれかをする

 「軽症」の状況とは、頭痛、不眠、熱、ドライアイ、咳、アレルギー疾患、やけど、虫さされ、下痢、便秘、痔、腰痛、水虫などがあげられます。カナダにおいては、薬剤師がこれら100種類程度の症状をカバーすることが求められています。

 つまり、この100種類程度の症状のセルフケアが、薬剤師のサポートする領域です。オレンジ色で囲ってある範囲がそのセルフケアの領域です(図)。カナダにおいては、主に薬局薬剤師がこの領域について責任を持っています。

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 一方で、現在の日本においては、1類医薬品の販売や処方箋調剤に重きがあり、セルフケアの領域においてあまり薬剤師が積極的に介入できていないように思われます。私が調剤併設型ドラッグストアで初めて働いたとき、「どのようなOTCがあるのか」、「どのようにそれらを選ぶべきか」がさっぱりわからず、非常に困りました。私が薬学部に在籍していた4年制課程のときには、この「患者のセルフケアをサポートする」ための教育があまりなかったように思われます。シナリオを見てみましょう。主人公は、調剤併設型のドラッグストアで働く薬剤師です。

主人公は、調剤併設型のドラッグストアで働く薬剤師。40~50 代の男性から「膀胱炎の薬はありますか?」と尋ねられました。薬剤師は、「どうされましたか?」と聞き、この男性が最近、頻尿で困っていることを知ります。もう少し話を聞いていくと、その方は、1年前の人間ドックで血糖値が高いと言われたことを知ります。薬剤師は、膀胱炎だと判断せず、高血糖に起因する頻尿の可能性を疑いOTC を勧めずに、病院に受診することを勧めました

 ステップごとに色で分けてみました。

情報収集 (患者の訴えと患者情報の把握)
アセスメント(患者の評価)
アクション(何もしない or OTCを選ぶ or/and 非薬物療法 or/and 病院へ紹介)

情報収集 :患者の訴えと患者情報の把握

 患者の訴えと患者情報について聴き取りをします。実際に聞き取る内容の例としては、以下の通りです。

患者の訴えについて

 主に患者の症状の重症度を把握するために必要な情報です。ここで聴き取る内容は、患者の主訴に合わせて変えます。

:「どんな症状ですか?」「いつからですか?」「それ以外に症状はありますか?」「医師に受診しましたか?」「すでに何か市販薬を試しましたか?」

患者情報について

 主に適切なOTCを選ぶために聞き取るために必要な情報です。しかし、同じ症状であっても患者の年齢や既往歴などによって、病院受診を推奨する可能性もあります。

: 「現在、処方箋薬や市販薬を服用していますか?」「持病はありませんか?」「アレルギーはありませんか?」「年齢はいくつですか?」「妊娠や授乳中ではないですか」

アセスメント:患者の評価

 アセスメントとは、①のステップで得た患者の訴えや患者情報から、その重症度を評価すること、です。重症度の評価方法については、Minor Ailmentsという本に従って評価することがカナダでは多いです。

 Minor Ailmentsに書いてある考え方を少し紹介しますと、「Red flagの症状に気をつける」という考え方が非常に重要です。Red Flagは「赤い旗」、すなわち、重要な兆候や症状を示しています。この特定の兆候や症状があった場合、大きな疾患が後ろに隠れている可能性があるため、病院受診を推奨します。

 例えば、「頭痛」という症状を1つ考えてみます。頭痛は非常にありふれた症状の1つで、日本の薬局でも多くの方が頭痛薬を買いにやってきます。しかし一方で、「頭痛」はあくまで症状の1つであり、その原因はさまざまです。単に緊張型頭痛の場合もありますが、一方で脳出血や髄膜炎が原因であるというケースも考えておかないといけません。これら重症な疾患を見逃さないために、「どの程度の痛みですか?」「熱はありませんか?」といった質問が非常に重要です。

アクション:何もしない or OTCを選ぶ or/and 非薬物療法 or/and 病院へ紹介

 患者の評価をした後、何もしない or OTCを選ぶ or/and 非薬物療法 or/and 病院へ紹介のいずれかのアクションを起こします。

1)何もしなくても自然に治る場合、有効なOTCがない場合など、「何もしない」を選ぶことがあります。子供の軽症の中耳炎などは自然に治る場合が多く、基本的に抗菌薬を必要としません。ただ患者やその家族は症状があると非常に心配になると思いますので、安心させるような言葉をかけてあげる必要があります。

2)「OTCを選ぶ」が適切だと判断した場合、始めに得た患者情報を考慮した上で、妥当なOTC、その用法用量を伝えます。患者によってはアレルギーや副作用歴があったり、病名禁忌や相互作用があるので、それらを考慮した上で選択する必要があります。

3)患者の症状が重症である可能性がある場合、病院受診を推奨します。また、病院受診を推奨する場合でも、来週までに受診すればいいのか、それとも今すぐ救急外来にかかった方がいいのかの判断も必要です。

4) 多くの場合、非薬物療法も同時に推奨します。非薬物療法とは、ライフスタイルの見直しやその他に薬を使わずにできること、です。これについては今後紹介していく予定です。

「頭痛に効く薬をください」→「ロキソニンをどうぞ」の弊害

 例えば、「頭痛に対して、ロキソニンを販売する」ケースを見てみましょう。聴き取りをしない場合に起こりうるリスクと、3ステップを使って「頭痛」のセルフケアをした場合を表にまとめました。

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今回のまとめ

 いかがだったでしょうか?今回の「セルフケアをサポートする」ためのポイントは、①情報収集 (患者の訴えと患者情報の把握)アセスメント(患者の評価)アクション (何もしない or OTCを選ぶ or/and 病院へ紹介)の3ステップを実施することでした。

 これらを毎回毎回、実施することが非常に難しいことは、私も調剤併設型の薬局で働いたことがあるのでわかっています。ですので、まずは今回の記事では、薬剤師がセルフケアをサポートするときに、この3ステップが基本にあるということを覚えてもらえたら、非常に嬉しく思います。まずは、患者の訴えや今の患者の状況をしっかり聞いてあげることから始めてみませんか?

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

blog: SHAWN'S WORLD
Twitter:@shinshinskysky

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