新規登録

2つのチェックリストをフレイル予防に活用

高齢者コホート研究の成果を地域に還元

2017年08月04日 08:00

 フレイルには身体的、心理的、社会的要因が複合的に関与するため、その予防には地域全体での取り組みが必要となる。東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢氏は、千葉県柏市で実施した高齢者コホート研究・柏スタディで得られたデータなどを基に開発したフレイルチェックツールの概要と、同ツールを活用して地域ぐるみで取り組むフレイル予防について、第59回日本老年医学会(6月14~16日)で説明した。

1707037_face1.jpg

多角的にフレイルの兆候を探る"柏スタディー"

 柏スタディは、2012年より柏市内14カ所の保健センターなどで地域の高齢者約2,000人強を対象に毎年実施している健康調査の結果を分析し、フレイルの兆候を多角的に探るコホート研究で、オーラルフレイルや社会的フレイル、サルコペニアなどに関するさまざまな知見が得られている。

 健康調査の項目は多岐にわたり、簡易的にサルコペニアのリスクを判定できる指輪っかテストや運動機能、口腔機能、認知機能、社会性や心理状態などの検査が実施されているという。

簡易チェックと総合(深掘り)チェックの両ツールでリスクを判定

 飯島氏は、同研究で得られた知見を基にフレイルおよびサルコペニアのリスクを判定できる簡易チェックと総合(深掘り)チェックという2種のツールを開発した。

 簡易チェックは「ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか」といった簡単な質問11項目で、食・口腔・運動・社会性に関して「はい」「いいえ」で回答する形でフレイルのリスクが判定されるため、イレブンチェックとも呼ばれる。

 また、総合チェックでは、手足の筋肉量や指定された言葉の発音回数(滑舌)といった運動機能および口腔機能や、社会性や心理状態などに関する具体的な数値を記入する形でより詳細にフレイルのリスクを判定できる。

"赤シール"が多いとリスク高く

 チェック対象者のリスク判定には、各評価項目を記したシート()を用い、フレイルリスクが高い場合は赤、低い場合は青のシールを貼っていき、そのシールの枚数によってリスクが判定される。

表. 簡易チェック(イレブンチェック)シート

1707037_fig1.jpg

(飯島勝矢氏提供)

 飯島氏によると、イレブンチェックにおいて赤シールが6枚以上になると6枚未満に比べてフレイル、サルコペニアのリスクがそれぞれ16倍、2倍に、総合チェックにおいて赤シールが4枚以上になると3枚未満に比べて両者のリスクがそれぞれ11倍、12倍になるという。

 なお、フレイルの診断基準は、過去に実施された疫学調査(Cardiovascular Health Study)での基準や厚生労働省が作成した介護予防に関する基本チェックリスト(25項目)において8項目以上該当した場合などで検討し、サルコペニアの診断基準には、アジアにおけるサルコペニアのワーキンググループ(AWSG)の基準を採用している。

住民1人1人と地域社会全体の意識、行動変容を

 飯島氏は、柏スタディとは別に同市の住民を対象に悉皆全数調査を行った結果でも、身体活動や文化活動、ボランティア・地域活動をしていないとフレイルのリスクが高まることが示された点に言及。地域住民1人1人が主体となってフレイルの予防活動に取り組み、行政組織や社会福祉協議会、医師会などといった各種団体がその受け皿として機能する地域社会を実現する必要性を強調した。

 同氏は「柏スタディで得られたエビデンスや、その産物であるチェックリストなどをこういった地域社会の構築に役立てられれば」と期待を込めた。

トップに戻る