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オトナの学びは、楽しく美味しく!

第5回居酒屋抄読会in梅田

2017年08月07日 08:00

 薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)の活動が徐々に広がる中で、その活動を持続的なものとするため、NPO法人AHEADMAPが設立されました。その流れを受けて、各地でリアル+WEB配信というスタイルでの薬物療法に関連する医学論文抄読会が開催されつつあるようです。

 "経験不問、職業不問!論文と美味しい食事を肴に、楽しくお酒を呑みませんか?しんどい学びから卒業しましょう!オトナの学びは、いつだって楽しく美味しくあるべきです!"。このツイートに惹かれ、大阪梅田での居酒屋抄読会に行ってきました。

【第5回居酒屋抄読会in梅田】

日時:2017年7月29日(土) 21:00~22:30

参加者:薬剤師8人、登録販売者1人、PharmaTribune編集H

ツイキャス配信URL(アーカイブ):http://twitcasting.tv/zuratomo4/movie/390974624

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そもそも、居酒屋抄読会ってなに?

「最新情報に当たるべく論文を読むなんて、臨床に携わる者なら当たり前」そう思っていても、批判的吟味とはどのように論文を読むことなのかが分からない、身近にEBMを実践する仲間がいない。そんな孤独を抱えていた薬剤師にとって、2013年9月に始動、ツイキャス配信での抄読会を月1回開催するという薬剤師のジャーナルクラブJJCLIPは衝撃だったようです。分かりやすい!論文を題材に議論できる!世の中にはこんなに仲間がいるのか!と感動したとの声が聞かれます。

 病院や薬局単位で抄読会を開催するには、十分な人材とリーダーシップ、現場の理解が必要。しかし、そんな恵まれた環境下にない薬剤師にとっては、エビデンスを学び実践する仲間をWEB上に求めるのが必然だったのでしょう。

 そして、JJCLIPの活動が広がるうちに、意外と身近なところに仲間が見つかるようになり、それぞれの地域で「一緒に学ぼう」「職場に持ち帰ろう」という流れが生まれつつあります。その1つが居酒屋抄読会です。JJCLIPのリアルワークショップで知り合った薬剤師同士で「一緒に論文を読まないか?」「少人数なら会場なんてどこでもいい、居酒屋でよくない?」と開催に至ったとのこと。多忙な薬剤師がリアルに集まるため不定期開催ですが、2016年6月から開始し、今回が5回目。ツイキャスで配信するスタイルはJJCLIPと同じ。学んだ内容をシェアし、地域を問わず一緒に盛り上がることを目的としており、ビール片手にリラックスして参加を、と呼びかけています。

お酒を呑みながら皆で楽しく論文を読む!

 JR北新地駅ほど近くの居酒屋に集合した参加者は10人。内訳は薬剤師8人、登録販売者1人、取材にかこつけて参加した編集者1人。まずは乾杯!お酒と食事を楽しみながら、仮想症例シナリオに基づきお題論文を読み、議論するという進行です。

仮想症例シナリオの概要

膝痛に悩む68歳女性

  • テレビCMや知人からグルコサミンやコンドロイチンが良いと聞き、ドラッグストアを訪れたものの、配合量も価格もさまざま。
  • 登録販売者に尋ねる。「効果に違いはあるの?」「医薬品がいいかな?」「素直に医療機関を受診したほうがいい?」「あなたはどう思う?」
  • 登録販売者は薬剤師に相談。「一緒に調べて考えてみよう」とGoogleなどの検索サイトで日本語による情報検索方法を試しているうち(みんなでEBMを楽しく学ぶ!を参照)、下記の論文に行き当たる。

Clegg DO,et al. Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis. N Engl J Med 2006;354:795-808.

シナリオのPECO

  • P:68歳女性
  • E:グルコサミンやコンドロイチンを使用する/病院で薬を処方してもらう
  • C:使用しない/病院に行かない場合に比べて
  • O:膝の痛みが軽減するか

論文のPECO

  • P:症候性膝関節炎患者
  • E:グルコサミン1,500mg/日、コンドロイチン1,200mg/日、グルコサミン1,500mg/日+コンドロイチン1,200mg/日、セレコキシブ200mg/日
  • C:プラセボ
  • O:24週時点での膝関節痛20%減少(WOMACスコアのベースラインからの変化量)

論文の批判的吟味

  • 二重盲検化された試験か?→Yes
  • ITT解析がなされているか→Yes
  • 一次アウトカムは真のアウトカムか?→Yes:論文中に臨床的に有意な改善と認められるのはWOMACスコア15%低減との記載があり、20%は妥当だと考えられる。膝関節の器質的変化に改善が認められるか否かも必要かもしれないが、患者にとって疼痛が最も重要な治療課題であることから、真のアウトカムと言える。
  • 脱落率は?→問題なし:20%程度の脱落を想定して組まれた試験であることから20.5%の脱落率は問題ないと考えられる

試験結果の概要と解釈

 一次アウトカム(ベースラインからのWOMACスコアの変化量-20%)が得られた患者割合について、プラセボ群との間に有意差が認められたのはセレコキシブ群のみ。とはいえプラセボ群でも60%の患者に改善がみられ、グルコサミン群、コンドロイチン群、グルコサミン+コンドロイチン群も同様に6割程度の患者が改善。

  • 論文中のDiscussionによれば、プラセボの反応率が高いから有意差がつかなかった。ただ、他の研究でも反応率が同等と書かれており、再現性が示されたとも言える。
  • セレコキシブも有意差があるとはいえ、改善した患者割合の差は10%程度に留まる。
  • 全ての群において頓用が認められたアセトアミノフェンの使用量もベースラインとフォローアップ時で有意差がなく、プラセボはプラセボ効果のみで6割が改善したと解釈できる。

どう対応するか?は結構難しい...

 さて、ここからがEBMの実践トレーニング。あなたならこれらを踏まえて、シナリオの膝痛に悩む68歳女性にどう対応するでしょうか?ちなみに参加者からは次のような意見が上がりました。

  • どの選択肢も似たり寄ったりという結果をそのまま伝えるか否か。有り体にどの程度効果が見込めるのか数値で知りたい人もいれば、そうした説明を「冷たい」などと好まない人もいる。伝え方が難しい
  • プラセボでも6割の人が改善を認めていることを考えれば、プラセボ効果は無視できない。であれば、購入を希望するサプリメントを試してみる意味はあるのかもしれない
  • 病院に行くのを好まないからドラッグストアを訪れて対処法を考えている段階。直ちに受診勧奨をするのではなく、まずは相談相手となり信頼関係を構築しつつ、受診に対してどのような不安を抱えているのかを引き出した上で、スムーズに医療機関に受診を促すのが良いのでは
  • 4週時点で4割程度に改善が認められたことから、まず4週間使用して、効果がなければ受診を促すという流れもアリ
  • プラセボ効果を狙うなら安価なものが妥当かもしれないが、安価では満足できない人も。高い方がよく効くと考える人も意外と多い
  • 年齢を考慮すると、就労や育児など多忙な時期を過ぎた人。時間に余裕がある人は自らの不調を意識する機会が多く、痛みの悪循環を招きやすいのでは。何を選択するかだけでなく、相談して共に考える相手がいる安心感も疼痛の軽減に寄与する可能性がある
  • 自分の家族に積極的にサプリメント飲ませてもよいと思えるか否かの視点も大事

 エビデンスとEBMは次元の違う別モノ。「論文にはこう書かれていた、だからこうだ!」なんて、単純なものではないことを実感できるひとときでした。

経験不問・職業不問の薬の議論に魅力と可能性

 居酒屋抄読会は、経験不問・職業不問と謳っています。そこに魅力と可能性を感じました。今回参加した登録販売者さんは、JJCLIPの配信を聞き、メーカーからの販促資料だけに頼ることに不安や疑問を感じて、AHEADMAPへの加入を決めたとのこと。こうした場には薬剤師や登録販売者だけでなく、薬を服用・購入する側も参加する意義がありそうです。1つの論文を元に90分を超える議論...何気なくサプリメントや薬を買いに行くという一般の人が参加したら衝撃を受けるのでは。居酒屋という気軽な場で立場を超えてざっくばらんに議論する。その中で、薬の効果の曖昧さを知り、医療者がどのようなことを考えているのか、そして、自らの価値観がどのようなものなのかを改めて考える機会があれば、さらに一歩進んだ薬に関するコミュニケーションが可能になるのではないでしょうか。そんな時が訪れることを願います。

こぼれ話...

 OTCを売る登録販売者は、困っている症状を軽減するための薬を求める来店者に対応するわけですが「医療用医薬品の知識は乏しく、来店者の健康状態を客観的に把握する方法もないので、来店者の症状が他の処方薬による副作用の可能性があることが気がかり」とのこと。また最近では、医師が患者にOTC化された薬を市販薬店で購入するよう伝えることもあるようです。適切な医薬品を販売するためにも、そして、何らかの副作用を早期に見つけるためにも、医師・調剤薬局・市販薬店間で全ての薬の情報を「お薬手帳」を介して共有できればと願っていました。

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