新規登録

薬物療法に責任を持つために。NESAを学ぼう。

2017年08月28日 09:45

 こんにちは、青山です。カナダの薬剤師事情について紹介させて頂いています。

 7月に日本からカナダのバンクーバーに戻り、ようやくカナダの生活になじんできました。カナダは移民の国であり、薬剤師の中にも中国やインド、エジプトなどから移民してきた方が沢山います。初めは、カナダ生まれの白人系の中で働いてやっていくものだと思っていたのですが、実際は違いました。

aoyama4_1.jpg

ビクトリアのブッチャートガーデンで撮った写真。バンクーバーから1時間半ほどフェリーに乗ったバンクーバーアイランドにある。

 さて、今回はNESAに基づいた処方箋鑑査について説明しようと思います。

 結論を先に言いますと、「処方箋鑑査に、NESAという考え方を取り入れることで、処方箋の問題点を発見し、解決できる」です。

 私がカナダのブリティッシュコロンビア大学で学んだとき、「薬物療法の責任は全て薬剤師が持つ」と教えられました。薬物療法に責任を持つとは、「薬剤師が提供する薬物療法に問題がないこと」を意図します。つまり、薬剤師によって鑑査された処方箋は、薬学的な問題がない状態で患者に渡っていることが確約される、ということです。

 口で言うのは簡単ですが、実践するのは難しそうですね。そこで役立つのが『NESA (ニーサ)』という考え方です。それでは詳しく見ていきましょう。

 NESAとは、Necessary(必要性)、Effectiveness(有効性)、Safety(安全性) and Adherence(アドヒアランス)のことです。この4つの観点から処方箋が患者にとって妥当な内容かどうかを評価します。これによって、患者は、必要な(Necessary)薬を、より効果的(Effective)でかつ安全な(Safety)方法で、継続して飲むことができます(Adherence)。

 NESAを使うことで、薬剤に関連した問題点を確実に見つけ、その問題点を解決することができます。この薬剤に関連した問題点は大きく7つに分けられます。

aoyama4_3.png

Robert J. Cipolle, et al. The Patient-Centered Approach to Medication Management, Third Edition, 2012. 37-72.

では、実際にNESAを使って処方箋鑑査をしてみましょう。

患者が処方箋を持って薬局にやってきました。

処方箋内容

Rx. メトホルミン500mg 2T/ 2x1 毎食後 30日分

患者情報: 50代男性、2型糖尿病、副作用アレルギー歴なし、既往歴なし、併用薬なし、肥満、食事療法や運動療法は正しく実施しているが効果不十分、アルコール(毎晩寝る前に飲む)

また患者は薬物療法に同意しているとする。

 まずは、NESAのNから順番に確認していきます。

1)Necessary(必要性) : 薬物療法は患者に必要か

 糖尿病は細小血管障害や大血管障害のリスクファクターと知られています。それらのリスクを下げるために、HbA1cを7.0以下にコントロールすることがガイドライン(Canadian Journal of Diabetes)で推奨されています。食事療法や運動療法が不十分だったので、薬物療法は必要と言えます。

2)Effectiveness(効果): メトホルミンは患者に有効か?

 メトホルミンは肥満型患者の冠動脈疾患のリスクを低下させることが示唆されており、他の糖尿病薬と比べて効果的な薬と言えます。初期用量としても妥当と考えられます(カナダの添付文書集Compendium of Pharmaceuticals and Specialtiesを参照)。

3)Safety(安全性): メトホルミンはこの患者にとって安全か?

 メトホルミンの主な副作用は下痢や吐き気など消化器症状です。低用量からのメトホルミンは副作用を最小限にすることができ、安全に投与できると思われます。また、低血糖のリスクは非常に低いですが、アルコールを空腹時に飲むことで低血糖症状がマスクされ、重症化する恐れがあるため、アルコールは食事と一緒に摂取するように指導します。

4)Adherence(アドヒアランス): アドヒアランスは良好か?

 ライフスタイル、経済面、薬のレジメの複雑さ、剤形などを考慮します。この患者は50代で年齢も比較的若く、自分の病気や服用薬の理解力もあるため、アドヒアランスは良好と考えられます。

 結果として、NESAの各項目に問題がなかったので、そのまま調剤します。もし、このNESAのいずれかに問題があった場合は、疑義照会をします。

 今回の記事をまとめると、NESAという考え方を処方箋鑑査に取り入れることで、薬学的な問題を確実に発見・解決でき、薬物療法に責任を持つことができると考えます。

 次回は、カナダの薬剤師に与えられた権限について紹介します。

aoyama4_2.jpg

カナダ発祥のプーティン。フライドポテトにグレイビーソースとチーズをかけた料理。カナダに来たらぜひ一度は試してみてください。

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

blog: SHAWN'S WORLD
Twitter:@shinshinskysky

SHAWN'S WORLD

トップに戻る