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実録!小児科門前薬局の現場

薬局で起きるあれこれ、トラブルシューティング

2017年09月06日 07:00

 夏休み終わりました!お子さんのいらっしゃる方は、まさに気持ちは今が夏休みという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回は、働き方の話題とは打って変わって、小児に対する服薬指導の現場についてお伝えします。すでにこうした方法を実践している方は多いと思いますが、あなたの工夫やアイデアを、ぜひファーマトリビューンに投稿してみては(ネタ切れではありません、ためになることは共有しましょう)。

今回は、以下をお伝えします。

・薬局内に絶えず走る緊張!子どもの飛び出し、どう対処する?

・必要最低限のことしかできない!ではどうするか?

・処方元と薬局での説明、患者さんポカーン...を防ぐには?

・備品の破壊や持ち帰り、嘔吐、おもらし...どうする?

・ここはチケット予約サイトか?続々と入る小児科診療予約

・頑張れ、父ちゃんたち!

profile_miyaq_smallicon.jpg薬局内に絶えず走る緊張!子どもの飛び出し、どう対処する?

 小児科の患者さんの多くは6歳未満、特に3歳未満です。ということは、当人はなぜ薬局にいるのか、病気であることすら理解していないことがしばしばです。待合室で保護者とおとなしく座っているなんてことは夢のまた夢。39℃の発熱でも、薬局内を走り回る子どもは決して珍しくありません。スキあらば外に出ようとすることも。子どもたちが怪我をしたり/させたり、事故に遭わないようにするにはどうすればいいでしょうか。

● 薬局の外へ飛び出そうとする子ども:当薬局の入り口は手動ドア。自動ドアに興味を示して出て行くのを防げます。ドアの取っ手を持って開けようとしますが、ある程度身長のあるお子さんに限られます。それでもなおどうにも危なければ、「ここは一歩も通さぬ」とばかりに、薬剤師が門番と化します。

profile_miyaq_smallicon.jpg必要最低限のことしかできない!ではどうするか?

 保護者はもちろん、薬剤師も子どもの行動には注意を払っています。説明しつつも視線は子どもから離れることはありません。子どもがおとなしく話を聞いてくれる魔法など、どこにもありません。あったら喉から手が出るほどほしいのは、薬剤師よりも保護者でしょうね。必要最低限のことだけ尋ねて薬を見せて「分からなかったら後で連絡くださいね」で終わってしまうこともしょっちゅうです。そのため、どうしても面と向かって確認したいことだけに絞り、服用方法や配合変化、相互作用については薬袋やお薬手帳に書いてしまいます。服用方法や薬効については、あらかじめスタンプを用意するのも効率的です。

● スタンプ記載例:○時間あけて服用、症状に応じてのみ量を調節してもかまいません、他の薬と混ぜない

profile_miyaq_smallicon.jpg処方元と薬局での説明、患者さんポカーン...を防ぐには?

 当薬局の処方元である小児科医は、患者さんの話をゆっくり聞くスタイル。説明も丁寧なので、真面目で育児に熱心な保護者に好評なクリニックです。ただ、長々と説明を聞いているうちに理解が追いつかず、ポカーンとした表情で薬局に来る方も少なくありません。分かりやすい言葉でかみ砕いて説明することも薬剤師の仕事。処方元と薬局での説明がチグハグだと患者さんが困ってしまいますよね。そこでどうするか?処方元の一般的な処方方針をあらかじめ聞いておき、説明の内容が一致するようにします。

【処方元と一致させていた内容・具体例】

● 解熱剤の使用基準:処方箋上は38.5℃以上としていますが、それ以上でも元気そうなら使用せず、それ以下でもぐったりしているなら使用

● 内服薬の使用間隔:処方箋上では食後と記載していても、摂食にかかわらず服用可能、4〜5時間あいていれば服用OK(保育園の都合で間隔が短くなる場合も、3時間ぐらいまでならOKに)

● 抗菌薬の処方に関する考え方:処方元は「不必要な抗菌薬は出さない」方針。ちなみに、患者さんから「なぜ抗菌薬が出ないのか」と薬局にクレームの電話が入ったことがあります。そこで、処方方針をお伝えしました。

● ジェネリック医薬品に関する考え方

profile_miyaq_smallicon.jpg備品の破壊や持ち帰り、嘔吐、おもらし...どうする?

 子どもだらけの薬局内、さまざまなアクシデントが発生します。ときにはケンカ、薬局内備品の破壊(掲示物が剥がれるのはいつものこと。悪気はないのは分かっていますが)、おもちゃなどの持ち帰り(いつの間にか減っています)。あれこれと対策を講じています。

● 薬局に必ず掲示しなければならないもの:幼児の手の届かないところに貼るか、掲示物をフィルムコーティングで保護して剥がれにくくする

● 疾患啓発やお知らせなどのポスター:破れてもいいように予備をつくる

● ケンカ:親御さんとともに止めるしかありません。当たり前ですが

 おもちゃの持ち帰りは、諦めるしか対策はなさそうです。ただ、最近はお気に入りのおもちゃを持参する親御さんも増えたので、持ち帰り忘れたおもちゃを保管し、他のお子さんが持って帰らないようにする対応に切り替わっています。

 とりわけ、薬局内の緊張が高まるのは「胃腸炎の幼児による嘔吐」です。当薬局でも年に数回はあります。

【薬局に常備しておくとよいもの】

オカンアートの回にも登場した汚物袋

1709_miyaq_bag.jpg紙袋とビニール袋、100均アイテムでカンタン&安価!オススメです

● ペーパータオル(大量に準備)

● 使い捨て手袋

● 使い捨てマスク

● 塩素系消毒剤(あらかじめ250倍に希釈した製品を購入する。または一般的な塩素系漂白剤を用意、すぐに希釈できるよう目盛りを付けた容器を準備する)

● 雑巾(拭いたら捨てる)

● 大きなポリ袋(不透明の厚手のものがベター。掃除に使ったものを片付けたり、汚れた衣服を患者さんが持ち帰る際にも使えます)

同じ装備でおもらしにも対応できます。

 そして、できれば処理するところを隠せるものがあればいいですが、薬局がある程度広くないと難しいですね。

profile_miyaq_smallicon.jpgここはチケット予約サイトか?続々と入る小児科診療予約

 最近は、診察受付をネットで行うクリニックも増えています。われわれもその日の忙しさや進行具合を確認することがあります。近隣の小児科は、当日朝からネット予約を受け付けます。特に土曜日は予約開始時刻にネット予約のページを見ると、続々と予約の順番が埋まっていくのが見て取れます。予約開始30分もしないうちに、当日の予約枠が埋まるのを目の当たりにし、業務を始める前から「今日は患者さんが多い」と気が遠くなり...いえ、気合いが入ります。

 先着順のシステムには課題もあります。急に調子が悪くなった患者さんでも、ネット受付の時点では症状などが分かりませんから、後に回されてしまいます。例えば喘息の経過観察中で定期的に薬をもらう子も、急な発熱の子も、受診は予約順次第です。病院の待合室で別の感染症をうつされる心配が減った半面、こうした別の問題も浮かび上がってきました。

profile_miyaq_smallicon.jpg頑張れ、父ちゃんたち!

 最近は、お子さんをお父さん1人で連れてきて、病状や薬の使用状況を病院や薬局で受け答えでき、処方箋と同時におくすり手帳をさっと出せる人も増えてきました。育児に協力的な父親を珍しいと思わなくなってきました。

 しかし、わが子の状態をうまく説明できない父親もまだまだいます。

 皮膚炎の子どもの受診を夫に任せたあるお母さんは、お薬手帳に「病状、薬の使用状況、薬の在庫数、処方してほしい薬の数」を書いた付箋を貼って夫に持たせていました。わが夫のことをよくご存じなのでしょう。受診先が診察時にお薬手帳の記載内容や残薬数を確認する医師なので、この方法に出た模様です。

 ところが、どうも母親の意図と異なることになっていました。薬歴を見たところ、過去にも処方箋の内容について処方医と再度話し合いになったとの記載が。「これは理由をはっきりさせないと、夫婦げんかになってしまう!」と思い、父親に「先生は何かおっしゃっていましたか?」と尋ねたものの、ポカーンとした表情。やむなく処方元へ処方内容の確認を取ることとなりました...。

 一方、わが子のためにがむしゃらにがんばる父親もいます。かぜで熱を出したとなると、店舗にある冷感シートや経口補水液、体温計をあたふたと片っ端から買っていこうとする父親も。あまりにも落ち着かない様子だったので「それだけあったら十分ですよ」と、治るまでに必要と思われる量をお選びしました。

 小児科を受診する子どもと親御さんをめぐるいろいろな出来事を紹介しました。「小児科はしんどい」「新しい薬がないのでつまらない」などと思われがちですが、「こうすれば親子ともども楽になる」指導で、患者さん(の親御さん)に喜ばれる、やりがいのある場所ですよ!それではまた次回!

【コラムコンセプト】

薬局業界では「在宅」だの「24時間対応」だの言われてるけど、実際に現場で働く人の半分以上は、家庭で大きな役割を果たしている主婦薬剤師。高齢化社会でも子供たちの健やかな成長を見守るのは必要不可欠のはず。なのに、未来をつくる子供たちとその親を支えようという機運が起こらないのはなぜ?薬剤師はワーク・ライフ・バランスを考えてはだめなの?薬剤師だって医療人である前に生活人だ!と疑問に思う日々。主婦ばかりの薬局で、子供とその親の健康を支援する現場で考えた、現場目線のコラム。

【プロフィール】

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大学卒業後、色々な薬局での勤務を経験。現在は小児科の処方箋を多く受ける薬局で管理薬剤師として働く。薬剤師としては中堅どころ。実生活では子どもはいない。子どもの多い職場で働いていた経験が長いのに、未だに子どもが苦手なのが課題。薬局という狭い場所にいながらも、様々な情報や知見を得られるのがインターネットの利点と認識し、活用。それでも、生活の場で得られることはインターネットでは得られないので外にも出る。薬剤師だって生活者であることを意識して、心身ともに穏やかな日々を願って暮らしている。

blog:「くすりや」の「現場」
http://miyaq.hatenablog.com/

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