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多職種連携の中での薬剤師

第10回日本在宅薬学会学術大会シンポジウム

2017年09月07日 10:00

 「薬剤師とうまく連携していい医療を実践したい」と医師から発言のあった本シンポジウムのディスカッション。地域包括ケアで要となる多職種連携の中で、薬剤師に求められることとは。第一線を走るパネリストが課題と要望を語った。

第10回日本在宅薬学会学術大会
医療・介護・行政と薬剤師のかかわり~「あるべき論」から「実践」へ~
日時:2017年7月29日(土)~30日(日)
会場:パシフィコ横浜会議センター(横浜市西区)
主催:一般社団法人日本在宅薬学会

パネリスト
鈴木康裕 厚生労働省 医務技監
今村聡 公益社団法人日本医師会 副会長
山本信夫 公益社団法人日本薬剤師会 会長
今井博久 東京大学大学院医学系研究科 地域医薬システム学講座 教授

司会
近藤太郎 近藤医院 院長
狭間研至 一般社団法人日本在宅薬学会 理事長

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「相談したい」と医師に言われる関係性を

touron_imamurashi.JPG 地域の取り組みを見ますと、それぞれの専門職の集まりの会議など、意見交換の場は増えてきているという認識は持っています。ただ、地方では専門職種の顔ぶれがある程度固定されており、すぐ連携ができるのですが、都市部の場合、訪問看護ステーションも薬局も複数あるので、患者さんによって連携先の組み合わせが異なります。そうなったときの連携はなかなか難しく、都市部での地域包括ケアの提供には難しい部分が出ているというのが正直な実感です。

touron_imaishi.JPG 特定医療行為が行える特定看護師制度が動き出している中、医師は在宅などで薬剤師をどの程度歓迎しているのか、研究班で代表の医師10人にインタビューしたところ、全員が「薬剤師と組んでやりたいけれど、どういう人柄、考え方なのかを知りたい」と言っていました。薬剤師とうまく連携していい医療を実践したいし、やるべきだと。

touron_imamurashi.JPG 患者さんが1人1人違っているように、医師の性格や力量、そして薬剤師の知識や経験もそれぞれ違います。連携する相手がどのような人柄でどのような能力を持っているのか、顔の見える連携が大事で、結局は信頼関係だということです。

 地域で医療をしていると、病状が悪化して近隣の病院に紹介入院し、私が紹介したときよりも薬が増えて退院してくることがあります。それぞれの先生が「必要だから」と言って出しているので、正直「どの薬を減らせばいいのか」と悩みます。この薬にどのような副作用があるというのは文献で分かりますが、それが組み合わさったときにこの患者さんではどのような問題が生じるのか、やはり薬剤師と相談したいです。あの薬剤師に相談したらいいアイデアが出てくるから、「一緒になって検討しましょう」と言えるような関係を、きちんと個別につくれているかどうかということだと思います。

多職種連携の前に、薬薬連携をしっかりと

touron_yamamotoshi.JPG 今井先生の示された、病院の薬剤師と地域の薬剤師が十分に連携できていないというデータは、正直意外でした。もう少し仲良くなっていると思っていましたが、まだまだだなと。入・退院するときの地域と医療機関の連携の中で、薬剤師が医師と直接話をするのはなかなか難しい。そうなると、まず薬剤師同士から話が始まると思いますが、その間の連携が十分進んでいないとすると、あらためて再構築をしなければと感じます。

 もう1つ、医療におけるAIの議論があります。AIが進歩すると、最初になくなるのは薬剤師だろうという話がありますが、AIは極めて無機的です。医療は人と人との付き合いなので、その部分は残るでしょう。結局、信頼関係をどうつくるかが大切なのです。

 それから新しい分野に進むに当たり、法的にクリアしなければならない問題は残っていますが、それを実験的、試行的に実施することも、可能な部分はあると思います。政策的にはさまざまな方法が考えられるでしょうが、結局は医療職がどれほど互いの職能の範囲を十分理解して「これをお願いしたい」という信頼関係を作れるかです。

touron_imamurashi.JPG 私も、病院薬剤師と地域の薬局薬剤師との連携が少ないというデータはすごく衝撃的で、多職種連携の前に同じ職種の中で連携をしっかりしてほしいということを、山本先生にお願いしたいです。ポリファーマシーにはさまざまなパターンがありますが、入院中に多くの科にかかり、薬が増えて戻ってくるというケースは多いです。本来は、1回増えた後に減らすのではなく、そもそも入院中に病院薬剤師が診療科の先生とよく話をして、スタートの時点でポリファーマシーにならないようにすることが必要です。1回増えたものを減らすことは言うほど簡単ではなく、ぜひこの点は薬剤師会にお願いしたいですね。

touron_yamamotoshi.JPG 薬を減らすということは治療上の問題もさることながら、処方した医師に説明するときに勇気が必要です。加えて医師を説得するには、質問に答え、医師とキャッチボールできるだけの下地が薬剤師側になければいけません。それは共通言語であったり、データの共有でしょう。

 患者の安全を守る、最適な治療を提供するという観点でいえば、薬剤師も医師も同じ立場に立っています。そうした薬剤師と医師の共通理解の下での連携、ましてや病院の薬剤師と地域の薬剤師の連携がしっかりと進むように、これからもがんばらなければと思っています。

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社会資源としての薬局、薬剤師の役割

touron_suzukishi.JPG 多職種連携には、職種間の信頼感醸成フェーズと、患者さんの個人情報交換フェーズがあります。前者については、日本では顔を合わせて議論をしないとなかなか信頼感が生じません。しかし、後者の個人情報交換フェーズは、調剤薬局が20カ所あるとか、20カ所の訪問看護ステーションがあると、組み合わせが多くなってしまい、顔を合わせて連携することは難しいので、最新のスマートフォンなどを使ったシステムが有効です。このバランスをいかに取るかが、非常に大事だと思います。

 処方の中止・変更などについて薬剤師から医師に提言する場合、フィジカルアセスメントなどで医師や看護師との間に共通言語があることは非常に重要です。体の症状や副作用について、医師をきちんと説得できるかどうかですね。

touron_hazamashi.JPG バイタルサインなど共通言語を持つべきだという鈴木氏のお話は、非常にインパクトがあります。私も自分で診療する中で、共通言語を知っておくということが非常に重要だと感じました。「この薬にはこういうことがあるからやめてください」と言われただけでは、医師は処方の中止・減薬を決断しづらいのです。医師の思考回路では、患者さんの訴えている症状は特定の病気が原因であると考えるからです。「現状このような問題が起こっていて、この処方薬が原因ではないか」と言われれば、「自分の処方している薬が原因ならば・・・」と考えます。

 今後、高齢化に伴って医療ニーズは急増しますが、それを支える人数は増えない。その中において、社会資源としての薬局、薬剤師をどのように活用していくかという観点が重要だと思います。その中で、薬剤師は何を変えることが重要でしょうか。

touron_suzukishi.JPG 少し切り口が違いますが、東京都で救急搬送される人のほぼ半数が65歳以上で、その3分の2以上が脱水や発熱、骨粗鬆症による大腿骨頭骨折などです。このような患者さんが三次救急の窓口に集中してしまうと、本来三次救急で対応すべき患者さんがなかなか取り扱えないという事態になり、いかに在宅でそのような事態を予防できるかが重要になります。例えば、誤嚥性肺炎を起こさせないこと、加えて、誤嚥性肺炎の前兆に家族にどう対処してもらうかです。実際に起こってしまったときも、自宅でできることは十分ありますので、医師や看護師、薬剤師がすべきことをうまく組み合わせた上で、患者さんや家族が望む方向に支援していくことが大事だと思います。

touron_imamurashi.JPG 地域の薬局薬剤師には、もっと在宅に目を向けていただきたい。これは医師も同じで、これからの超高齢社会を支えていくためには、全ての医療関係者がなんらかの形で在宅というものに目を向ける必要があると思います。また、患者さんの住環境にも注目していただきたいですね。このお薬を飲んでいるから脱水になりやすいので、より住環境には注意が必要とか、湿度や温度の管理をどうするかなどですね。そうすることで、熱中症の患者さんを減らし、救急の負荷を減らすことができます。高齢者では、暑いときにエアコンを使うと、寒くなって嫌だというケースがあります。一定の環境をどのように保つかという指導は、気付いた人がきちんとご家族やご本人に伝えてあげることが大切です。

 もう1点は、ウェアラブル端末などのIoT(Internet to Things)の活用です。住環境の情報が介護者や医療者にスムーズに伝わるような仕組みをつくることで、関わる人たちの負担を減らしていくことも大事だと思います。

touron_yamamotoshi.JPG 社会資源としての薬局なり薬剤師をどう活用し、何が変わればいいのかというと、今以上に意識を高めるということです。個人的には、できれば外来と在宅を分けない方がいいような気がしています。「外来患者には対応するが、在宅はやらない」ではなく、自分の患者さんをどの状況でケアしていくか、経過観察をどのようにフォローアップしていくかを考えてほしいです。

 また、超高齢社会になれば医薬品を服用することは生活の一部になりますから、それを前提として薬剤師が対応すべきです。全ての薬剤師がそのような視点を持って対応すれば、ヒューマンリソースとして十分に活用できるのではないでしょうか。

touron_kondoushi.JPG 多職種連携においてそれぞれの職種の専門性を考える際、医師、看護師、介護職にはない、プロとしての薬剤師の売りとはなんなのかを、薬剤師、薬剤師会からもっとアピールしてほしいと思います。自分ではできない分野のことを認識していてこその連携ですから、互いの職種をよく知ることはとても大切です。地区の医師会、薬剤師会合同の研修会や勉強会が繰り返し行われることで、互いの関係が深まるのでは、と感じました。

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