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デキる!父ちゃん薬剤師

2017年10月03日 08:00

 業務だけではなく家事や育児で毎日慌ただしい...それって、ママ薬剤師に限った悩みでよいのでしょうか。家事や育児は業務に支障を来す厄介な事柄、そう捉えるだけでよいのでしょうか。「育児はキツいが役に立つ」そんな男性薬剤師が増えれば、きっと子どもたちの薬に対するイメージは良くなり、薬剤師も嬉しい、良い循環が生まれるでしょう。

 そこで今回は、私がかつて別の薬局で管理薬剤師として勤務していた頃、一緒に働いたある男性薬剤師の話をします。

profile_miyaq_smallicon.jpg自らの経験談を基にしたアドバイスに彼を指名する患者も

 初めの印象は、はっきり言って良くはなかったです。「調剤経験はあまりない40歳代の男性薬剤師を異動させようと思う」と当時の上司に言われ、正直「即戦力の人を呼んでよ」と、まだ若かった私はため息をつきました。

 しかし、実際にその方の働きを見ると「動作はゆっくりだけど真面目に働いてくれる。しかも、年下のスタッフの話も謙虚に受け入れる。じっくり育てればいい人材になるのではないか」と思いました。時にはいじられ、親しみやすい対象となり、力仕事を率先して行う。そして何よりも、患者さんに対する距離の取り方は他の見本となるものがありました。

 他の薬剤師では太刀打ちできないほど気難しい患者さんの心をほぐし、自らの経験談を基にした生活アドバイスまで行っていました。おかげで、彼を指名する患者さんまで現れるようになりました。

 特に、子育ての経験から来る指導には温かさと重みがありました。

 解熱剤が処方された幼児の親に「一晩ゆっくり寝たらだいぶ良くなるから、解熱剤を使うには少し元気かな?と思う時でも、気になるなら使ってもいいですよ」と語りかけたり。薬が苦手な幼児本人に「いいか、この薬を飲んだら元気になるから、ちゃんと飲むんやで。おっちゃんとの約束や」と目線を合わせて話したりしていました。

profile_miyaq_smallicon.jpgイクメン?当たり前や!

 ある日、その方に他のスタッフが「なんでそんなに子育ての話に詳しいんですか?」と尋ねました。

「最初の子が生まれた時、入院先の病院の看護師がおむつを替えながら、わしに向けてこう嫌みを言ってきたんや。『まあ、お父さんにはおむつを替えるなんてできやしないでしょうけど』 腹たって『なにくそ、あの看護師見返したる!』っておむつ替えをマスターしてやった。ある日、わしが子どものおむつを替えているのを見て、うちのオカンが言うんや。『あんた、おむつ替え私よりうまいなあ』これだけは誇れる。あとな、母親にできることで父親に出来んことってほとんどないで。父親にはどうしてもできないことは、出産と母乳を出すことだけや。それに、自分が選んだ嫁さんはしっかり守らなあかん」

 ええ話やなあ...で、その場は終わったのでした。

 それから数年一緒に仕事をしてきたのですが、その間、彼はさらに家事や育児の技をメキメキと極め、自宅の風呂掃除は毎日、週の半分は家族に料理を作るようになりました。おむつ替えをした娘さんは成人になり、恋愛相談も含めてすべて父親に相談するようになりました。

 最近、お会いする機会があったので聞いてみました。「今、盛んにイクメンと言われていますが、どう思いますか?」

「当たり前や!」との言葉が返ってきました。

現在、健康維持("意地"とも言い換えられます)と体を鍛えるべく、趣味の筋トレに励む日々とのこと。なぜそこまで熱心に体を鍛えるのか、その理由を尋ねてみました。

「ただでさえ顔が怖いのに、そんなに鍛えたら怖がって娘さんとお付き合いしようと思う男性が寄ってきませんよ。娘さんに一生恨まれますよ」

「怖い父親を乗り越えてこそ男や。そうでないと家庭は守れん。そう簡単には乗り越えさせてやらん」

「負けず嫌いなのは全然変わってませんね。むしろ、ひどくなってますよ」

 患者の生活環境を理解すると充実した服薬指導が提供できる、そう考えると、育児経験も薬剤師の業務に生かせるわけです。男性薬剤師の皆さん、頼れる父ちゃん薬剤師として、小児科医療の現場でぜひ活躍してみては!

【コラムコンセプト】

薬局業界では「在宅」だの「24時間対応」だの言われてるけど、実際に現場で働く人の半分以上は、家庭で大きな役割を果たしている主婦薬剤師。高齢化社会でも子供たちの健やかな成長を見守るのは必要不可欠のはず。なのに、未来をつくる子供たちとその親を支えようという機運が起こらないのはなぜ?薬剤師はワーク・ライフ・バランスを考えてはだめなの?薬剤師だって医療人である前に生活人だ!と疑問に思う日々。主婦ばかりの薬局で、子供とその親の健康を支援する現場で考えた、現場目線のコラム。

【プロフィール】

profile_miyaq.jpg

大学卒業後、色々な薬局での勤務を経験。現在は小児科の処方箋を多く受ける薬局で管理薬剤師として働く。薬剤師としては中堅どころ。実生活では子どもはいない。子どもの多い職場で働いていた経験が長いのに、未だに子どもが苦手なのが課題。薬局という狭い場所にいながらも、様々な情報や知見を得られるのがインターネットの利点と認識し、活用。それでも、生活の場で得られることはインターネットでは得られないので外にも出る。薬剤師だって生活者であることを意識して、心身ともに穏やかな日々を願って暮らしている。

blog:「くすりや」の「現場」
http://miyaq.hatenablog.com/

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