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カナダの薬剤師が説明するセルフモニタリングと非薬物療法とは

2017年11月15日 09:45

 こんにちは。カナダの薬剤師事情を紹介している青山です。

 今回は、カナダの薬剤師が実施している服薬指導について書いていきたいと思います。

6kai_aoyamashi1.jpgシアトルにあるスペースニードル。
バンクーバー(カナダ)とシアトル(アメリカ)は車でだいたい3時間くらいの距離。
休日に気軽に遊びに行ける。

効率よく適切で充実した患者指導のために 

 カナダの薬局では、調剤テクニシャンが処方箋のデータ入力や調剤を行うので、薬剤師業務が軽減するというイメージを持つかもしれません。しかし実際の現場では、薬剤師の人数は必要最小限で、患者に割ける時間は日本よりも少ないのではないかと私は感じています。

 では、薬剤師はどの業務に時間を使うべきでしょうか。

 やはりその中で重要なのは、"効率よく適切で充実した患者指導ができること"です。カナダでは患者に薬物治療の効果や副作用などに加え、セルフモニタリング非薬物療法についても説明します。例を示した方がわかりやすいので、先にこちらを見てください。

処方: メトホルミン500mg 1回1錠 1日2回 朝夕食後 30日分

患者情報: 40代男性独身、2型糖尿病との診断を受け、メトホルミンを初めて処方された。その他の既往歴と併用薬なし、やや肥満型。副作用、アレルギー歴なし。

生活スタイル: 運動習慣なし、アルコール5~6杯/日、喫煙1箱/日、食事は外食が主

 では、この患者に服薬指導してみましょう。

 「この薬はメトホルミンです。500mgという規格です。1日2回、朝夕食後に服用してください。この薬は、血糖値を下げる効果がありますので、糖尿病に対して有効な薬です。

 主な副作用として、胃のむかつきや下痢などがあります。

 糖尿病は完全に治すのが難しい病気であり、基本的に薬を今後飲み続けていく必要があるので、勝手に飲むのをやめないでくださいね。メトホルミンの胃のむかつきや下痢は飲み始めに起こりやすいですが、徐々に良くなっていくはずです。糖尿病の治療が上手く進んでいるかどうかは、HbA1cという値で判断し、基本的に7.0以下を目指します。およそ3~6カ月毎にこの値をチェックします。

 また、ライフスタイルを変えることで、血糖値を改善することができると言われています。まずは、軽い運動から始めてみませんか。1日約30分、週150分、程度の軽い運動をするのが理想と言われています。水泳や自転車などがおすすめです。アルコールは飲んでも構いませんが、1日2杯までに減らしましょう。禁煙は非常に大変ですが、機会があればぜひお手伝いさせてください。食事についてはより健康的なものが好ましいですが、詳しくは栄養士さんに聞くことをお勧めします。

 特に注目して頂きたいのが、青色部分の(1)セルフモニタリングと緑色部分の(2)非薬物療法の部分です。

セルフモニタリング(Self Monitoring)

 英語の「Self」と「Monitoring」を組み合わせた単語で、「患者自身で」「モニタリングすること」という意味です。「モニタリング」については、今後詳しく説明する予定ですが、ここでは、「薬の効果と副作用の評価を継続的に行うこと」、と思っていただければわかりやすいかと思います。

 薬剤師は、患者がセルフモニタリングをできるように、「いつ」「何が」起こるかを伝えました。効果について「3~6カ月後」に「HbA1c」を測ることを説明し、副作用について「飲み始め」に「胃のむかつきや下痢」が起こりやすいと説明しました。

 この目的は、患者を教育し、患者自身に効果や副作用の発現に気付いてもらうことです。また、アドヒアランスの向上につながると考えられます。

非薬物療法

 今回の例では、運動や禁煙の推奨など、患者のライフスタイルの変更についての提案をしました。

 非薬物療法は効果が十分に確立しており、安全性が高いものも多いことから、薬物療法と併用されます。これらの情報も全てエビデンスに基づいて、 提供することが重要です。またカナダでは、最初に患者が相談する医療者が薬剤師であるので、薬剤師がこれらを責任持って說明するべきこととして考えられています。

 ニキビのための洗顔方法、不眠のためのカフェイン摂取の減量や、下痢や嘔吐であれば補水の方法などの幅広い症状についても説明します 。

 薬剤師が患者に適切に指導できるようになるためには、各々の薬剤について、「いつ」「どのような効果や副作用」が出現するかに精通している必要があります。 医薬品情報(インタビューフォームなどから、治療や薬物動態、安全性に関する項目など)や各種ガイドラインなどにも目を通しておくと良いと思います。

 セルフモニタリングと非薬物療法の概念が少しでもわかっていただけたでしょうか。日本もカナダも薬剤師の大変な環境は同じですが、時間的余裕がなくても、しっかりと対応すべき患者さんと指導すべき内容を見極め、実践していくことが重要だと思います。

参考

Canadian Diabetes Association Guideline, Canada's Food Guides, Therapeutics Choices for Minor Ailment

6kai_aoyamashi2.jpgグラウス・マウンテンにいるグリズリーベア。
カナダには野生動物が非常に多く、リスやスカンク、たまにクマも見かけることがあります。

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

blog: SHAWN'S WORLD
Twitter:@shinshinskysky

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