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期待される「街角のサイエンティスト」

2017年11月15日 10:30

獨協医科大学越谷病院こころの診療科.
井原 裕

ライフスタイル医学時代の薬剤師

 「街角のサイエンティスト」といわれる薬剤師に、今、「生活習慣コンサルタント」としての役割が求められています。プライマリ・ケアの領域では、外来患者さんの6〜7割が生活習慣病です。生活習慣病であるということは、生活習慣を整えていれば防げたかもしれないし、生活習慣を整えれば今からでも改善が見込めるということでもあります。ここに専門知識を持った薬剤師がコンサルタントとして関与することの意義があります。

 今日、先進国の主たる死因は、心疾患、がん、脳血管障害、閉塞性肺疾患、外傷、糖尿病などです。このうち外傷を除けば、いずれも生活習慣が一定の影響を及ぼしています。Mokdadら(2004)は、米国人の死因を分析、それらへの生活習慣の関与を推定しています。全死亡例に対する関与の程度は、上位から順に、たばこ(18.1%)、食生活の問題と運動不足(16.6%)、アルコール(3.5%)。以下、微生物(3.1%)、毒物(2.3%)、交通事故(1.8%)、銃(1.2%)、性行動(0.8%)、違法薬物(0.7%)と続きます。上位二者だけで34.7%ですので、死亡例の3分の1は、生活習慣の問題だといえます。

 慢性疾患に対する薬物療法は、真の病因を治療してはいません。リスクファクターを治療しているだけです。薬物療法においては、血圧、脂質、HbA1c、血糖値などが治療の指標となっています。

 しかし、これらはいずれも疾患そのものでもなければ、病因でもありません。疾患とは、冠動脈性心疾患、糖尿病、脳卒中、がんなどであり、その病因はたばこ、食事、不活発、肥満、アルコール等です。疾患を予防ないし治療するために本当に必要なことは、血圧を下げることでも、コレステロール値を下げることでも、HbA1cを下げることでもなく、むしろ、たばこを控え、バランスの良い食事を取り、適度の運動をして、体重を落とすことです。

 このような現状にあって、生活習慣医学(Lifestyle Medicine)の必要性が強調されています。そこでは、患者さん本人が主役です。一人ひとりの患者が、生活習慣改善に主体的に取り組まなければなりません。生活習慣の是正が主であり、薬物療法は従。その典型が糖尿病です。インスリンだって、一方でチョコレートを食べていては、効果を発揮できません。

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 今後、生活習慣への介入には、健康に関わる多職種が関与するべきでしょう。医師だけでなく、看護師、保健師、栄養士、理学療法士、作業療法士、そして、当然、薬剤師。その場合の立ち位置は、コンサルタントの役割であって、治療者の役割ではありません。経営コンサルティングに例えれば、身体の経営者は患者さん本人であり、専門家はそのコンサルタント役です。「街角のサイエンティスト」にも、「ライフスタイル・コンサルタント」としての役割が期待されているといえるでしょう。

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