No.2 え?eGFR 60.7って、問題アリですか?
2017年11月16日 11:30
京都大学医学部附属病院薬剤部
尾崎淳子
臨床検査値が記載された処方せんを受け取ったことがある薬局の方も、徐々に増えてきているのではないでしょうか。処方せんに印字された臨床検査値を活用しながら個々の患者さんに対する処方の妥当性を考える、そんな臨床検査値の読み解き方をお伝えするシリーズ第2弾は、抗ウイルス薬のお話です。腎機能の指標の落とし穴に要注意!
No.2 え?eGFR 60.7って、問題アリですか?
皮膚科を受診したリウマチ患者さん〈83歳女性〉 リウマチセンターかかりつけ皮膚科からは初めての処方
処方薬と患者さんの情報から、帯状疱疹の治療であることが分かる高齢のリウマチ患者さん。注意すべきポイントはなんでしょうか。

この4人が登場します。(マンガ:英賀千尋)
抗ウイルス薬は腎機能に注意!
・バラシクロビルの使用上の注意「腎障害のある患者又は腎機能の低下している患者、高齢者では、精神神経系の副作用があらわれやすいので、投与間隔を延長するなど注意すること」→注目すべき検査値は、腎機能を判断するための指標、つまり、推定糸球体濾過量(eGFR)と血清クレアチニン(Cr)です。
・腎薬物排泄能の指標はクレアチニンクリアランス(Ccr)またはeGFR。
・Aさんは83歳と高齢。高齢者では、加齢に伴い代謝能や排泄能の低下による半減期の延長から、血中濃度が上昇しやすい傾向にあります。
・検査値でeGFRが分かる場合はCcrとほぼ同義とみなして投与量調節に用いることができます。
・eGFR≒Ccrが低くなると、腎機能に障害があり、排泄能が低下していることを意味します。
■腎障害例、腎機能低下例、高齢者におけるバラシクロビル投与量及び投与間隔の目安(添付文書より帯状疱疹のみ抜粋)
・Cockcroft&Gaultの式からCcrを求める場合は、海外とCr測定法が違うため、補正Cr(Cr+0.2)で計算する方が予測精度が上がることがあります。
・Crは筋肉量のマーカーでもあります。寝たきりやサルコペニアといった筋肉量低下例ではそもそものCr値が低いため、腎機能を過大評価する可能性にも注意が必要です。
疑義を確認して過量投与を防ごう!
外来主治医はAさんが小柄であることを失念していて、体表面積補正前のeGFRで投与量を設定していたそうです。疑義照会の結果、1日2回朝夕食後に変更となりました。
今回のおさらい
◦ まずは検査値を見ずに処方鑑査→注目すべき検査値を確認。この流れを忘れずに
◦ 抗ウイルス薬(バラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビルなど)は腎機能低下例や高齢者では精神神経系などの副作用が現れやすいので要注意
◦ 処方せんに印字されるeGFRは体表面積が1.73m2の標準的な体型として算出されたもの。高齢者など小柄な人では実際の体表面積に基づき補正して判断