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小笠原にMRは訪問に来る?

2017年11月20日 10:45

  先月、珍しく10月に休暇を取ることができて、4年ぶりに北海道へ行ってきました。天気が悪く寒かったですが、紅葉はとてもきれいでした。もちろん小笠原諸島には紅葉などありません。それどころか、11月になってもまだ暑く、(少なくとも私は)冷房なしで暮らせません。

 また、いつもなら自分の処方箋は院外薬局さんへFAXしてしまうのですが、日程の都合で今回の上京では「自分の処方箋」を持参しました。そして札幌市内で見つけた薬局に飛び込み、調剤してもらいました。私は薬剤師でありながら調剤薬局にはほとんど行ったことがありません。問診票を記入したり、薬剤師さんに薬の説明をしてもらったりすることが、いちいち新鮮に感じました。

目次

  1. 製薬メーカーのMRは来ない
  2. 卸や医療機器メーカーは訪問に来ることも
  3. 情報には常に気を配る

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父島で一番高いところは中央山。設置されている案内看板によれば、標高は319mである。山頂付近には写真のような展望台があり、周囲に遮蔽物もないので、360度周囲がよく見える。そして吹きさらしでいつも風が強い。荷物や帽子やカツラなどが飛ばされぬよう、注意が必要である。展望台への道の横には、旧軍のサーチライトの台座跡などもある。ちなみにこの展望台からは、母島は見えても西之島は遠くて見えない。

製薬メーカーのMRは来ない

 ところで、ほぼ常夏で紅葉もなく、東京から1,000キロも離れた南の島、船が週に一便あるだけの小笠原ですが、MRさんなどはやってくるのでしょうか。大阪などの都市部で働いていた頃は、よくメーカーの担当者などが店に来て、売り場を作ったり薬の説明をしてくれたりしたものですが、小笠原諸島へは来るだけでも大変です。車で何分で行けるとか、一日に何カ所も回りたいという感覚では、父島へは来ることはできません。

 結論を言えば、製薬メーカーのMRさんなどが薬の説明や売込みなどで小笠原諸島へ来たことは、少なくとも私が小笠原にいた4年少しの間は、一度もありませんでした。出張するだけでも一週間が必要であり、出張経費は交通費だけで往復4万円以上、これに滞在中の宿代や食費が加わるとなると、それこそ10万円でも足が出てしまう。営利企業であるメーカーさんにとって、小笠原諸島だけにこれだけの経費をかけるのは非常に難しいはずで、これもやむを得ないことかと思います。

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中央山の展望台から二見港を望む。おがさわら丸も泊っている。この通り、景色は良いが港周辺からここまでは遠く、アスリートでもない限り、原付か車がないと中央山までは来られない。それでもここを訪れる価値はあると思うので、足を調達するか、あるいはツアーに参加するなどして、小笠原へ来たら中央山へもぜひ訪れてほしい。土日であらかじめ言ってもらえるなら、私が車を出さないこともないが...。

卸や医療機器メーカーは訪問に来ることも

 そんなわけで、医薬品の最新情報を手に入れるには、小笠原では主にネットに頼ることになります(逆に言えば、ネットがあるおかげで最新情報が内地と同じように入手できます)。外来調剤の隙間時間などに、ちょくちょくとネットを調べたり、ニュースを調べたりなどしています。

 また、卸さんからの納品といっしょに、時折医薬品のカタログやパンフレットのようなものが入っていたりもするので、参考にしています。このような事情を察してか、私が小笠原に着任して最初の上京休暇で都内の卸さんに挨拶に行ったとき、卸さんがMRさんを手配してくれて、入れ替わりに10人ほどのMRさんがいろいろ薬について説明してくれる機会がありました。

 一方、卸さんの担当者さんや、医療機器のメーカーさんなどは時折小笠原まで来てくれます。診療所で薬剤師が絡む部分では、錠剤や散剤の分包機くらいしか大型機材はありませんが、診療所全体では様々な医療機器があり、これらのメンテナンスは欠かせません。また、故障時の修理などもメーカー担当者が来て対応してくれることになります(この場合到着まで機材が使えないケースもあります)。

 機材を新調するときなどは、納品する卸の担当者さんも、メーカーの担当者さんと一緒に小笠原に来ることがあります。薬局がらみだと、2年ほど前に母島診療所の分包機を更新したのですが、このときもセッティングや使用方法の説明などのため、業者さん2人と卸さん、そして私の合計4人で母島へ行き(入港当日に受け取れないため、分包機はあらかじめ別送で送っていた)、準備をしました。この時はまだ先代のははじま丸で、かなり揺れて私はこれまでにないくらいに船酔いし、それでも着いてすぐ仕事をせねばならずで、大変だったのを思い出します。

情報には常に気を配る

 このように小笠原の場合(他の離島や僻地もそうでしょうが)、機材のメンテなどに業者さんや卸さんは来てくれるものの、基本的にMRさんは来てくれないし、医薬品情報は自分から動かない限り、入手はしにくいです。例えばオルメテック®錠が生産中止になったことや、最近ではアセトアミノフェンの供給が不安定になっている件も、こまめにネットでのニュースなどを見ていないと把握できなかったことです。

 特に供給面の情報は、常に気を付けておかないと必要なときに発注ができなくなる、という悲惨なことにもなりかねません。ただでさえ日常業務では仕事が多いのに、こういった「情報戦」にも手を抜けません。情報戦という「見えにくい部分」まで常に気を配ることも、離島の薬剤師の重要な職務の1 つです。

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中央山の展望台から二見港と反対側(南側)を望む。じつは父島最高地点は展望台ではなく、写真中央やや左の山頂である、という衝撃的なオチがつくのであった。別に中央山に限ったことではないが、見晴らしの良い地点の駐車場はどこも狭く、数台しか車を停めることがない。停まっている車を見れば、場合によっては先客の有無だけでなく、それが誰かまでわかってしまう。

【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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