へたれ薬剤師Kikoの『くすりときどきコトバ~ところによりダメ母』

研修のグルメ

  • 2017年11月28日公開
  • (2017年11月28日更新)

久しぶりに日曜日の研修に行ってみた。

会場が駅のすぐ近くで、終わるのが昼の1時だったので、昼食は駅ビルの中の店で適当にすませるつもりでいた。

マクドナルドがいいかな、さっと食べられるし...などと考えて行ってみたが、駅ビル1階のマクドナルドは大行列。隣のすき家や、食券式のうどん屋も、日曜の昼ということでかなり混んでいる。他にささっと食べられるところは、と考えていると...

ーーそうだ、あそこなら。

駅前のデパートの地下に、スタンド式のカレー屋があったのを思い出した。さっそく行ってみたが、こちらもやはり混んでいて、カウンター席の後ろで待っている客までいる。

ーーあ〜、こりゃダメだ。

仕方なく、うろうろと空腹を抱えてデパ地下をさまよう。

なんだかまるで、出張先で腹を空かせた男が食べ物屋を求めて歩き回り、見つけた店でおいしそうな料理を次々と頼んで食べまくるドラマみたいだ。

だが、ここはデパ地下。贈答用の菓子や持ち帰りの惣菜を売る店はたくさんあるが、その場で食べられる店はあまりないし、あったとしても満席だ。すいている店もあるにはあるが、たこ焼き屋やコーヒースタンドのような軽食ばかりだ。

たこ焼きって気分でもないしなぁ...と思いながらうろついていると、通路脇の立て看板が目に止まった。すき焼き丼、牛すじ丼、カツ丼など、おいしそうな写真が大きく貼り出されている。こんなところに丼ものの店があったっけ?と思いながら中を覗いてみると、女性の店員さんに「いらっしゃいませ」と声をかけられた。お客は丼をかっこんでいる男性1人だけ。

ーーよし、牛すじ丼にしよう。

テーブルが3つあるだけの小さい店内に入り、牛すじ丼を注文する。すいているから、待つほどもなく運ばれてくる。

ーーさて、いただきます。

甘辛く煮た牛すじと刻んだコンニャク、小口切りのネギに温泉卵がからんで、ご飯によく合う。

そういえば独身時代にも、こうやって1人でふらっと立ち寄った店で外食してたなあ、と考える。今は家族で出かけることが多いから、外で食べるにしても、自分一人の気まぐれで「ここで食べよう!」とはいかない。どうしてもラーメンだのハンバーグだのと、子供の好みに合わせざるをえない。

だが、今日はそうではない。

「食事っていうのは、一人で、自由で、静かで...」

そんなセリフがドラマの中にあったような気がする。

何にもわずらわされず、自分の食べたいものを好きに食べることが、こんなにも癒しになるのだなあと、しみじみと牛すじ丼を食べ終えた。

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さて、晩ご飯をどうしよう、なんか今日は作るの面倒くさいな...と考えながら店を出て、ふと思いついた。

ーーそうだ、ここで何か買って帰ろう!

何にしようかな、と思いながら再びデパ地下を巡る。

量り売りの惣菜売り場がずらりと並ぶ。餃子や酢豚などの中華料理、串カツや唐揚げに天ぷらなどの揚げ物...。どれも美味しそうだが、いまいちピンと来ない。

何故だろう?と考えて、ふと気づいた。これって全部、ここじゃなくても買える、もしくは自分でも作れる料理じゃないか。

ーーせっかくデパ地下へ来たんだから、これぞデパ地下グルメ!というような、自分では絶対作れないような料理を買って帰ろう!

そう決心して物色していると、ショーケースの中にいろどり豊かな洋風お総菜を並べたお店を見つけた。ほうれん草とベーコンのキッシュ、季節の10種野菜サラダ、きのこたっぷりマリネ、ホタテと海老のハーブ焼き...

「そうそう、こういうのがいいんだよ」

お総菜というよりも、まるでパーティー料理のようにおしゃれなメニューばかりだ。どれにしようか、と迷うのすら、なんだかちょっと楽しい。

あれこれ考えた末、イカと明太子の大葉巻き揚げにシーフードマリネサラダを買うことにした。子供にはエビフライ。これであとは家の近くのスーパーでビールを買って帰れば完璧だ。

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駅に戻り、ちょうど来ていた電車に飛び乗る。

思ったより早く帰れそうだ。あとは洗濯物さえ片付ければ、食事の時間までは自由だ。そう思うとずいぶん気が楽になる。

「一食、作らなくてもいい」というのは、それぐらい主婦にとっては嬉しいことなのだ。

ーーよし、決めた。これからは、日曜に研修に出たら、夕食は出来合いですませよう!

研修に行くから、その分、急いで家事をしなければならないのではなく、研修に行くのだから家事で手抜きしたっていいのだ。たとえ家族に「手抜きだね」と言われたとしても、「そうだよ、手抜きだよ。だって勉強しに行ってきたんだもん!」と胸を張って言ってやればいいのだ。

研修で家を空けたから、家事が山積みに...などと考えると、ますます研修に行くのが億劫になってしまう。だが、研修にかこつけて堂々と手抜きすればいいのだ、と思えれば、少しは気楽に「また行こう」と思えるようになるのではないか。デパ地下グルメでなくとも、スタバでしゃれた飲み物を頼んで一服するだけでも、慌ただしい日常とは違ったひとときが楽しめるだろう。

そんな時間が、働く母親にもあっていいはずだ。それを励みに、研修に行くのも悪くないじゃないか。だから、休日に研修に出た日には、ふらっと外食して、美味しいものを買って帰ろう。

ーーそうそう、ビールも!

電車を降り、自宅近くのスーパーで冷えたビールを買い込む。

休みをフイにして勉強した自分と、留守を預かってくれた夫に、「お疲れ様でした」と言って乾杯しよう。

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【コラムコンセプト】
仕事に家事に育児と、目まぐるしい日々を送る母親薬剤師。新薬や疾病の勉強もしなきゃいけないが、家のことだっておろそかにできない。追い立てられるように慌ただしい毎日だ。そんな中で、ふと立ち止まり、考える。「働く母親って、どうしてこんなにいろんなものを抱え込んでしまっているんだろう?」「薬剤師の業務って、どうしてこんなふうなんだろう?」忙しさに紛れて気付けずにいる感情に気付いたら、働く母親に見える景色はきっといくらか変わるだろう。日常の業務に埋もれたままの何かを言葉にできたなら、薬剤師を取り巻く世界も少しずつ変えていけるだろうか。


【へたれ薬剤師Kiko プロフィール】Hetare_kiko_columm.png

卒後9年間病院勤務ののち、結婚を機に夫の地元で調剤薬局に転職。産休育休を経て、現在は中規模チェーン薬局にフルタイムで勤務。アラフォー。9歳の息子、夫(not薬剤師)と3人暮らし。食事は手抜き。洗濯は週3回。掃除はルンバにおまかせ。どういうわけだか「コトバ」に異様にこだわる。座右の銘は「モノも言いようで門松が立つ」。(Twitter:@hetareyakiko)

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