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小笠原診療所への立ち入り検査

2017年12月06日 09:45

 11月の後半になれば、父島もようやく少しは涼しくなってきます。また、11月の前半の連休には大神山神社の祭りがあり、後半には住民健診があります。11月のこれらのイベントが終われば、あっという間に年末が迫ってきます。患者数が増え、在庫管理に最も神経を使う時期の到来です。私は2018年3月で退職するので、家の掃除や不要品を処分したり、実家へ送り返したりしています。粗大ごみの日は月に1回、3月まであと4回しかありません。退職と同時に職員住宅からも出ていく必要があるので、小笠原では撤収すらも綿密な計算と計画が必要となります。

目次

  1. 必ずチェックされる麻薬や向精神薬
  2. 立ち入り検査の準備は事前にしっかりと
  3. 読者の薬剤師が小笠原診療所薬局の見学に!

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二見港のすぐ近くにあるのが大神山神社。二見港や町の裏手は小さい山(大神山)になっていて、山は神社と公園になっている。大神山神社では毎年11月3日にお祭りがあって、相撲などのイベントが行われる。神社のさらに裏は公園の展望台となっていて景色がよく(これまでに掲載した写真は、この展望台付近から撮ったものも多い)、町からも近いので訪れやすい。入出港していくおがさわら丸がよく見える。

必ずチェックされる麻薬や向精神薬

 前回はMRさんや業者さんが、小笠原まで来るか来ないかという話をしました。薬局業務をしていく上で、これら以外でも来るか来ないかが問題となるのが、所謂「行政の立ち入り検査」です。保健所などが診療所にやってきて、いろいろと見て回る検査は必ずあります(一応2カ月前くらいに予告があります)。最近では今年8月末にありました。また、5年周期くらい(と言われています)で麻薬の監査もあります。これら立ち入り検査の検査者は、島嶼保健所だったり、内地の都庁薬務課からやってきたりといろいろです。

 診療所の立ち入り検査の場合、主に事務方が対応するので、薬剤師としては薬局部門だけ気を付けていれば問題ありません。これまでに5回くらい行政の立ち入りを受けましたが、薬局関連では「麻薬や向精神薬の取り扱い」に関する部分を必ず見られました。これまでは、「日頃の業務」をぬかりなく、きちんとさぼらずやっておれば、特段の指摘事項はあがってきませんでした。

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二見港から徒歩2分、大神山神社の入り口。神社へ行くには、まずこの長い階段を攻略する必要がある。上まで行くのは予想以上に体力を消費する。大神山神社のある大神山公園は、展望台からの景色はよいのだが、山の陰になって夕日が見れないせいか、訪れる人は多くない。以前、町のスーパーで買い物して、神社と裏の公園を通り抜けて家に帰るようにしたら、運動不足も解消だと思ったのだが(山を1つ越えることになるわけ)、3日で挫折。直線距離では大神山を越えていくと、家と町は近いんですがね...。

立ち入り検査の準備は事前にしっかりと

 とはいえ、立ち入り検査が来るということになれば、あらかじめ準備や点検をしておかねばなりません。まず初めに処方箋や帳簿を見直して、記載の不備がないかなどを丹念に調べていきます。記入漏れや印鑑の押し忘れは意外とあります。麻薬施用者番号は医師の交代などで頻繁に変わるので、これも注意が必要です。日頃の業務をきちんとしているつもりでも、夜間や休日に麻薬が処方される場合も多く、どうしても不備が出てきます。保管状況も聞かれるかもしれません。何を聞かれてもきちんと答えられるようにしておきます。

 立ち入り検査準備は、日常業務の合間にやることになります。よって、来るとわかればすぐに準備を始めて、検査当日の2週間前を目途に「いつ来ても大丈夫です」という状態にできるようにします。毎回、予想外の仕事が出てきたりして、この準備完了予定日までに準備は終わりません。所謂「麻薬Gメン」による麻薬の監査は、ほとんど薬剤師1人で対応します。麻薬の監査時は、母島にも点検と準備、立ち合いで出張したのですが、宿が取れず診療所に泊まり込んだのは、この準備のときです。麻薬以外では、ホルマリンをはじめ医薬用外劇物もいくつか使用しているのですが、これらの管理者は薬剤師となっているので、こちらの帳簿も点検しておきます。

 このような感じで準備を進めて当日を迎えるわけですが、診療所のスタッフには「薬局については検査は10分で追い返す」などと威勢のいいことを言いつつも、内心は何を言われるか不安で仕方ないです。「都内からわざわざ小笠原まで監査にくるなんて、この人たちはどうせ半分は小笠原へ遊びにきているようなものだ」と、必死に思い込むようにして不安を払いのけます。なにしろこちらは1人。現状では薬剤師とのつながりは、院外薬局さん以外ほぼないも同然なので、よそからの立ち入り検査の情報もなかなか得られません。不安な中、検査を受けて(小笠原村の採用試験の面接のときより緊張します)、なんとか無事に乗り切ると、妙な達成感を感じます。1人薬剤師をしていると、どうしてもわからないことは出てきてしまうので、これらも検査者に確認しておきます。

読者の薬剤師が小笠原診療所薬局の見学に!

 小笠原村は特殊な立地です。飛行機はなく、都内とを結ぶ定期船が24時間かけて週に1回しか来ません。国内ではもっとも行きにくい場所と言えます。よって立ち入り検査などを含めたとしても、薬剤師が絡む部分の来訪者は少ないです。

 そんな中、立ち入り検査が終わってしばらく経った9月半ばに、私の連載を読んでくれていた薬剤師さんが父島へ来たときに、診療所の薬局を見学したいと言って来てくれました。その日午後の船で東京へ帰るとのことで、急遽お昼に見学してもらうことにしました。出航日の割には予想外に外来が長引いたため、あまりゆっくりお話しをすることもできず申し訳ない思いでいっぱいでしたが、私が小笠原で働きだしてからというもの、4年ぶりの薬剤師さんの来客であり、大変うれしく思いました。3月の撤収まであと4カ月ほどですが、小笠原諸島の医療や生活事情を知ってもらいたく、もうしばらく私の連載にお付き合いいただければと思います。

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父島と母島を結ぶ「ははじま丸」は、母島を訪れる実質唯一の交通機関。ちょうどこの写真のあたりに、よくクジラがいる。麻薬の立ち入り検査の際、立ち合いのため私は「ははじま丸」で母島へ行ったわけであるが、当然同乗者に麻薬Gメンもいるはずであった。ところが母島診療所で顔を合わせるまでは誰がそうなのかわからない。父島で乗船する客の列を見たり、乗船してからもそれとなく周囲を見たりするが、やっぱりわからない。2時間少しの行程は、妙な緊張感に支配されることになる。

【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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